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旅路の雑談

十六の馬が整地された道を歩いていた。途中すれ違う商人から見ても、よくわからない面子だった

まず奇妙な仮面を着けているのが十人。その中の一人はわざわざフードを目深に被っている。なんか最近現れた英雄や、王都で有名な騎士に、王族の証らしき蝶の髪飾りを着けた少女がいる。白金プラチナの鎧の男に、その隣の馬は五メートルか六メートルはありそうな巨大な剣を運んでいる

そんな奇妙な一団の一人、ジンは呟く

「・・・これ、バレたら国家なんたら罪になりそうですよね」

「言うなジン。俺も内心ビクビクしてるんだ」

「アレン。貴方城の中と全然ジャック様へと態度が違うのね」

サクラ姫がアレンに聞く。答えたのはアレンではなくジンだ

「流石に知り合いだからという理由で気軽に喋れる立場じゃあないんですよ。私は立場的には大臣よりは上に当たりそうですし」

「そうなんですか?私にはそういった話がまったく耳に入らなくて・・・・」

「まあ今の王もかなり過保護気味なところはありますから・・・。それとサクラ姫。ジャックと呼ぶのは控えてもらえると助かります。流石に延々質問攻め握手攻めは勘弁させてもらいので」

「分かりましたジャッ・・・ジンさん。でよろしいでしょうか?」

「はい。こちらも姫と呼ぶのは控えましょう。・・・・・バレるのは困るんで」

そうやって雑談しながらジン達はシルスベールに向かって馬を歩かせる。雑談をしていると、自然とジンに質問が集まってきた

「ジャ、ジンさん。ナスタ女王は、いったいどのようなお方だったのですか?」

「ナスタ、ですか?そうですねぇ・・・彼女のことを一言で表すなら」

そこでジンは一息区切り、笑う

「泣き虫、ですかね」



「ったく、雑魚しかいなかったなおい」

赤髪の男、ジャックは城の中を歩いていた。門の前にいた奴らは蹴散らしたし、門の魔法障壁はぶち抜いた

質より量、なんて言葉は嘘だとジャックは思う。実戦経験のない、型通りにしか武器を振るえない雑魚が百人いても意味がないのだ

「おーい、ナスタ姫ー。ナスタ姫様やーい」

声が妙に響く。それだけ静かだということか

そもそも城の中に誰もいないのだ。使用人の一人くらいいてもいいはずなのだが、人の気配がまったくしない。高そうな壺や絵は手入れされずに放置されている

「おいおいおい、その姫までいないってオチじゃねえよな?」

そんなことを呟いていると、上の方で物が落ちるような音がした

「お、誰かいるなー」

ジャックは上の階に上がり物音のした方に歩く。そこには大きな扉があった

ただし、魔法障壁が張られている

「・・・・めんどくせぇ」

ジャックは剣を引き抜く。安物だが、良く手入れしているため中々の斬れ味を発揮する剣だ

ガキンッ‼︎という音が廊下に響き渡る。剣が根っこから折れた音だった

「折れたー⁉︎嘘だろどんだけ硬いんだこの障壁‼︎」

扉を全力で蹴り飛ばす。ビクともしなかった

「〜〜っ!おい、いるんだろナスタ姫さんよお‼︎俺は王に雇われた傭兵だ!さっさとここを開けて依頼をこなさせろ!」

ガンガンガンガンガンガンガンガン‼︎‼︎と何度も蹴るが出てくる気配はないし扉が壊れることもない

「・・・・オーケー。それならこっちも考えがある」

ジャックは扉の先にいる人物に会うために、扉から離れて何処かへと歩いていく



「・・・・・・・ふぅー」

部屋にいた少女、ナスタはゆっくりと息を吐く

部屋には大量の本が転がっている。ベットがあるところ以外の床は本で埋め尽くされるほどだった

「なんだったのかしら・・・」

呟くが、答えてくれる人はいない。数日前まで、答えてくれる人は沢山いたのに、だ

「・・・・・ひっく」

その事を認識すると泣きそうになる。というよりいつも泣いていた

涙が眼から溢れ出る、その直前

ガシャン‼︎‼︎と、窓ガラスが割れて誰かが入ってきた

「ひっ⁉︎」

「っと。よーやく会えたなナスタ姫?姫だよな?これで人違いならそろそろ俺は帰るぞ」

入ってきた男はそんなことを言うが、ナスタとしては帰ってくれるなら今すぐ帰ってほしかった

男はジロジロとナスタを見て勝手に納得する

「うむ、姫だな。日焼けしてないからずっと部屋に篭ってたんだろうし、髪だって痛んじゃいない。容姿だって随分と綺麗だし、これで姫じゃなかったらどうなんだって話だ」

「な、なんなんですか貴方は・・・」

男はぐるぐると腕を回しながら自己紹介してくる

「ジャック。お前の親に雇われた傭兵だよ」

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