第14話 俺は何もしてないのに、神棚に置かれたωω
異世界十四日目。
朝起きたら、
俺の部屋の前に供え物が置かれていた。
「……何これ」
果物。
パン。
なぜか塩。
誰だよ。
リーナが来た。
顔が死んでいる。
「……聞いてくれ」
「やだ」
「街で――
お前が神扱いされ始めている」
「知ってた」
「即答するな!!」
原因は、
昨日の内戦未遂だった。
派閥が剣を抜き、
誰も止められず、
最後に俺が言った一言。
『腹減った』
それだけで、
全員が剣を戻した。
人はそれを、
奇跡と呼んだ。
「“言葉一つで争いを止めた”」
「“武器より強い沈黙”」
「“神の介入”」
「全部盛るな!!」
街に出た。
異様だった。
俺を見ると、
人が手を合わせる。
「……」
「……」
「おい、やめろ」
「御声を……」
「出ねえよ!!」
露店の前。
商人が震えながら言う。
「勇者様、
今日は何を食されますか」
「普通にパン」
「……パン……」
周囲がざわつく。
「パンを選ばれた……」
「質素……」
「我らも倹約を……」
「勝手に学ぶな!!」
昼。
広場。
小さな祭壇ができていた。
「待て」
「何だこれは」
司祭が前に出る。
「“沈黙の神殿”です」
「名前が怖い!!」
「神は多くを語られない」
「俺は神じゃない!」
「否定なさらないのも神らしい」
「否定してる!!」
ヒロインが小声で言う。
「……神格化、進行中」
「止めろよ」
「無理」
「即答!?」
「人は
理解できないものを
神にする」
「俺、
理解されないだけで
神になったの?」
「そう」
最悪の成り行きだった。
夕方。
事件が起きた。
子供が転んだ。
膝を擦りむいた。
泣きそう。
周囲がざわつく。
「勇者様……」
「……」
俺は近づいた。
考えていない。
ただ、
手を差し出した。
「立てるか?」
子供は頷いた。
立った。
泣き止んだ。
――それだけ。
なのに。
「……奇跡だ」
「神が触れた」
「祝福だ……」
「違う!!
普通の行動だ!!」
その夜。
新しい噂が生まれた。
『神は、
触れるだけで人を立ち上がらせる』
「立ち上がるの、
自分の力だろ!!」
城。
会議。
国王代理が真顔で言った。
「正式に検討している」
「何を」
「国教」
「やめろォ!!」
「神像は作らない」
「そこじゃない!!」
「祭日は最小限にする」
「止める気ないだろ!!」
ヒロインが資料を閉じる。
「神格化は
止められない」
「じゃあどうするんだ」
「管理する」
「管理!?」
「神を制度に組み込む」
「悪い予感しかしない!!」
夜。
俺はベッドに座っていた。
供え物が増えている。
「……なあ」
誰にも向けずに言った。
「俺、
ただ普通に生きたいだけなんだけど」
答えはない。
でも。
外で誰かが祈っている。
俺の名前を呼んで。
異世界十四日目。
俺は知った。
人が一番危険なのは、
誰かを神にした時だ。
しかも――
その神が、
必死に否定している場合。
明日。
もっと面倒なことが起きる。
確信している。




