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発見

 姫は見つかった。というより普通にご飯食べていた。店で。

「お、ジンさんお帰り! 何の話だったんだ?」

 宿屋の酒場には沢山の人が入っていた。

 とはいえ窮屈きゅうくつと言うほどではなく、多少動き回っても平気なくらいスペースがある。

 そこの一角にごつい男が四人とフード付きのローブを着たままのカンナ、そして黒髪の少女がいた。

 少女は白を基調としたミニスカートの服を来ていて、綺麗な黒髪には銀色の蝶の髪飾りがある。

 その髪飾りは、王族の証とも言えるものだった。

「……あの、そちらの方は?」

「ん? ああ腹を空かせてたみたいだから飯を食わせてたんだ。別に構わないだろ?」

「いや、いいんですけど、あの、何で誰も気付かないのですか?」

 全員不思議そうに首を傾げているのを見てジンはふと思い出す。

 そういえば王族の姿を見るのは国民でもあまりない。

 それなら知らなくても不思議ではないし他の人も旅人ばかりなのでしょうがない。かもしれない。

「……それで、サクラ姫は何故ここにおられるのですか?」

「っ!?」

 ガタン! と突然椅子から立ち上がり入り口に走る。が何かに引っかかったらしく勢い良くずっこけた。

「ひ、姫!? 大丈夫ですか!?」

「い、痛い……」

「突然走り出すからです。ほら捕まってください」

 ジンが手を貸すとサクラ姫は素直に手を掴んで立ち上がる。

「ありがとうございます……じゃなくて! 貴方は何者ですか!? 何故私の事を知っているのですか!?」

「……それは髪飾りを外すなりカンナさんみたいにフードを被って顔を隠すなりしてから言ってください」

「……あ」

 今更髪飾りを外し、顔を隠す物で何かないかと周りを見ているが、遅すぎる。

「姫、私はアレン将軍に貴方を探すように頼まれた……彼の個人的知り合いです。騎士でもなければ暗殺者でもありません」

 アレンの名前を出すと、ようやくサクラ姫はこちらを向いてくれた。

「あ、アレンのですか?」

「はい。私はジン・スチーラルと申します」

「……私はサクラ・ハルムイです。アレンに頼まれたということは、やはり私は連れ戻されるのですか?」

 そういうサクラ姫の顔には不満でいっぱいだった。

「はい。何が不服なのですか?」

「……あの、今日だけはここにいては駄目でしょうか?」

 サクラ姫はそんな事を言ってくる。もちろん駄目に決まっている。

「駄目です。姫はご自分の立場と状況を良く考えてください。命を狙われている状況で警備もいない所に居ては暗殺者が来る絶好の――」

 説き伏せようとしたジンに、仲間の一人が話しかけてくる。

「いいじゃねぇかジンさん」

「カイト! 貴方まで何を……」

「ちょっとこっちに来てくれ」

 カイトは手招きしながら席を立つ。ジンと一緒に離れた位置でこそこそ話す。

「あの、サクラ姫? がカンナの事を随分気に入ってるんだよ。カンナも話してると楽しそうなんだ。俺に免じてさ、今日くらいあの二人を一緒にいさせてやってくれよ」

「しかしですね、もし何かあれば大変な事になりますよ?暗殺者の規模もどんなものなのかこちらは知りませんし」

「ジンさんなら大丈夫だって! 頼むよ、な? この通り」

 カイトはジンに向かって頭を下げてくる。流石にそこまでされて無下に断るわけにもいかなかった

「……じゃあ、皆さん四人全員で今夜は警備に当たります。それが条件です」

 もっとも、実際は四人では済まさないのだが。とジンは心の中で呟く。



「と言うわけです。何人か貸してくれませんかアレン?」

 月明かりに照らされた街で二人はいた。

 アレンは暫く唸った後、諦めたように言う。

「わかった。俺と部下が周辺を見ておく。……しかしこんなに早く見つかるとはな」

「……それでは、お願いしますよ? 英雄さん」

 それだけを告げてジンは宿へと戻る。アレンが何か言っていたがそれは無視しておいた。

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