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  作者: フル
第一話「疾風怒涛! 双生児学園とのデスマッチ!」
4/14

悲劇的な別れ、浚われた君

―登場人物―

牧島和人(まきしまかずと):主人公。気が弱いが諦めが悪い。

坂本夕海(さかもとゆうみ):ヒロイン。お嬢様。清楚。和人様。

萩宮明日菜(はぎみやあすな):ヒロイン。赤猫。僕っち。怪力。後輩。

早乙女凛(さおとめりん):メインヒロイン。しかし今回出番はない。

――どこからともなくやってくる~、魚を嗅ぎ付けやってくる~、天井裏から! ダンボールの中から! 君の……背後から。にゃもにゃも~、正義のヒーローにゃもれんじゃあ~♪

「ん、この曲は……懐かしいな」

 夕海さんと日が傾くまで夢のような時間を過ごした後の帰り道を行く途中、どこかから聞こえてくる懐かしいメロディに耳を傾ける。

 これは僕が子供の頃に流行った、マタタビ戦隊にゃもれんじゃあのオープニングテーマだ。僕が小学生の頃は、男子(と一部の女子)はよくにゃもれんじゃあごっこを空き地でやったっけ。僕はいつも敵役のザコキャラだったけど、仲間に入れてもらえた数少ない遊びだったのでよく覚えている。

 凄い熱狂的なファンが多くて、僕が覚えてる中では会話のところどころに『にゃ』をつける子もいるぐらいだった。小学生だったから笑って許されてたけど、さすがに今はつけてはいないと思う。黒歴史ってやつかな。

――マタタビ近づけたらふ~らふら~、アゴを撫でられふ~にゃふにゃ~、でも、デモ、ご主人様が一番好きにゃの~、マタタビ戦隊にゃもれんじゃあ~♪

 それにしても懐かしい。一体どこから聞こえてくるんだろうか。気になりだしたら止まらなくなってきた僕は、少し歩いて音の出所を探ることにした。

「……あ、あそこからだ」

 曲が流れていたのは、少し行ったコンビニの前に止めてあるバイクからだった。燃えるような赤い色で、綺麗に塗られたバイク。ワンポイントなのか、にゃもれんじゃあのリーダー、赤猫のにゃもレッドのステッカーが貼ってある。どうやらこの人は、相当なにゃもれんじゃあフリークらしい。

「う、うわー。それにしても、どんな人がこのバイクに乗ってんだろ」

 やっぱり戦隊物オタクとかだろうか。いや、意外にいかついお兄さんだったりして?

 真っ赤なバイクを目の前にして思考を巡らせていると、どうやらバイクの持ち主がコンビニから出てきたようだ。猫型のヘルメット(どこかしらにゃもに似ている)を脇に抱えながら、牛乳の紙パックから伸びているストローを咥えて、おいしそうに吸っている。

 どうやら僕の予想の斜め上を行く、可愛らしい少女がこのバイクの持ち主だったらしい。

「~♪ ~~♪」

 夕日の光を浴びて、きらきらと光る肩に届くぐらいのセミロングの髪。アクセントとして少し束ねているのが、活発で明るい性格を主張しているようだ。ほっぺた一杯に牛乳を含んでいるのか、頬が膨らむその様はまるで某ハムスターアニメの主人公を彷彿とさせた。

「んぐっ、んぐっ……ぷっはぁ~! やっぱこれだにゃ~」

 口の中で牛乳の味を転がし、一口で頬の牛乳を飲み込むと太陽のように弾けた笑顔で口を拭った。白い八重歯がきらりと光り、満足そうな表情でバイクに跨る。ただ……僕とあまり変わらない年でにゃを付けるなんて。結構な強者の予感だ。もう少し観察してみよう。

 牛乳が物足りなかったのだろうか。もう一回牛乳をほっぺた一杯に含んで、ごろごろと頬を動かし味を確かめ、ふにゃりと頬を緩める。だが、ここで僕の視線に気づいたのか、一瞬こちらを見てから、

「ぶっっほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

思いっきり牛乳を、噴出させた。彼女の口の中でテイスティングされた牛乳が、スプレーを噴出させたような霧状になって僕の顔面へ直撃する!

「う、うわ、うわあああああ! 牛乳が、牛乳が目に!」

 あまりの出来事にパニック状態に陥る。というか牛乳が目に入って凄い痛い。なんだ、僕の顔はそんなに酷い顔だったのか!?

「げっほ! ごっほ! にゃあ゛あ゛! おええ! 吐くぅ、吐いちゃう! 牛乳が、僕っちの、入っちゃいけない器官的などごろにぃ!」

「っえ、何! 見えない、何も見えないから怖い! やめて、やめてええええ!」

「だ、だいじょうぶ、乙女はばいだりじないがら。ごうやっで、胸をおぢづがぜで……おろろろろろろrrrrrrr」

「いぃぃぃぃやああああああああ!!」

――ぬちゃり

 生暖かい何かが僕の顔に降りかかった。それは、決して彼女の嘔吐物なんかじゃない。それは、彼女の愛なんだ。だから、心して受け止めよう。そう思わないと、とてもじゃないけどこの惨状を受け止めることなんて、できそうに無かった。


    ◆


「ご、ごめんにゃ~、大丈夫かにゃ?」

「う、うん。後は家に帰ってお風呂に入れば大丈夫だと思う」

 僕に牛乳を振りかけた彼女はコンビニでタオルを買ってきてくれ、色んな物を拭うこと数十分、ようやく外を歩けるぐらいには回復した。

「それにしても、帰ってきてたんですにゃ、和人先輩。びっくりしたにゃ~、一言言ってくんないと、寿命が縮むかと思ったにゃ」

 にゃったくもう、とかため息をついているけれど……あれ? 僕、彼女と会ったことなんてあったっけ?

「え、あの……あなたは、」

「うにゃあ!? ま、まさかこの僕っちを知らにゃいにゃんて……言わないですよね?」

「え、いや、それは、その……」

 いきなり標準語に戻って凄みを増した彼女。どうやら本当に僕が知っている人物らしい。でも、誰だ……? こんな可愛い子がいれば、そうそう忘れないはずなんだけど。

 ……待てよ。いた、いたじゃないか。この町には言葉の端々に『にゃ』をつけ、きらりと光る八重歯が特徴的な、僕の憧れている彼女を愛していた、一個下の後輩が!!

「もしかして、君……萩宮はぎみやさん?」

「何故に疑問系……まぁいいにゃ、そうにゃよ! 日並町のにゃもレッド、あすにゃんとは僕っちのことにゃ!」

 ズビシッ! とにゃもレッドの決めポーズを決める彼女は萩宮明日菜はぎみやあすなさんだ。一緒に遊んだことは無いけれど、小学校の頃は一番のにゃもれんじゃあフリークとして有名だった人だ。雑魚キャラだった僕を何回倒したかわからないが、そういう意味では結構遊んだことがある人でもある。

 でも、嬉しいな。こんな僕を今まで覚えていてくれたなんて。こっちに来て最初は人間関係に大きな不安があったけど、この町はいい人ばっかりだなと痛感する。

「明日から姉御と二人っきりでいられると思ったのに……これはとんだ邪魔者にゃ」

「姉御……もしかして、早乙女さおとめさんのことかな?」

「そうにゃ……お前がいるせいで、姉御が僕っちを相手してくれる時間が大幅に減ること請け合いにゃ……あーあー、僕っちのバラ色高校生活がにゃ~!」

 早乙女凜さおとめりん、彼女こそ僕が憧れ、僕を何故か隣に置いてくれた憧れの人だ。まさか、彼女も僕のことを覚えていてくれているのだろうか?

「それにしても帰ってくるのが早いにゃ。僕っちの予想だと後三十年はここに来にゃいはずだったのに」

「はは……お父さんの仕事の都合だったから、僕にはいつこの町に帰ってくるかなんてわかんないよ」

「あーもー、台無しにゃ、台無しにゃ~。クズト先輩にはがっかりにゃ~」

「うん、ごめんね。よくわからないけど、ほんと、ごめんなさい」

 いやしかし懐かしい人に出会ったもんだ。僕の予想では、誰も僕のことなんて覚えていないだろうから、新転校生の心持ちでやっていこうと思っていたのに。

 うんうん頭を抱えながら悶えていた萩宮さんは、ふと真顔になってこちらを見た。

「……姉御には、会った?」

「いや、僕も会いたかったんだけどね。住所知らないし、もし僕を覚えていなかったらと思うと……怖くて」

 少し伏せ気味に言うと、僕の発言の何かが萩宮さんの琴線に触れたのか、

「馬鹿野郎にゃ!」

と叫びながら、

「ぶぐっはぁ!!」

僕を殴り飛ばした。三メートルは吹っ飛んだだろうか、そのまま横ばいになってアスファルトに叩き付けられる。アスファルトの上を体がバウンドするという、二度と経験したくないぐらいの苦痛を体験して思い出す。

 そ、そうだった。萩宮さんは、小さい頃からとんでもなく力が強かったんだ。小学校の頃でダンベル10kgを悠々と片手で持ち上げてトレーニングしていたぐらいだ、今はもっと力強くなっていると考えると、そのパワーは僕の計りを超えたものになっているに違いない。

「姉御はにゃあ! ずっと、お前が帰ってくるって信じて待ってたんだぞ! それを、それを『覚えてなかったら』なんて言う馬鹿野郎は死んでしまえばいいにゃ!」

「そ、そんな……早乙女さんが、僕のことを……?」

「はぁ……これだからクズト先輩は駄目にゃ。駄目駄目にゃ、その鈍さはプラキオサウルスに匹敵するにゃ」

 なんだかよくわからない例えを出しながら、萩宮さんは肩を落とした。どうやら早乙女さんは僕のことをまだ覚えてくれているらしい。だとしたら、是非とも会ってみたい。

 なんとか地面から体を起こし立ち上がる。萩宮さんはまだ怒っているようだったので、話を変えないと。

「……あれ、そういえば、早乙女さんってどこの高校に通ってるの?」

「そ、そんなことも知らないにゃんて……いいか! 姉御はにゃあ、かの有名な怒凄恋学園の番長にゃんだぞ!」

 どうだ恐れ入ったか! と萩宮さんは少しだけ残念な胸(本当に少しだけだよ……?)を張って、自慢げに答えた。なんだ、早乙女さんは怒凄恋学園だったんだ。そりゃあ、早々うまいこと事は運ばないよなぁ。

「怒凄恋学園なんだ……残念だなぁ。僕は双生児学園に通うことになってるんだ」

「にゃ……に……?」

「僕の家からだと怒凄恋学園の方が近かったんだけどね、ギリギリ学区外だったんだよ」

 しかし、本当に残念だ。もしかしたら夕海さんと早乙女さんの二人と一緒の学園生活を送れたかもしれないと思うと、贅沢なわがままと分かっていても残念に思う。

「そ、そんなことは許されないにゃ!」

「え?」

「ま、まずいにゃ……僕っちが和人先輩と出会っておきながらみすみす双生児の奴らに引き渡したと知れたら、姉御に何をされるかわかったもんじゃないにゃ……」

 ど、どうしたのだろうか、萩宮さんはいきなり頭を抱えて唸りだした。先ほど飲んでいた牛乳でお腹でも痛めたのだろうか?

「大丈夫、萩宮さん?」

「うっさい! 今いい考えが浮かばないか思考中なんだから話しかけないで欲しいにゃ!」

「は、はい! なんかすみません!」

「何か、何かいい考えはないかにゃ……」

 怒られてしまったので、しばらく何も言わずに萩宮さんの様子を見守ることにする。するとしばらくして、すっきりした表情(お腹が治ったのだろうか)になった萩宮さん。

「いい考えがひらめいたにゃ!」

「あはは……なんだかわかんないけど、よかったね萩宮さん」

「和人先輩、確か明日は双生児学園の始業式にゃ?」

「うん、そうだけど?」

 明日は僕が二年間通うことになる双生児学園の始業式がある。こういうイベントはいつも緊張と不安で一杯になってしまうのだが、今回は夕海さんがいるから大丈夫そうだ。

「ふふふ……天才的にゃ。まさに異端の発想を思いついてしまったにゃ。これで早くも僕っちは副番長になるかもしれないにゃ」

「?」

「まぁまぁ、和人先輩は何も気にしなくていいにゃ」

「そ、そう? ならいいんだけど」

「あ! 僕っちは急用を思い出したからこれにて失礼させてもらうにゃ。さっきは牛乳かけてごめんなさいにゃ」

「あ、そうなんだ。ごめんね、僕が牛乳をひっかぶったせいで留めちゃって」

「いいってことにゃよ。じゃあ僕っちは行くけど、その前に携帯の番号を交換するにゃ」

 そうして僕たちは、携帯の番号を交換してから別れた。なんか態度が急に変ったような気がするけど、僕に人の考えが読み取れるほどの洞察力は備わっていないので結局考えても無駄という結論にたどり着く。

 萩宮明日菜、なんだかんだ話してみると、昔とあまり変わっていない印象を受けた。自分の感情の赴くままに行動する様はまるで猫みたいだけど、早乙女さんのことであんなに怒る一面もある。今日はあまり話せなかったけど、今度時間があればもう少しお話してみたいな、なんて思った。


    ◆


 双生児学園始業式当日。喫茶店で別れる際、夕海さんとまた木ノ下公園の噴水広場前で待ち合わせをしようと約束していたため、朝早くから起きて身支度を入念に整えなければならない。

 今日から新しい環境でやっていく。不安はもちろんあるが、今回は既に友達がいるんだ。前の学校では一人も友達がいなかった僕にとっては、大いなる一歩といえよう。それに、先日萩宮さんに携帯の連絡先を教えてもらった(正確には僕の携帯を奪われた)ので、憧れの彼女である早乙女さんにも近々会うことができる。

「ここに来てから事がうまく運びすぎだろ、僕……」

 我ながら恐ろしいくらい不気味な事態だ。転校してくる前は、いつも木陰に佇んでいた僕を相手にしてくれる人なんかいなかったっていうのに。やっぱり何事も諦めないっていうのは、人生において最も大事なことなんだと改めて痛感させられる。

 身支度を整え終わり、家を出る前に何気なしにテレビを見ると、いつもの星座占いのコーナーがやっていた。ちなみに僕は12月2日生まれのいて座だ。最近の流れを見るに、運気急上昇中なのは間違いないと思われるので、わくわく気分で星座占いのキャスターを眺める。

「今日一番やばい運気の人は、いて座のあなた。特に12月2日生まれの人は要注意! 会いたい人には会えず、拷問され、身ぐるみを剥がされた挙句、血祭りにあげられることでしょう……今日は大人しく家から出ずに、ポテチでもつまみながら漫画を読むことをオススメします」

「は、はは……」

 まぁ、所詮は占いなんだ。世界中に何人12月2日生まれの人がいると思う? そんな奴らが全員血祭りにあげられたら、世界の人口が365分の364人になってしまうじゃないか。

「あ、でもでも、気落ちしないでくださいね。あなたの一番大事な人が、その先に待っているんですから」

 訳が分からない気休めの言葉を頂く。テレビだからって、適当なことを言ってもいいってわけじゃないのに。今日は夕海さんと始業式で一緒に写真を撮ったりするんだ。もうこの前までの僕じゃないんだ!

「いってきまーす!」

 無駄に気合の入っている僕の声に、多少呆れながらもお母さんは手を振って見送ってくれた。一歩、また一歩と今日から始まる楽しい新生活に向かって歩き出す。手を空へ突出し、意気込みを叫ぶ。

「ようし、頑張るぞう!」

 ……でも、これが僕が双生児学園の生徒として登校できた最後の日だったなんて、この時の僕は知る由もなかった。


    ◆


 春特有の、暖かい日差し。木の芽の匂い、舞い散る桜。情緒溢れる日並町と日和町の境目にある公園、木ノ下公園は春真っ盛りだ。

 悪戯に形を変える木漏れ日を楽しみながら、足取り軽く、悠々と歩いて行く。間違いない、僕は今浮かれている。

「あっ……夕海さんだ、おーい!」

 噴水広場まで辿り着くと、夕海さんが双生児学園のセーラー服を着て待っていた。映画のワンシーンみたいな彼女の姿に、普段なら臆して近寄れない僕だが、今なら僕もそのワンシーンの中に入れるような気がした。

「和人様! おはようございます」

 僕を発見するやいなや天使のような微笑みを浮かべてくれる彼女は、どうしようもないくらい僕の鼓動を高めてくれる。駄目だ、わかっててもにやけてしまう。あぁあ! この先健全な友達でいられるか不安でしょうがない!?

「随分早かったですね」

「いえいえ、それほど……ふふっ、なーんて。実は和人様より絶対に早く待っていたいから、30分も前に着いてました」

「そんなに早く待ってたんですか!? ごめんなさい、待たせてしまったみたいで」

 やっぱり夕海さんは優しい人だ。友達同士なんだから、約束の時間を幾らか過ぎたって僕は怒らないっていうのに。

「いいんです、いいんです。それより和人様、よろしければ私と手を繋いで……あれ?」

「ん、なんですか?」

「いえ、どこからかバイクの音が……」

 耳を澄ませる夕海さんにつられて、僕も耳を澄ましてみる。風に揺られて木々がざわめく音、噴水から水が生き生きと湧き上がる音、犬の散歩でもしているのか、じゃれつく犬の鳴き声。そして、

――どこからともなくやってくる~、魚を嗅ぎ付けやってくる~、天井裏から! ダンボールの中から! 君の……背後から。にゃもにゃも~、正義のヒーローにゃもれんじゃあ~♪

先日聞いたことがあるような、懐かしのメロディ。……これは、マタタビ戦隊にゃもれんじゃあのオープニングテーマじゃないか?

「やっぱりバイクの音。しかも、この音は双生児学園の生徒じゃない……」

「この音楽は、萩宮さんかな?」

 随分とバイクの音を警戒しているようだが、大丈夫だろう。萩宮さんは、僕に対しては厳しいけど(でも理不尽な厳しさじゃない)、他の一般人に対しては優しい人だ。

「萩宮、さん?」

「うん、僕の一個下の人でね。友達……ってわけでもないけど、割といい人だよ。この前あった時も、僕の顔を覚えていてくれたし」

「それってもしかして、萩宮明日菜さんのことですか?」

「え、えぇ。そうですけど……」

 ずいっと顔を近づけて僕に質問を投げかけてくる夕海さん。なんだ、彼女も萩宮さんのことを知っていたのか。

「このバイク音が萩宮明日菜さんなら、ますますおかしいですね……」

「何でですか?」

萩宮さんのことを知っているなら安心するだろうと思ったのだが、彼女は手を顎に添えて唸っていた。やがて意を決した表情で僕を見る。どうしたというのだろうか。

「だって、彼女は……」

「おーい、せんっぱーい! 和人せんっぱーいにゃ!」

「あ、やっぱり萩宮さんだ。おーい!」

 彼女が言いかけている途中で、萩宮さんが僕の名前を呼びながらバイクで噴水広場にやってきた。あの猫ヘルメットはケースにでも入っているのか、はじけるような笑顔でセミロングの髪を気持ちよさそうになびかせている。


――手を振り合う僕達。近づく距離、緩まないスピード、放たれる拳、抉れる僕の腹、せり上がる嘔吐感、吹き飛んでいく意識、真っ白になる視界、思いだされる数々の思い出、向こう岸には死んだはずのお婆ちゃん、そしてタマ(死んだ飼い猫)……あれ? 僕、もしかして死にそう?


「はっはっはー。任務完了にゃ! 残念だけど、双生児学園二年牧島和人は、この怒凄恋学園一年萩宮明日菜が貰って行くにゃ~」

「か、和人様ー! あなた、待ちなさい! 和人様を置いていきなさい!」

「にゃっにゃっにゃ、待てと言われて待つバカはいないにゃ。では、ばいにゃら」

 あれ、どうしたんだろう、体が動かないや。感じるのは風の音、揺れる体、壮絶な腹の痛み、そして、

「絶対に、絶対にお助けいたしますから! 信じてお待ちください、和人様ー!」

昨日僕の友達になってくれた、夕海さんの声だけだった。

―次回予告―

【凛】「……さて、覚悟はいいか、明日菜?」

【明日菜】「にゃ、にゃんの覚悟にゃ……姉御、顔が怖いにゃ。もっとにこやかに人生送った方が、数倍楽しく生きられると僕っちは」

【凛】「愛唯」

【愛唯】「いえす、マム」

【明日菜】「うにゃあ! 何するにゃ! 放すにゃあ!」

【凛】「そうだなぁ、まずはスカートとパンツを脱いでもらおうか」

【明日菜】「ヒ、ヒィ! 駄目にゃ、いくらなんでもそっち方面での拷問は18禁じゃないこの小説では」

【愛唯】「いえす、マム」

【明日菜】「だ、だめえええええええ! だめにゃああああああ! ごめんなさいにゃ! もう僕っちが先に登場したりなんか、金輪際いたしませんにゃ! 反省するにゃ!」

【凛】「本当かぁ……?」

【愛唯】「信用しちゃ駄目。これは猫、つまり猫の皮を被っている恐れがある」

【凛】「なるほど……だったら徹底的にお仕置きだな。ヤれ」

【明日菜】「なるほどじゃないにゃ! あ、ダメ、愛唯、そこは本当に、にゃ、にゃあああああああああああ!」

【愛唯】「次回、『火ぶたは切られた! 怒凄恋VS双生児』。来週も……お楽しみに」

【凛】「次回は私がようやく登場だ!」

【明日菜】「二人共……僕っちを散々弄り倒しておいて何事もなかったようにするなんて……泣いちゃうにゃ」

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