情報
「選択肢は二つです。素直に情報を吐くか頭の中をぐちゃぐちゃにされて情報を取られて死ぬか。素直に吐けば貴女達のある程度の自由を保証します」
その部屋にあるのは壁と同じ白い机と椅子だけで、他には何もない
そこでジンと魔女は向かい合って座っていた。魔女の方は特に拘束をされてはいない
「ちなみに十秒以上黙っていると問答無用で頭を壊しにかかりますのでご注意を。それでは始めましょうか」
ジンは優しい口調で、さらりと恐ろしいことを言う。魔女は何も言わない
「貴女の名前は?」
「・・・人に名前を聞く時は自分から名乗るべきだとこの国では教わらないのですか?」
「これは失礼、ジン・スチーラルと申します。それで貴女は?」
「カナン・メル・グローリー」
「ほう、貴族の方ですか」
ラーグでは、貴族にはミドルネームがある。ミドルネームは幼い頃の名前で、十二になると新たに名前が与えられ、幼名はミドルネームになる
「それではカナン、貴女達の目的はなんですか?」
「貴様らゴミの殲滅に決まっているでしょうが!」
「・・・ほう?」
カナンの怒鳴り声にジンは臆することはなく、むしろ興味深そうな顔をする
「ゴミ、とは酷いですね」
「酷いのは貴様らだ殺戮快楽者が!我々が何をしたでもなしに国を攻めてきておいて!よくもまぁそんな台詞を吐ける!魔人が戦いに来ているのに人間同士で争うようなことをしておいて!貴様らは人間に害なすゴミだ!ゴミは焼き払って処分しなければならない!」
カナンの言葉に対してジンは笑いながら言う
「そのような話は聞いたことも見たこともありませんよ」
「どうせ情報統制をしているんだろう!不都合なことを隠してやりやすくするんだろ!」
「おや、何故隠すんですか?むしろ貴方達が攻めて来たと嘘情報を民衆に広めて防衛という大義名分を手に入れてやった方が都合が良いでしょうに」
「へ?えーと、それは・・・私が知るか!」
はぁ、とジンは溜息を吐く。まともな会話が望めないとわかったからだ
ぽんっとカナンの頭に手を置き、呟く
「『魂縛』」
手から出た光がカナンの頭を包み、カナンは眠るようにその場で俯いた
「やれやれ、最初からこうすれば良かったですね」
ジンは目を閉じて意識を集中させ、カナンの頭の中の記憶を全て奪い取る
カナンが電流に打たれたように痙攣したがジンは少しも興味を示さない
「・・・これは!?」
慌てたように騒ぎ、カナンを置いてジンは部屋から出て行く
「・・・・・ここ・・・どこ・・?」
そんな少女の呟きは、誰にも届かない
「やれやれ、ようやく落ち着いたか」
アレンは牢の前で脱力する。その顔には殴られたような痕やひっかかれた痕がある
牢の中にはまだ学校に通うような年齢の子供が沢山いる。大半は疲れたのか眠っている
「ねえおじさん?」
「ん?俺か?」
牢の中にいる地味な見た目の魔女の一人が声をかけてきた
服装は他の魔女と同じ魔女のローブに軍服を混ぜたような紫の服だ。他の魔女は赤や緑などの色彩豊かな色に対してこの魔女は黒髪に黒い眼だ
「おじさんが、この国の英雄さん?」
「それはやめてくれ。俺は英雄と呼ばれるほどの強さを持っているつもりはない」
「・・・ふーん、でももう貴方でいいや」
魔女が何かを言った。その時には既に魔女はアレンの隣に立っていた
「いらっしゃい、英雄さん」
「な」
「にを言って!?」
言い終える前にアレンは王都の上空にいた。何かをしたわけではないのにアレンの背には白い翼があった
「・・・ふふふ」
そんなアレンの目の前に魔女がいた。そこにいるはずなのに絵でも見てるような錯覚に襲われる
パリパリと何かが剥がれ落ちる音と共に、魔女の姿が変わっていく
軍服の上から覆うように黒いロングコートが現れ、魔女の手に一本の黒い杖が現れる。それはこの世界には存在しない、魔界のみに存在する木から作られた物だった
髪や眼も黒から見惚れてしまうくらい綺麗な銀色へ変わり、その容姿も地味な顔から一転して老若男女問わず魅力する圧倒的な美しさがあった
だが、この世界にいる人間は皆知っている。銀色を持つ、あまりにも完成しすぎた容姿を持つ者達の存在を
「魔人・・・」
くるくると魔人は杖を回しながら言う
「我が名はヴァージリア。最も強く美しき我らが王の、五番目の子供」
杖を一振り、それだけで大量の剣がヴァージリアの周囲を埋め尽くすように現れた
「さあ、英雄よ。その力を私に見せるがいい」




