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語られない伝説・No.1

「さあ愉快な旅の始まりだ」

「・・・・・・・」

「とりあえずお前の偽名考えないとな。ナスタだの姫だの呼んでたら兵士が集まって面倒だ」

「・・・・・・・」

「この国で一番多い名前はなんだ?同じ名前が多ければ名前を聞いただけで誰なのかを判断されなくなる」

「・・・・・・・」

「おーい、聞いてるのかー?」

「・・・脚が痛い」

整備された道をジャックとナスタは歩いていた

ナスタの服装はドレスからジャックが適当に買ってきた白を基調とした服に変わっていた。安全を考えて防刃服というそこらの剣では切れない頑丈な服だったりする

「脚が痛いってお前、まだそんなに歩いてねえぞ」

「もう何時間も歩いた気がします・・・」

ふむ、と言ってジャックは空を見る

「二時間くらいだろ。多分」

「休みましょう!休憩を所望します‼︎」

「お前のペースに合わせてたら何ヶ月かかるんだよ」

ジャックは地面に座ろうとするナスタの首根っこを掴んで引っ張りあげる

背中のリュックから茶色の袋を取り出し、その中にある棒を慣れた手つきで組み立てると、小さな椅子が出来上がった

「座るならこれに座れ。王族が地べたに座るなよ」

「す、すいません」

「ほれ、休むなら水も飲んどけ。水分補給がいつ出来なくなるか分からねえからな。出来る時にやっとけ」

ジャックは腰に下げてあった水筒をナスタに放り投げる

ゴンッ!とキャッチし損ねたナスタの頭部に水筒が激突した

「〜〜〜〜⁉︎⁉︎」

「おい、今のも取れないのか?」

「な、投げずに手で渡してくださいよ・・・」

「それについてはすまん。ほらほら泣くな泣くな悪かったってこれやるから許してくれ」

そう言ってジャックが渡したのは(投げてない)黒っぽい四角の何かだった

「・・・なんですかこれ?」

「チョコとかいうやつだ。北の大陸ではよく食べられてる甘味だな」

恐る恐る涙目のままナスタはチョコを口に入れる。すると少しだけ顔が明るくなった

「美味しい」

「それってさあ、北の大陸だと非常食と甘味を兼用してるんだよ。腐りにくいし栄養もあるんだとよ」

「そうなんですか・・・」

チョコの美味しさに感動しているナスタ。水筒をぶつけられたことは忘れたようだ

代わりに、別のことに気が付いた

「あの、非常食って・・・」

「ん?一応言っとくが非常食なんぞお守りみたいな物だぞ。そんなもんに頼るような状況になった時点で俺らみたいな傭兵は積んでるよ」

「お守り、ですか」

ナスタはそう言うと何か考え込むように俯く

ジャックはナスタが何か言う前に先手を打つ

「言っとくが、王族の証だからといってお前にペンダントを渡すつもりはないぞ。あれは報酬として貰ったんだからな」

「こ、心が読めるんですか⁉︎」

「んなわけあるか。つーか、お前にお守りなんて必要ねえよ」

「え?」

頭に疑問符を浮かべるナスタに対して、ジャックは言い放つ


「俺がいる。例え千の兵士だろうが万の強者だろうが、それら全てからお前を護る。だからお守りなんて不確かな物に頼る必要なんかどこにもねえだろ」


「・・・・・・」

「・・・・・・・・・なんだよ。それでも欲しいのか、これが」

ジャックはポケットから蝶のペンダントを取り出してナスタの目の前でプラプラと動かす

「い、いえ。そうですね、それは貴方か父から授かった物です。それについてどうこう言うつもりはありません」

「ああそう」

ペンダントを引っ込めるとピクッとナスタの右腕が動いた。ナスタは左手で右腕を抑えながらチラッチラッとジャックを見る

「で、ですが、それと同じくらい価値のある物を渡す代わりに、ペンダントを貰えればなーと」

「駄目」

ガクッとナスタは項垂れる

そんなナスタを見て、ジャックは若干苦い顔になった

「あー。じゃあ、あれだ。お前が王に相応しい器になったらこのペンダントをお前にやる。というのはどうだ?」

「・・・・・・つまり今の私は王には相応しくないと」

「え?自覚ないのか?」

ジャックの一言でナスタの周りは暗くなる。ギャグ補正とかではなく物理的に。魔法で明るさを調整してるようだ

「・・・・・・・・・・分かりました、分かりました!そんなことを言うのだったら貴方はどんな人が王に相応しいか知ってるんですよね⁉︎」

「え、まあ、トチ狂った王も民に優しくして国を動かしてる王も知ってるけど・・・」

「だったら!貴方が私を王に相応しくしてください‼︎」

何もかも吹き飛ばしそうな勢いでナスタはジャックに近づく。興奮してるのか息が荒い

「貴方が私を王に相応しくする!私はペンダントも貰えて民の皆さんの為に動けるようになる!皆幸せ!それでいいですか‼︎」

「お、おう。いいよ、それでいいですとも」

逃げるようにジャックは後ろに下がるが下がった分以上ナスタは近づく

「約束ですからね!破らないでくださいよ!」

「わかったわかった!いいからちょっと離れろ近い近いキスするぞこんにゃろ!」

「キャー‼︎‼︎」

ズザザザザッ!とナスタは近づく時の倍以上の速さでジャックから離れた

「き、キキキスって、何言ってるんですか貴方は⁉︎」

「本当にするわけねえだろうが・・・・。ほら、もう元気になってるな。さっさと出発するぞ」

「ちょっとジャックさん!聞いてるんですか⁉︎」

ギャーギャー騒ぐ姫とそれを受け流す傭兵は、一歩一歩確実に進んでいく

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