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中隊長詰め所にて

更新が遅れて大変申し訳ありませんでした。この小説は必ず書き終えたいと思っていますので、どうかこれからもよろしくおねがいします。

夜遅く、ノミオル・ビルセンタ伍長が兵舎で寝ている頃(ノミオルに初日から異性としての興味を感じた男性兵士も少なく無かったが、倒されて野戦病院に送られるのがオチ、というのが彼らの共通見解だった)学校のような建物の一階、西側の角にある部屋では明かりを付けて机に座り、書類にサインをするルシル・キンバレの姿があった。日付が変わったため今日の訓練の為に野戦戦闘服とブーツに着替えているが、髪は下ろしたままで、目にはメガネを付けている。足元には、大きい犬が横になり寝息を立てていた。(奇遇なことにメガネも犬も地球とあまり変わらず、呼び名も一緒である)犬は地球でのグレートデーンという犬種によく似ている。大きな耳と尻尾が垂れているのが違いといえる。

 ルシルは遠視であり、その為の矯正メガネであった。昼間の粗暴な雰囲気は消えて、クールビューティな雰囲気が漂う。適当に流し読みをしたりせずに、認可する書類にのみサインをしていく。

 壁には、箪笥があり、今は閉じられていた。洋服や帽子を掛ける為に壁にはフックが二つ付けられていて、彼女の制服とピストルベルトがそれぞれかかっている。ベルトには、戦闘服と同じ厚手の布で出来たホルスターと予備弾薬を入れる為のポーチが付けられている。ホルスターにはルセ・バルジオ軍正式採用の自動拳銃が入っている。

 不意に、足元で寝ていた犬が起き上がった。続いて、ドアがノックされる。

「誰だ?」

「ルシル中佐、情報将校のサムル少佐がお見えになりました。」

「おお、彼女が。部屋に入れてやってくれ。」

「失礼します。」

ラオル曹長が部屋のドアを開けると、陸軍の制服に身を包んだ女性が入ってきた。肌は白く、目は薄い灰色で、髪の毛は脱色したような白。髪はあごの長さでまっすぐ切りそろえていた。北方の出身であるサムル・ドミトレ少佐は冷徹な外見通り、いかなる任務でも冷静かつ慎重な捜査で情報を集める希有な女性将校だ。開戦間近のこの時期では彼女を重要視する声も絶えず、現に彼女の灰色の双眸の下にはうっすらと隈が出来ている。

「夜分遅くに失礼しました、ルシル中佐。」

「気にするな少佐。久しぶりだな、元気だったか?」

質問には答えず、少佐は持っていた鞄から分厚いファイルを取り出す。

「早速ですが、今朝撮られた偵察写真をご覧になって貰います。」

「分かった。」

 ルシルはメガネを外してファイルを受け取り、開いた。そこには、かなり高い高度から高倍率で撮られた写真がはさまれていた。鮮明な物もあれば、不鮮明な物もある。

「鮮明な写真は飛行機のエンジンを切りグライダー飛行で撮った物です。不鮮明な物は対空砲火を避ける為に通常飛行中に撮影しました。」

「少佐が撮った写真か・・・。鮮明なのは我が軍の地雷原のようだが?」

ルシルが写真を机の上に置くと、サムル少佐が指で指し示しながら説明していく。

「はい。地雷原は大陸の南南東、敵の目の前とそのやや西、敵が迂回した時に通る道に仕掛けてあります。いずれも大型で、高性能な対戦車地雷です。敵も馬鹿ではありませんから、地雷原を縫うように移動するはずです。」

「とすると、敵の進軍が遅れる、ということか?」

ルシルが訪ねると、少佐が肯定する。

「おそらくは。地雷は戦車がぎりぎり通れない幅に設定し仕掛けました。歩兵と小型の車両で進軍し、地雷を処理しつつ戦車で行軍するはずです。」

 説明を受けてルシルが顎に手を当ててうなった。

「うまく行けばいいが・・・。進軍はどれくらい遅れる予定だ?」

「司令部の計算によると、長くて三週間、短ければ二週間ほどです。」

「それだけあれば次の手段を考える事は出来そうだな。空軍の連中はなんて言ってた?」

それを聞いた少佐は珍しく表情を崩した。あからさまに落胆した様子だ。

「特に何も・・・。秘密兵器の製造が先だ、とか詳細は上層部しか知らないとかなんとか。敵戦闘機の航行距離が短く空中戦が起こらないのを良いことに、デスクにふんぞり返ってましたよ。今頃は酒でも飲んで踊ってるんでしょう。」

「そうか、もうすぐ統一記念日だったな。終戦からちょうど20年になる。なあ、少佐?」

ルシルが少佐に向き直って尋ねる。真剣な眼差しだ。

「何です?」

「わたしらはもういくつになった?」

真剣な顔で訪ねられた失礼な質問に、少佐はムッとした表情になる。

「酔ってるんですか?記念日から逆算すれば誰でも分かりそうな問題ですが。」

「冗談だ、忘れてくれ。不鮮明な写真は一体何を撮ったものだ?」

「ええ。これは敵に占領された沿岸地域の写真です。中央に小さく写っているのがかつての海軍の拠点、スシール軍港です。」

「沿岸施設は全て破壊されたはずだが?そうとう激しく空襲されたんだ。」

普段の調子に戻ったふたりは、ドアのそばを行ったり来たりしている犬を尻目に話を進める。

「いえ、空襲は綿密に計算されたものらしく、クレーンや港湾施設を残し、対空火器や軍艦だけが徹底的に破壊されました。どうやら敵は沿岸設備を乗っ取り、自軍の軍備拡張に使っているようです。」

「食えない連中だ・・・。」

「ええ、まったくです。迎撃を恐れて近くの空港も破壊していったので敵の航空機が内陸に飛来しないのが有一の救いと言えます。」

 ふたりが話し終えると、犬がドアの前で座り込み、クーンクーンと鼻で鳴き始めた。

「おっと、そうか。もうすぐあいつと散歩に行かなければならん。有益な情報をどうも、少佐。」

「いいえ、仕事をしたまでです。では。」

少佐は敬礼をすると、自分でドアを開けて基地を後にした。

 ルシルはイスから立ち、背伸びをすると、大きな声で犬に言った。

「ようし、散歩だ!レノ。」

レノと呼ばれた犬はルシルに駆け寄ってそれに応えた。

改行がおかしくなっているトラブルを直しました。本文も少しだけ変更してあります。読みづらくて申し訳ありませんでした。

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