少女
この世界は小さな大陸で出来ていた。
何もないこの世界に一人の少年が住み着いてから緑と名の生きる根が生まれ始める。
それは長い年月をかけて、木へとなり神という者が生まれる。
神という者はまずは小さな大陸に人を生かす為に二人の男女を置く事にした。
それがいずれは大きな繁栄となり、次第に神はまた新しい人を一人と繰り返す。
それが次第に小さな大陸が大きくなり、神の手に生まれた人々は人間と名付けられる。
しかし、人間だけが生きているのではない。
犬、猫、馬、牛、鳥等数多にいる。人々は動物を可愛がり、時には感謝をこめながら牛から貰える牛乳という乳を貰っていたりと共存しあっていた。
時には羊から毛を貰い、それで人間の洋服を作ったり、あるいは木の恵みを受けて家を作ったり……。
しかし、いつの日にはこの生活もなくなるであろう。
永遠というのものはどこにもないのだから。
「人はね、永遠の命なんてないんだよ。いつか、人も死ぬんだ……だけど、それは転生って言ってね、人は来世っていう所でまた生まれ変わるんだよ」
そんな幻想話を一つ、少年は楽しそうに話す。
異端と呼ばれた少年は黒い髪を靡かせて輝く数多の星が見える丘に座る少女にそういう。
金色の髪に蒼い空のような眼を持つ少年は小さく、微笑みながら少女に告げた話を最後に丘を下りていく。
しかし、少女は止めるように手を伸ばすと声が出なかった。
どう、声をかけて止めればいいか少女にはわからなかった。
コツンッと少年は革靴を止めて振り返ると少女の言いたい事を当てるように口にする。
「もしかして、『もう少し、お話をして』と言いたいのかな?」
いつも一緒の二人は日頃、そんな幻想話を一つや二つと並べて夜空に浮かぶ空を眺めて楽しんでいる。
ほんのりと赤く染まる頬に手を置いて少女は微笑む。
「……もう一度、お願い」
そういうと少年は困ったように苦笑いを浮かべると少女に背を向ける。
しかし、その向けられた背の意味に理解をする頃には少女は絶望を味わう。
「今日は無理、もう……ネタないから」
少年は嘘をついた。人生最後の短い嘘を。
その夜、少年は丘を先に下りた。少女も少ししてから何でネタがないのか、悩みながら下りた。
丘をまっすぐ下り、吊り橋を超えれば村にたどり着く。しかし、その道中には少年の影が見当たらない。
そして村に戻って少年の家を尋ね、少年の母に訊ねた。
「帰ってきた?」
「え?あの子かい?……んー、まだ帰ってきてないねぇ……あの子が遅い時は何かしているに違いないけど…」
そう訊ねても母は知らないという返事が返ってくる。
仕方がなく、少女は翌朝に帰ってくる事を願って家に帰り、また翌朝に訊ねに来た。
その時、本当の意味を知った。
村の人が吊り橋の付近に集まっているのを目にして少女は傍に寄ると口元を抑えて悲しみに耐えた。
「おいっ!あそこの岩の所に人が…」
「こりゃあ、もう死んでるんじゃねぇか?」
飛び交う村の人の声。少女は人だかりとは正反対にある自分の家へと向かって走る。
溢れ出る涙、もうこの世界には話し合う人はない。
「もう…なんでよ…っ」
少年が嘘をついた理由は本当にネタがなかったのか?少女には理解できるのにはまだまだ日がかかる。
しかし、人は死ぬ少し前に普段とは違う行動に出る、という。
少女は助けられなかった。なんで、自殺をしたのか……理由を知らず、ただ沈む孤独を味わった。
「好き」
いつか、声に出して少年に言う日が来て……結婚して、子供を産んで、幸せな未来を想像して幸せだった。
なのに…いなくなったのはとても最愛の人だった。
手を伸ばしても何処にもいない、かける声も見つからない。いっその事ならば……。
最後に、暖かい夢でも見たい。
それが、最後の記憶。
パパパッと思った事を自由気ままに書いてみました。
人の人生というのは瞬き程度の短い命で時に、人は自ら命を絶つ事がある。
そんな短い人生を拙い文章で表しましたが……。
きっとよくある短編だと思いますが自分なりと精一杯の一つ目の短編です。