第15話 神はトイレに行けないωω
異世界十五日目。
俺は――
うんこがしたかった。
以上。
だが、世界はそれを許さなかった。
朝。
俺の部屋の前。
行列。
「……何の列?」
リーナが即答する。
「参拝」
「帰れ!!」
供え物の山。
果物。
パン。
香。
なぜか消臭剤。
「気づいてる?」
ヒロインが言う。
「あなた、
“生理現象も神聖”扱いされ始めてる」
「最悪の進化だろ!!」
俺は腹を押さえた。
限界だ。
「……トイレ行く」
――ざわ。
ざわざわ。
「神が……」
「移動を……」
「導線を確保しろ!!」
なぜか、
赤絨毯が敷かれた。
「やめろ!!
うんこだぞ!!」
「“浄化の儀”だ!」
「違う!!
腸だ!!」
トイレ前。
人が集まりすぎて、
入れない。
「どけ!!」
「静粛に!!」
「神の“気配”が――」
腹が鳴った。
ぐるるる。
沈黙。
誰かが震える声で言う。
「……予兆だ」
「違う!!
昨日のスープだ!!」
ヒロインが冷静に言う。
「このままだと――」
「分かってる!!
漏れる!!」
俺は叫んだ。
「いいか!!
俺は神じゃない!!」
「否定なさる……」
「今から!!
クソをする!!」
完全沈黙。
次の瞬間――
全員がひざまずいた。
「神が……
“排出”を……」
「言い方ァ!!」
俺はトイレに入った。
鍵を閉めた。
座った。
「……はぁ」
安堵。
だが。
外がうるさい。
「祈れ!!」
「姿勢を正せ!!」
「神の“間”だ!!」
「やめろ!!
集中できねえ!!」
その時。
ブリッ
――音。
外。
鐘が鳴った。
「鳴らすなァ!!」
結果。
なぜか、
街の詰まりかけていた下水が
全部流れた。
被害ゼロ。
悪臭消失。
人々がざわめく。
「……奇跡」
「神は、
詰まりを解いた……」
「俺の腸と関係ねえ!!」
トイレを出た瞬間。
拍手。
涙。
抱擁。
「触るな!!」
国王代理が真顔で言う。
「本日を
**“大浄化の日”**と定める」
「やめろォ!!」
ヒロインが即メモ。
「神話、確定」
「最悪だ!!」
夜。
俺はベッドに倒れた。
「……なあ」
リーナが言う。
「今日の件」
「忘れろ」
「無理だ」
「だよな……」
ヒロインが淡々と結論を述べる。
「神格化、
不可逆段階に突入」
「トイレのせいで!?」
「トイレは、
人類共通の神秘」
「持ち上げすぎだろ!!」
異世界十五日目。
俺は知った。
人は、
自分が一番恥ずかしい瞬間を
神話にする。
そして俺は――
世界で唯一、
排泄を儀式にされた男になった。
明日。
絶対、
もっと下品なことが起きる。
確信している。




