第五話:意識
身体が熱い。
それも全身を焼き切られるように熱い。
追加して全身が鉛に置き換えたように重い。
それが起きてまず感じた事だった。
目を開けば清潔感のある白い天井とその天井に固定された可動式のレーン。
そろそろ防寒具を要する季節になったのに空気は乾燥していない。
そしてここが保健室だと理解した。
「………俺、何時の間に寝てたんだよ。……てかどうやって教室から移動した。」
自問して俺の膝元で莉乃が寝ていることに気がついた。
なんでコイツ、俺よりも気持ちよさそうに寝息立ててんだよ。
てか授業は?
俺の疑問に答えてもらおうにも、回答者はスヤスヤ気持ちよさげに眠っているからそれは無理。
莉乃を起こさないようにベッドから抜け出すと机に置かれていたブレザーを莉乃の肩にかけてカーテンから出る。
するとすぐに白衣を纏った看護教諭と眼が合った。
「可愛い彼女と乳繰り合ってんじゃねぇよ、性少年。生臭いから近寄って来るな。」
何処のどいつだ。
こんなモラルも常識も知らない人間に教員免許を渡して、雇ったやつは。
とは思ったものの、コレの機嫌を損なって現状を知れない、というのは本意でないので丁寧に聞く。
「俺って何時からここで寝てました?後、教室に戻っていいですか?」
「お前バカか?39℃オーバーの人間が授業に出ようとするな。この時期だとインフルエンザかもしれないから病院行って診察受けて来い。もしインフルを移したら地獄の果てに送りつけるぞ。担任には話を通してあるからさっさと彼女連れて帰れ。もう学校来るな。来たらワクチン原液まま打ち込むぞ。」
言葉を返すのも億劫なので俺は覚束ない足捌きを正しながら保健室から出ようとする。
「おい、性少年。彼女を連れて帰るの忘れてるぞ。欲求不満な看護教諭が手を出すかもよ。」
「セクハラ教師。ソイツは彼女でもなければ候補でもねぇよ。それと手が出せるもんなら出してみろよ。ソイツ、とんだじゃじゃ馬だから、気を付けないと怪我するぞ。あと女らしい言葉使え、男女。」
より重くなった足を忙しなく動かし、通学路の途中にあるコンビニで栄養剤と風邪薬を買って帰途に着いた。