第1章 創造神
不足分がありましたので加筆修正しました
大変失礼致しました
気づくとそこは真っ白い何も無い空間だった。どこまで続いているのかわからないくらい広い。遠くを見てもただ白色が続くばかりだ。上を見上げても天井のようなものは見えない。ただひたすら白が広がっているだけだ。
「ここは何処だ……?」
呟くが答えは得られない。試しに歩いてみると普通に移動することが出来た。しかし一向に景色が変わることはなかった。
(夢でも見ているのか……)
そう思った矢先のことだった。突如前方に扉のようなものが出現したのだ。それは木製の簡素なものであり、ノブ部分には鍵穴のようなものもある。俺はおそるおそる取っ手を捻った。すると簡単に開いてしまう。中に入るとそこは大きな円形のテーブルが置いてある部屋となっていた。
「これは……?」
困惑していると奥の方から声が聞こえてきた。
「おや、客人とは珍しい」
端正な顔立ちの青年が奥の方からやって来た。見た目的には十代後半といったところか。服装は白を基調としたものになっている。全体的には好青年といった印象を受ける。
「こんにちは。僕の名前はライアスっていうんだけど君の名前は?」
「ラルス・ゼイルスだ。ここは何処なんだ?」
俺は単刀直入に訊ねた。すると彼は微笑みながら答える。
「此処は世界の狭間にある領域さ。通常であれば人が訪れることはめったにない特別な場所なんだ」
「世界の境界線上にある場所……?」
俺は唸るように言った。俄かには信じ難い話だったが目の前の人物の態度を見る限り嘘を言っているようには思えなかった。それに他に説明のしようもないのも事実である。ならば受け入れるしかないだろう。
「それで、君はどうしてこんな所に来たんだい?」
「俺は魔物の侵攻があって戦っていたんだが途中で闇の騎士に襲われて意識を失ったんだ。気がついたら此処に居たというわけだ」
俺はこれまでの経緯を掻い摘んで話した。
「そうか……。それは災難だったね……」
ライアスは同情するように言った。
「それで結局ここは何なんだ?お前は誰なんだ?」
俺は再度問いかける。すると彼は少し困ったような顔をしたあとでゆっくりと口を開いた。
「僕は神だよ。正確には創造神と呼ばれる存在かな」
「創造神……だって?」
俺は驚きを隠せずにいた。まさか目の前の少年が神様だったとは思わなかったからだ。もっとも、いまいちピンときていないということもあったのだが……。
「うん。まぁ厳密には少しばかり異なるんだけどね」
彼は肩をすくめながら言った。
「どういう意味だ?」
「創造神って言ってもね、所謂全能ではないんだよ。」
「全能ではない?」
「そう。例えば、僕自身は直接干渉することはできない。だからこそ偶にここを訪れる君のような人間を転生させる事があるのさ」
「転生させる……?」
俺は首を傾げた。話についていけず混乱してしまったからだ。
「済まない。君は既に死んでいるんだ。でなければ転生とは言わないだろう?」
「………。」
俺は言葉が出なかった。信じられない現実を突きつけられ愕然としていた。
「気持ちはわかるが順番に説明させてもらいよ。まず第一に僕はこの世界を作っただけということ。
第二に直接的に干渉し思い通りに世界を変えられないこと。
第三に僕は魔族が誕生した事には干渉していないこと。
第四に現在この世界では魔族の侵略が始まっており、このままだと世界が破滅してしまうということ。
第五に君には勇者に生まれ変わってもらうこと。
第六に君の記憶は維持されること。
第七に転生した際に特殊能力を授けること。
第八に転生後の肉体は君自身の魂と共鳴し合うことで成長するものになるということ。
第九に成長速度は個人差があるので一概には言えないが、努力次第では超一流の戦士になることも可能だということ。
第十に寿命に関しては普通の人間なので気を付けてほしいということ。
以上だけど何か質問はあるかな?」
「……」
あまりの情報量に圧倒されてしまい思考停止に陥ってしまった。暫く沈黙が続いた後ようやく脳内で整理できたので一つずつ確認することにした。
「まず第一に世界を作ったというのは本当なのか?」
「うん、そうだよ」
彼は即座に肯定した。あまりにもあっさり認めたので拍子抜けしてしまった。
「次に直接干渉出来ないという件について詳しく教えてもらいたいんだが」
「それはね、神と言っても万能ではないということなんだ。例えば自然現象程度の影響を与えることはできるけれど物理法則を超越したり因果律を超えるような奇跡を起こすようなことは不可能なんだ。つまり、あくまでも傍観者としてしか関わることが出来ないと言うことだね。
以前魔族を退けたのも直接ではなく勇者に力を与えて成し遂げたんだ。」
彼はさらりと言ってのけた。確かに言われてみればそうなのかもしれない。少なくとも俺の知る限りでは神様が直接手を下したという話は聞いたことがないからだ。ただ単に知らないだけの可能性もあるが。しかし納得出来ない点もあったので更に追及することにした。
「もし仮に魔族による侵攻を止めたいと思った場合はどうすれば良いんだ?このままだといずれ全ての国家が崩壊してしまうんじゃないのか?」
「その時は僕ではなく君達人間が立ち上がる時だと思うよ。僕としてはそっちの方が望ましいと思っているしね。それに何も打つ手無しっていうわけではない。例えば聖剣を使うとか」
「聖剣だと!?」
思わず叫んでしまった。聖剣といえば伝説の武器の中でも最高位に位置するものだ。それがこの世界に存在するとは夢にも思わなかった。興奮を抑えきれず早口になってしまう。
「聖剣は勇者のみが使い熟せるんだけど、武器として振るう分にはそこそこの技量があれば装備は可能なんだ。」
「そこそこ……ってどんな感じだ?」
「一般的なレベルの剣術なら使えるけど、聖剣本来の性能を発揮できるかと言われると不可能かも知れないね」
「なるほど……」
要するに才能が必要不可欠というわけか。だがそれ以前に気になることがある。そもそも聖剣自体何処にあるのだろうか?
「因みに聖剣は現在封印されている状態なんだよね~。」
「封印されてるって……どうやって解くんだよ……」
俺は呆れたように言った。すると彼は得意気に語り出した。
「簡単だよ。勇者である君が手にすればいいだけだよ。」
「それだけか!?」
あまりにもシンプルすぎて驚いてしまった。だが同時に不安にもなる。本当にそれで解決するのだろうか?
「勿論条件付きだけどね。まずは資格を得ること。」
「資格……つまり魔族を倒せるようになれということか?」
「そういうことになるね。ちなみに期限はないから焦らず頑張ってくれればいいと思うよ」
随分緩い制約だと思ったが有難いことではある。しかし問題が一つあった。
「でもどうやってその資格を得ればいいんだ?」
「それについては心配御無用。ちゃんと方法を考えてあるから」
彼は自信ありげに宣言する。一体どんな手段があるというのか期待せずにはいられなかった。
「まず最初のステップとして君には勇者に転生してもらうよ。そして成長と共に能力を覚醒させていくんだ。最終的には魔王クラスの強さになれば合格ラインだと思ってくれたらいいよ」
「随分具体的な内容だな」
俺は感心しながら言った。流石は創造神といったところか。抜かりがないというか何というか……。
「まぁね。でもまだ終わりじゃないよ。まずはスキルを与えるね。最初は……『鑑定』かな?これは自分を含む対象の情報を読み取ることができる能力だよ。それと、『身体強化』と『武術の極み』、『魔術の極み』…あと何か欲しいスキルはあるかい?希望があれば可能な範囲で叶えてあげるよ」
「なら、料理が上手くなるようにしてくれないか?」
俺は思い切って要求してみた。別段食べなくても死ぬことは無いが毎日食べる物は美味しい方がいい。
「うーん、良いよ。ついでに食材に関する知識も与えておくね」
彼はあっさりと承諾した。
「ありがとう。助かる」
俺は礼を言った。正直断られると思っていたから意外だった。
「まあ、元々君が居た世界に転生し直すだけだから常識とかは大丈夫だよね」
「あ、ああ…?って異世界から転生する奴もいるのか?」
「結構あるよ。この世界の先代勇者は異世界から来たんだから。」
「そうなのか?」
俺は目を丸くした。異世界とは一体どんな所なんだろうか…?想像すると少し楽しみになってきた。しかし今はそんなことを気にしている場合ではないと思い直す。今は一刻も早く元の世界に戻るのが先決だろう。
「よし、準備完了だ。それじゃあ行ってらっしゃい」
彼はそう言うとパチンッと指を鳴らした。刹那、眩い光に包まれ視界が奪われる。
(また会おうね……ラルスくん)
薄れゆく意識の中でそんな言葉を聞いた気がした。




