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独身男たちは叫ぶ

「おぉ、ジンさんお帰り!」

「……ただいま」

 心底疲れたジンはぐったりとしながらそう言った。なんかちょっと押せばあっという間に倒れて気絶しそうなくらい疲れていた。

「ジンさん大丈夫か?」

「……全然大丈夫じゃないので少し休みます。何かあったら教えてください」

 そう言ってジンは横になり、数秒で安らかな寝息が聞こえるようになった。

「……いったい何があったんだ?」

「知らんがな」

 ラルクたちはそんなことを言い合いながら部屋から静かに出て行く。部屋から出ると、ちょうどカンナとサクラがいた。

 二人は音もなく歩く男連中を不思議そうに見ている。が、すぐに興味をなくしたらしくアレンが寝てる部屋に入っていく。

 それを見ながら、ラルク以外の男共は呟く。

「「「あーあ、俺も可愛い女の子に看病されたい」」」

 この男たち、ラルク以外独身である。

 そんな男たちに対してラルクは、

「さっさと嫁さん見つけろよ……」

 と呟く。普通なら聞こえない程度の大きさの声だったが、男たちの耳はしっかりとラルクの呟きを聞き取った。

「そんな簡単に見つけられたら苦労しねえよ!!」

「お前はいいよなぁ! 奥さんの方が勝手に寄ってきたんだから!!」

「ちくしょうめ!」

「俺たちみたいな元山賊に出会いなんてないんだよ!」

「「「「俺たちに出会いを寄越せ!!」」」」

 うがー! と独身男たち(三十代)が全力で叫び出すのでラルクが抑える。

「ジンさん休んでんだぞ! んな大声出すなっての!」

 そんなラルクの言葉に男たちは黙る。代わりに小さな声でポツリと呟く。

「「「「ジンさんに若返りの仕方教えてもらおうかなぁ……」」」」

 小声の方が、さっきよりも本気の思いを感じ取れた。

 そんな男たちにラルクが頭を悩ませている時、トコトコとおかっぱ頭の子供がこちらに歩いてきた。

「ん? なんだ坊主」

「おじさん、英雄知らない?」

「英雄? あージンさんか。ジンさんなら……」

「ヤイバ!」

 ラルクが喋りかけた瞬間、子供のやってきた方から少女が走ってきた。

 白を基調とした服に黒いエプロンをつけた少女は子供の後ろに立つとふぅと一息つく。

「こらヤイバ! 勝手に走っていったら駄目でしょう!」

「お姉ちゃん遅いんだもん。英雄がいるっていうのにジッとしてらんないよ!」

 子供の姉らしき少女は顔に手を当てながら再度溜め息を吐く。少女はラルクたちの存在に気づくと頭を下げてくる。

「すいません、弟が迷惑をかけて」

「いや、なーんもされてねえけどな。んで坊主」

「ヤイバだよ!」

「んじゃあヤイバ、お前ジンさ……じゃないな。ジャックに会いに来たのか?」

「うん! お城の兵士さんがここに英雄がいるって聞いたんだ! そしたら僕もうジッとしてられなくてさ!」

 よほど元気が有り余ってるのかヤイバは意味もなくシュッシュッと拳を振っている。その拳をジンに当てるつもりなのだろうか?

 まあ子供のやることを気にしてはいけないかとラルクは思いながら、ヤイバの肩に手を置く。

「そうかそうか。だがすまんな、今ジャックは疲れて休んでるところなんだ。今は休ませてやってくれ」

「えー! せっかくここまで来たのにー!」

「ヤイバ、文句言わないの。ヤイバだって寝てるのに起こされたら怒るでしょ?」

 ブーブー言うヤイバに少女はそんなことを言う。ラルクはそんな頭を掻きながらヤイバにこう言ってやる。

「だったらさ、ジンさん起きたら呼びに行くよ。そしたら会えるだろ?」

「ほんと!? ありがとおじさん! じゃあ起きたら教えてね!」

 ヤイバはそう言いながら走り去っていく。

「ヤイバ! 旅館で走ったら駄目!」

 少女はヤイバを追いかけようと走り出すが、すぐにピタッと動きを止めて振り向く。

「そういえばまだ名前も言ってませんでした。私はユウキ・カレッタ。部屋はちょうどそこの部屋の真下です。それじゃあ失礼します!」

 ユウキと名乗った少女は割と素早い動きでヤイバを追いかけにいく。

 足速いなーとラルクが思い、そしてあることにふと気づく。なんか独身男たちにが妙に静かだということに。

 周りを見回すのだが彼らがどこにも見当たらない。少々面倒になってきたので魔法で探すと、なんか少女にこっそりとついて行っている。

「……何がしたいんだあいつら」

 やれやれと思いつつもラルクは特に何もしない。彼らが問題になる行為をするとは思っていないからだ。

 ……問題になる前にジンが手を打つ、が正しいのだが。

 まあそんなことはラルクにとってどうでもいい。そんなことより重要なことがあるのだ。

「さーて、土産探しに行くか」

 家族への土産を買うために、父親ラルクは旅館から出る。

 それによって、ジャックが放置されていることを忘れたまま。

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