第7話 俺は考えるのをやめろと言われ、先生が先に壊れていたωω
異世界七日目。
俺は――
考えることを禁じられた。
「本日より、勇者には“思考停止トレーニング”を受けてもらう」
リーナが言った。
「正式決定だ」
「世界を救う方法が“バカになる”なの、納得いかないんだけど?」
「統計的に一番被害が出ていない」
「統計が冷酷すぎる」
連れてこられたのは、城の外れ。
隔離棟。
壁には看板。
『勇者用・思考矯正施設』
「ネーミングセンス!!」
扉が開く。
中にいたのは――
白衣の男だった。
目がイっている。
笑顔が多すぎる。
瞬きが少ない。
「やあやあやあ!!」
距離が近い。
「私は思考停止トレーナーの――
ドクトル・ムムム!!」
「名前からもう信用できない!」
「さあ勇者君!!
今日は“考えない練習”をしよう!!」
「普通逆だろ!!」
ムムムは黒板に書いた。
考える=悪
考えない=正義
「極論すぎる!!」
「だが結果は出ている!!」
ムムムは真顔になる。
「君が考えた瞬間、
城が壊れ、街が揺れ、
国が泣いた!!」
「言い方ァ!!」
「だから!!」
ムムムは両手を広げる。
「考えなければいい!!」
「雑な結論!!」
第一訓練
「何も考えずに立て」
「まずは基本だ!!
立て!!」
「立つのに講義いる?」
俺は立った。
「ダメだ!!」
「なにが!?」
「今、
“ちゃんと立ててるかな”
って考えただろう!!」
「考えるな無理だろ!!」
ムムムは笛を吹いた。
ピピー!!
「失敗!!
床、沈下!!」
――ミシ。
床が一センチ沈んだ。
「やめろォ!!」
第二訓練
「何も考えずに歩け」
「次!!
歩行!!」
「普通のことをさせろ!!」
一歩。
「考えるな!!」
「考えてない!」
「嘘だ!!
“転ばないように”って考えただろ!!」
――ドン。
遠くで物が倒れる音。
「被害出てる!!」
「ほら見ろ!!」
ムムムは狂った笑顔で言う。
「君は考えると世界を殴る!!」
「例えがひどい!!」
第三訓練
「無を保て」
「最終訓練だ!!」
ムムムは椅子を置いた。
「座れ!!
そして――
無になれ!!」
「無理だって言ってるだろ!」
「いいから!!
何も!!
考えるな!!」
俺は座った。
目を閉じた。
呼吸。
……。
……。
……。
何も考えていない。
本当に。
結果。
――何も起きない。
静寂。
「……」
「……」
ムムムの目が、震えた。
「……成功?」
世界は静かだった。
被害ゼロ。
ムムムは膝から崩れ落ちた。
「……完璧だ……」
「え?」
「勇者君……
君は“考えない”才能の塊だ……」
「褒められてる気しない!」
ムムムは俺の肩を掴んだ。
目が怖い。
「だが!!」
「だが!?」
「君はまだ“考えないことを考えている”!!」
「哲学やめろォ!!」
その瞬間。
ムムムが――
自分で考え始めた。
「もし……
もし勇者が考えず……
周囲も考えなければ……」
――ドン。
施設が揺れた。
「お前が考えるなァ!!」
リーナが叫ぶ。
「先生!!
思考停止!!」
「はっ!?」
ムムムは慌てて目を閉じた。
揺れ、止まる。
静寂。
全員が悟った。
一番危険なのは、
勇者について考えすぎる人間だ。
その日の結論。
思考停止トレーニングは中止。
理由。
先生が一番向いてなかった。
ムムムは別室に隔離された。
「……なあ」
俺はリーナに聞いた。
「結局、俺どうすりゃいい?」
「……」
リーナは少し考え――
すぐにやめた。
「考えるな」
「即やめるな!!」
異世界七日目。
俺は知った。
この世界では、
考える力がある者ほど危険である。
特に――
俺のことを真剣に考える奴。




