序章
とある銀河のとある場所に、地球からさほど遠くない位置に、地球にそっくりな青い惑星がある。
太陽のような大きな恒星に照らされ、その星では豊かな生命が育まれていた。
そのうち人類が誕生し、同時に文字や文化、宗教や学問が誕生し、そして人間同士の争いが多発した。初めは石器や弓を使った原始的な戦いも、年月を経るごとに高度化し、地球とほとんど同じような末路をたどっていた。戦争である。
この星には、この惑星の住人が付けたノーレムという名前がある。この星の住民は、まだ宇宙から自分の惑星を客観的に眺めたことはない。しかし、工業や科学はめざましい発達をしていて、宇宙へ到達するのも時間の問題であった。
この星には、いくつかの大陸がある。大きく分けて5つの大陸があり、現在は地殻プレートが強固につながっていて地震や噴火はあまり起こらない。遙か昔に起きた地殻変動で、全ての大陸に大きな山脈ができた。その山脈の名前を取って人々は大陸を「~大陸」と呼んでいる。
北極から南極にかけての広い範囲に菱形を縦にしたような非常に大きな大陸がある。長年の浸食により、現在では南半球と北半球で大陸が分断されるように海峡ができている。それぞれ南極側と北極側に東西に山脈が延びていて、山脈は年中雪に覆われるほど標高が高く、一部の山岳民族以外に人は住んでいない。
山脈から徐々に離れると、農耕や牧畜に適した気候と環境の大地が広がる。北半球側の大陸にある山脈をノーレ山脈と呼び、南半球側の山脈をレム山脈と呼ぶ。
北半球側の大陸のやや南よりに、すなわち海峡の近くに大きな国がある。名前はルセ・バルジオ。最近、直接民主制を導入した民主主義の国である。
20年ほど前まで、この付近はルセという民主主義の国と、バルジオ帝国という立憲君主制の国が二つあった。互いに仲が悪く、太古の昔から戦争をしていた。
しかし、ついにバルジオ帝国が軍備を整えてルセを攻撃。事前に備えていたルセはすかさず反撃し、激しい戦争が繰り広げられた。戦車や火器を使った地上戦や飛行機や艦船を使っての海上戦・空中戦。
やがて、ルセはバルジオ帝国の主要都市を次々と制圧し、首都に達する。その時点でバルジオ帝国は降参し、ルセはバルジオを併合し、ここにルセ・バルジオという国が誕生した。
そんなルセ・バルジオのやや海峡寄り、東西ほぼ真ん中に大きな都市が築かれている。首都ルバジオである。併合後にできた首都で、ルセ、旧バルジオどちらからもアクセスしやすいようこの中間位置に作られた。
しかし、かつては世界一豊かな街として名をはせたこの都市から人々は次々と北へと移動していった。大規模な疎開である。
一年前、海峡を挟んだ南半球側の大陸に点在していた小国同士が連合軍を結成し、なんの前触れもなく海峡にあったルセ・バルジオの軍事施設を電撃的に空爆したのだ。その後は航空母艦や艦隊から次々と兵士や車両がルセ・バルジオに上陸。来るべき戦闘に備えて民間人は疎開し、首都ルバジオには軍人や政府高官だけが残った。
電撃的な空爆から一年後、じわじわと首都ルバジオに向けて進行しつつある連合軍を撃退すべく、多数の男子と兵器が次々と増員、増産されている。ルバジオの高い建物の屋上には対空機銃や重機関銃が設置され、市民の憩いの場所であった公園や広場には野戦砲や高射砲が設置されて元の穏やかな風景は一変した。
そんな、物々しい状態の首都から数十キロメートル離れた場所に存在する、とある陸軍の基地で物語は始まる。