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今回も文章量が少ないです。今後は文章量を減らし話数を多くする、というのが主流になるかも、です。

「なあ、あの男について詳しく知りたくないか?」

消灯直前の宿舎のベッドで、二段ベッドの上の段に居る男にノミオルは話しかけられた。山羊のような風貌の、痩せて背の低い男で、妙にこの基地の交友関係に詳しい。(例えば、事務の女と誰それが実は付き合ってるなど)

「あの男って、ローニル伍長のこと?」

軍事教練の教科書を読みながらノミオルは答えた。

「ああ、そうさ。奴は君が来た次の日に煙のように現れた。しかも、毎日消灯時間が過ぎると、ルシル隊長の部屋に向かう。そして休日になると、首都に行くのさ。あの外見であの性格だろ?きっと首都にも女が居るのさ。そして、消灯を良いことにルシル隊長とお楽しみ中なんだ。訓練で君に言い寄ったのも、下心からに違いねえ。」

聞きたくも無い話を男は一気に話した。話好きな奴だ、とノミオルは若干聞き流していた。

「あら、そう。三人目の女に成れて光栄だわ。もう寝るから話しかけないで欲しいわね。さもないと・・・。」

「ああ、分かったよ。怖い女だぜ、まったく。」

男は吐き捨てるように言うと寝返りを打った。しばらくしてから電気が消え、ノミオルは本をベッドの下に入れ、目を閉じた。

 消灯してからしばらくたった時、ローニル伍長はルシルの部屋の扉を叩いた。

「失礼します、ルシル中佐。」

「ローニルか。入って良いぞ、鍵は開いてる。」

扉を開くと、デスクに座る長身で赤毛の女が出迎えた。メガネを外し、腕を組んでいる。ローニルは、彼女に畏敬の念に似たものを抱いていた。女性としての魅力もさることながら、驚くべきなのは階級に甘んじない意志の強さと、洞察力の鋭さだった。


更に陸軍元帥の一人娘なのだから、一兵卒の身では触ることすら難しい。机の前でローニルは静止する。

「今日の訓練での彼女の様子ですが・・・。」

「ああ、的に当てたな彼女。さすがは軍人の娘、といった所か。」

緊張感の無い口調でルシルは言った。

「ええ、彼女の射撃技術にも驚きましたが、同時に彼女から興味深い話が聞けました。」

「ほう、どんな話だ?」

ルシルが先を促す。ローニルはルシルの双眸を見て話した。

「彼女は、自分の父親もスナイパーだった、と言いました。そして、狙撃の知識は父親から教わった物だ、とも言いました。」

「父親がスナイパー、ねえ・・・。」

ルシルはつぶやくと、メガネをかけて卓上のファイルを開いた。無音の時間が流れる。

「知ってるか?伍長。」

「何をでしょう?」

しばらくして、ルシルがローニルに聞いた。メガネを外すと、彼女は伍長に語った。

「スナイパーという言葉は、スナイプという小さくてすばしっこい動物を仕留めた者に与えられる称号だ。この小動物は東部地方の山岳にしか生息していない。」

「と、言いますと?」

ローニルが尋ねると、ルシルはローニルを見つめて言った。

「つまりは、スナイパーという言葉は、東部の、旧バルジオのそれも山岳部の人間しか知らない方言だ、という事だ。統一後は有名になったスナイパーという言葉だが、由来を知ってるのはごくわずかだ。そして・・・。」

「そして、彼女がその由来を知っている、という事でしょうか?」

ルシルの目つきが険しくなった。

「確証はない。それを確認するのが・・・。」

「はい、僕の役目であります。」

「よくやった、伍長。もう休んで良いぞ。」

敬礼すると、ローニルは部屋を後にした。

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