謎の男
今回は短くて申し訳ないです。今後は改行のトラブルが起きないよう編集して投稿します。読んでいただき感謝します。
昼食をはさんだ午後、ノミオル達は早速、狙撃銃の実射訓練に移った。グラウンドの端に鉄板が的として配置され、それを狙い撃つ事になる。10丁の銃にそれぞれ二人がペアになり、一人は狙撃手、もう一人は観測手として双眼鏡を手に脇に並ぶ。
「一緒に組んでくれないかい?ビルセンタ伍長。」
見学を終え、これから射撃、という時にノミオルは後ろから男に声をかけられた。見たこと無い男だった。髪も目も薄い茶色で背はノミオルと同じくらい。かなりハンサムな外見だが、同時に身持ちが軽そうなひょうひょうとした印象を感じさせる男だった。
「ええ、構わないけど?ところで・・・。」
「ああ、失礼。俺はローニル。ローニル・フラン伍長さ。よろしくね、美人さん。」
名乗りの後のいきなりの口説き文句にノミオルは目を丸くしたが、そういう奴なのだとあきれる事にした。
「ペアは組めたか?のろのろしてると、酔っぱらったわたしの犬とペアを組む事になるぞ。」
酒をたらふく舐めたレノは、千鳥足で少し離れた所で双眼鏡を持っているルシルの足元に寝そべった。
「組めたみたいだな。よし、今から自分の銃に装填しろ。弾倉が空になったら再装填して観測手と交代だ。日没までに当てられ無かった奴には片付けをしてもらう。いいな?では始めろ。」
だいぶ離れた間隔でそれぞれが地面に伏せ、それぞれのタイミングで初めて触るライフルを撃ち始めた。ノミオルとローニル達二人は、左端から二番目のライフルに付き、ノミオルがライフルに、ローニルが双眼鏡を持ってその脇に伏せる。
「遠いな・・・。風は無いけど、気温も湿度も高い。それにここからだと角度の問題もある。当てられるかな・・・?」
「撃つときくらい黙っててくれない?」
スコープを覗いたままノミオルが言った。
「狙撃手の心労を緩和するのも観測手の役目だろう?」
「はいはい、分かったから喋るのをやめて欲しいわね。」
そう言いながらも、心ここにあらず、といった様子でノミオルはスコープのダイアルを回していく。
「風が止まないわね・・・。見越し射撃をするしかなさそう。」
「出来るのかい?ルシル隊長じゃあるまいし。」
「私の父親もスナイパーだったのよ。基礎は出来てるわ。後は応用だけ・・・。」
「へえ・・・。初耳だな、驚いたよ。」
二人ともスコープと双眼鏡を覗いたままで喋った。既に弾倉を撃ち尽くし、交代する兵士達も見かけられる。
「驚くのはこれからよ。」
そう言うとノミオルは引き金を引いた。音速を超えた弾丸は、鉄板のすぐ脇を通過した。かすったのかと思うくらい近くを通り、後ろの砂山に埋もれた。
「惜しかったね。もう3クリックくらい右だと思うな・・・。出来れば上にも2クリック。風が強くならなければ、だけど。」
「へえ、ちゃんと観測手らしい事も出来るのね。そのことの方が驚きだわ。」
「ハハハ、驚くのはまだ早いよ。」
ノミオルは次弾を装填した。弾かれた空薬莢が地面に転がったが、使用直後の薬莢は熱いため、触らずに放置した。
「カウントするかい?」
息を整えているノミオルにフラン伍長が聞いた。
「5からお願い。」
ノミオルが短く言うと、ローニルは数を数え始めた。
「いくよ、5・・・4・・・3・・・2・・・・1!」
2と1の間でノミオルは引き金を引いた。弾丸は、鉄板のほぼ真ん中に着弾し、火花と甲高い金属音を響かせた。
「今のはビルセンタ伍長だな?良い腕だ、まっすぐ帰っていいぞ。」
ルシルが後ろで賞賛した。二人は立ち上がり、ノミオルは銃の弾倉を外して二発だけ装填した。
「がんばってね、色男さん。」
「出来る限りベストを尽くすよ、美人さん。」
ノミオルは双眼鏡を受け取り、ローニルはノミオルから大きな弾倉を受け取った。