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草原にて

ジンはとある草原で横になっていた

本来ならまっすぐ帰って仕事をするべきであり、実際いつものジンならそうしていた

だが、どうしてもそんな気分になれなかった。先のことを考えると、どうしても思ってしまうことがあるのだ

「・・・・・・」

雲一つない空を見上げて動かないまま、誰かがやってくるのを感じた。いわゆる、達人の気配

(戦えとかそんな話しですかね・・・そんな気分ではないんですが)

それでも一応起き上がり、やってきた人を見る

その男は白金の鎧を着、男の身長の三倍の長さはある剣を引きずるようにして持っていた。別の地方で、『勇者』と呼ばれている男だった

「おや、貴方は・・・」

「・・・・・・・」

男は何も言わない。静かにジンの横に立ち、無言でジンを見ている

「あの、なにか?」

「・・・・・」

「あのー?」

『無』、そんな文字がジンの頭に浮かんだ。それくらい男は無反応だった

(な、なんでしょうか?戦いに来たという感じではなさそうですし・・・)

「・・・・・か」

「え?すいません、今なんと?」

風の音の方が大きいんじゃないかと思う声で男で呟いたため、思わず聞き返した

男はポツリと、さっきよりは大きい声で(風と同じくらい)呟く

「王都への道はどこですか?」

「・・・・・・・はい?」

「王都です」

「いえ、そうではなく・・・」

ジンは後ろに顔を向ける。丘の先にはもう王都が見える位置だった

「え、えっと・・・・・あの丘の先に行けば王都がもう見えるはずなのですが・・・・・」

「・・・・・・・・・」

ぺこり、と無言で頭を下げて男は丘の方へ行く

「方向音痴なんですかね?」

少し笑いながらジンは再度横になる

すると少し眠気が出てきた。本人が思っているより疲れているのかもしれない

(こんな天気ですし、少しくらい寝させてもらいましょうか・・・・)

空は、少し曇り出していた



ピカッ!と空が光った。遅れて大砲のような音がやって来た

ゴロゴロゴロゴロ

「ひゃう!」

カンナは思わず妙な声を出し、他の人達に笑われてしまった

顔を若干赤くしながら窓の外を見る。大雨の中慌てて建物に入る人達の姿があった

「随分降りますね」

「こんなに降るなんて珍しいわねぇ」

カンナの隣にいた小太りの女性がそう言いながらカンナを見てニヤニヤしている

ゴロゴロゴロ・・・

ビクッ!とカンナの身体が跳ねる

「怖い?」

「い、いえ、平気で」

ドガンッ!

「ひゃー!!」

「ぶふっ」

女性は耐えられなかったのか吹き出す。周りの人も皆クックックと笑っている

話題を変えようとカンナは女性に話しかける

「そそ、そういえばまだジンさん帰ってませんよね!」

「そうだねぇ。もしかしたらちょうど雨に降られてるかもねえ」

ピカピカッ!ドガガガン!!

「〜〜〜〜!!!」

「あっはっはっは!」

女性は爆笑しながら顔を真っ赤にしたカンナに言う

「ジンさん帰ってきたら濡れてるだろうから替えの服とタオルでも用意してやんな」

「は、はひ。分かりました」

足早に出て行くカンナを見届け、部屋の人達は再度笑った



ずぶ濡れになった。草原で昼寝してたら

「やれやれ、参ったな。剣が錆びたらどうすっかなー」

(・・・違う)

肩まで伸びた赤髪をぐしゃぐしゃとしながら起き上がる。防刃服は水のせいで重くなっていた

「とりあえずどっか行くか。確か近くに国があったよなー」

(・・・夢?)

「・・・あ?」

視界の端に誰かがいた。黒の外套にフードを目深に被っているため性別も年齢も判断できない

剣に手をかけながら声をかける

「おい、誰だてめぇ」

「・・・・・・」

何も答えず、静かにフードを外す。そこから現れた顔を見て驚く

「これはこれは。この国の王様じゃないですか。何か用で?」

髭を生やし、威厳のある顔の王はこちらを見た。その眼には、何か決意のような物があった

「やあ、『血まみれジャック』。貴方に、頼みたいことがある」

「報酬とご相談」

「姫を、娘の手伝いをしてもらいたい」

「・・・・・・・・・・・はぁ?誰に言ってんだそれ。俺か?傭兵の?」

王はぽいっと何かを投げ渡してくる

それはペンダントだ。ただのペンダントではない。王の一族だけが持つ、特別な金属を使った蝶のペンダント

「報酬は、充分か?」

「・・・いや、足りるけどさ。俺かよ、傭兵の俺じゃなくて騎士とかに頼めよ」

「もう、私に信じられる者などおらんよ。お前のように金で動く者は、まだ信じられるが」

「人間不信かよ。王族がそんなんじゃあ国はおしまいだな」

「だからこそ、頼みたい。金で動いてもいい。偽物でも構わない。心の中で罵倒してもいい。だから・・・」

そこで一息区切り、王は頭を下げる


「娘を、ナスタを裏切らないでくれ」


「・・・言われんでも、依頼はきちんとこなすよ。こういうのは信用が一番だからな」

頭を下げる王から顔を背けながら適当にそんなことを言う

「・・・ならば、お前に力を与えよう」

「あ?いらんいらん。報酬以上にもらう気はねえよ」

ペンダントをポケットにねじ込んで立ち去ろうとする。だがその前に王が何かした

「・・・・うん?おい?待て、待て待て待て!!」

紫の光が身を包んだかと思えば、何かが頭の中から出てくるような感覚が襲いかかってくる

「おい!何をした!?」

「お前の持つ、力の扉を開けさせてもらった」

「あ?なんだって!?」

「使い方は、お前が探せ。お前しか、知らないのだから」

「俺だって知らねえよ!?いきなりなんだよ!あ、おいこらどこに行く!?」

王は再度フードを被り、何処かへと歩いていく。慌てて呼び止める

「おい!依頼の詳細を聞いてねえぞ!姫の手伝いだけだとわけわかんねえよ!!聞いてんのか愚王!おーい!!」

叫びは、王に届かない

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