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腹が減っては戦はできぬ

暑いですね。さっきたまたま着ぐるみを着るバイトをしたのですが、私とハイタッチをした少年が手を見てハンカチで手を拭いていました。


私の汗着ぐるみ貫通したんすかね。


ごめんネ。

 霧に怯える異世界人をルードスが馬鹿にしていた頃、各地で動きがあった。


―魔退士会チョロン支部―


 【緊急通達】発令から5分後所属している魔退士が、所狭しと一同に会していた。


 「発令の通り、この街は1時間も経たないうちにあの霧の中に沈む。」

 そう告げるのはチョロン支部長エージス。見上げるほどの大男。でかい。全部がでかい。

 バカにしてるんじゃないかと思うほどなぜかアフロもでかい。


 「はぁ~。ほんっとツイてないわぁ、私ってぇ」

 「おいヴォラト、シャキッとしーや。だが、今回ばかりは同意してやろう。」


 羽根の生えた女が浮きながらやれやれとポーズしている。ただ其の顔に危機感はない。楽観的な性格故かはたまた、絶対の自信故か。彼女はヴォラト。この支部で最もランクの高い退魔師だ。ボブくらいに伸ばした髪の毛がふわふわと揺れる。


 ヴォラトを注意しながらエージスは端的に言葉を発した。


「カリゴが帝国を襲ったとき帝国騎士団が持ち帰った情報によると、霧に少しでも触れると強い幻覚作用や、体内の攪魔力作用、身体の麻痺作用などが引き起こされるようだ。」


「研究機関の意見では触れた生物体内の魔力に作用していると予想されている。」


「そして、あの霧は上昇気流を発生させ、雨雲を呼ぶようだ。」


「雨にも同等の効果があると推測されている。」


「絶対に触れるな。」


「奴はすべての生物が持ちうる魔力に他の物質を介して干渉出来る前例のない特殊個体だ。」


カリゴの特性を聞き支部に緊張が走った。

【緊急通達】が出されるほどの事態であると頭で認識していても、どれほどのモノか分かっていなかった者も多い。前回チョロンで【緊急通達】が出されたのは50年ほど前なのだ。無理はない。


エージスはさらに続ける。行動指針を宣言した。


「これから空路、陸路を使い住民避難を始める。―カリゴ―はここチョロンより西南方向に向うと推測。住民を進行方向外の北西、東南方面野二手に分かれ避難させる。」


「北西方面最高責任者をヴォラト。東南方面最高責任者を私エージスが努める。」


「避難開始目標時刻はこれより10分後14時55分を予定している。」


「素早い住民の誘導を頼んだ。」


「気合い入れていくぞ!作戦開始!」


「おおおぉぉ!」


支部が揺れた。これから始まるのは避難という名の戦闘だ。目指すは住民の被害ゼロ。またこの地で生活するために、大切なものを守るために、戦いの火蓋が切って落とされた。





―カリゴー到着まで約70分



一方そのころルートは、何も知らずのんきに地に伏し間抜け顔を晒していた。

踊るのをやめて倒れてからわかったが、なんか騒がしい。みんな鞄をもって走っている。

もしかして、霧ごときでマジで避難してるの?

あっちの羽根生えた人さっきからなんか叫んでるし。本格避難訓練だ。

流石に違和感に気づいたようだ。



羽生えてるのスゲー。いいなぁ。飛びたい。

でも、霧ごときに怯えないといけないのは嫌だな。


ただし、違和感止まりのようだ。



くっそ、カッパ作って売る作戦は無理そうだな。時間がねぇ。 

カッパで濡れるの防げますって売ればぼろ儲けできると思ったんだけどな。


流石はジーニアス紳士。お決まりの知識無双の隙を伺うことを忘れない。


てか、この水とジュース美味すぎ。お恵みありがとねぇ。一仕事終えた身体によぉ〜く沁みますわ。かぁー!うまい。


さっき供えられた品々を片っ端から物色していく。

危機感はない。霧でやられる世界の住民が食べれる程度のものは自分も食べれると思っているのだ。


このハッカ油みたいなのも良いね。とっても涼しい。最高過ぎて全身にかけちゃったよ。ふぅ、整う。うーん、ちょっと寒すぎだけど。ちょっと待って。効きすぎかも。やっばい。服着たまま浸かっちゃった。やっばい。

慢心。自業自得。しかし、苦しみながらもその表情はどこかうれしそうでもあった。

名産品なんかな?めっちゃくれたし、眼の前の売店でも売ってるわ。


土地への洞察も欠かさない。故にジーニアス。紳士は物知りでなくてはいけないのだ。

たとえ間違った知識であっても、自信満々に話せば真実に変わることもある。


ちょっと助けて。誰か!あそこが特にやばい。このままじゃ縮こまりすぎて無くなっちまう。使う前に無くなるとか流石のルートも不本意だろ。やっばいわい。


流石物知り。おち○こメンソールも有識者の仲間入りだ。


「ぐおっ」「あひょー」


一方もろこし太郎はその時折ビクビク震える無様な姿を横目に貰い物のフルーツを食べていた。かなり美味しそうにご機嫌に食べている。


「うっぐ、」「へぁっ、」


やかましさに苛立ったもろこし太郎は供え物の水を器用につかんで雑にかけまくった。




うい~。助かったぜもろこし太郎。もう少しでルートちゃんになるところだったぜぇ。お前は最高の相棒だよ。



「ありがとな。モータ。もろこし太郎のモータ。」

「キュッキュッ!」

「おい!突くな!いたいってモータ。もろこし太郎よりモータの方が良いだろ。モータならまぁ悪くないだろ?」


相棒のご機嫌を伺いつつ、人影が見えなくなった町を見渡しこれからの作戦を考えた。


さてさて、モータとのイチャイチャで時間を無駄にしちまったぜ。

ふむ、人が少ない。これはチャンス、か?

別に悪いことをしようとしてるわけじゃー無いぜ。ほんとだぜ。

まだ12歳だから怒られるぐらいで済む。それにみんな逃げてるし。逃げなかったやつが財宝を掴んでも良いよなぁ!?

俺は逃げなかったんだから!


悪い顔をしながら、そして、だれかに言い訳をするかの如く、心の中で言葉を紡ぐ。


「よし、モータ。今からそこら辺にある屋台なりをつまみ食いするぞ。」

「なーに、スーパーの試食みたいなもんだ。」

「もしもの時は霧が食べたことにしよう。それで今度出世払いしよう。」

「ただ、まぁ、周囲に人はいないな?」

「よし!現代から舞い降りた美食屋ルート出撃!」



お腹ペコペコなんでな!成長期舐めるなよ!

この身体、今にも死にそうなぐらいがりがりなんでな。

ごめんな!異世界!俺が通るぜ!道を開けろ!いただきまーす!


目に付く食い物を片っ端から食べ始めた。




身体が弱すぎてほとんど走れず、気持ち駆け出してから数分、すでにお腹いっぱいであった。たくさん食べられる経験がこの身体にはなかったのだろう。



うーん。意外と美味いもの多いな。肉類はなんか強くて食べてないけど、野菜やフルーツはかなり美味い。

この一見オレンジにしか見えないフルーツは納豆の香りのしたマシュマロ味だし、むこうの葡萄はピリ辛ラムネ味。悪く無い。


うおっ!見つけたぞ!ハッカ油!見た目は真緑のりんごだ。これがスースーするやつか!てことは、あれ、このリンゴをすりつぶしたジュースだったの?嘘でしょ、異世界。

これ食ってあれ飲んでが日常なの?化け物だ。くぅ~呼吸しづらいぃぃぃ!奥にある甘さは良いんだけどなぁ。これをいつも食べててなぜ霧ごときで逃げる?

まぁお腹いっぱいになったしいいか!


ご馳走でした!



かなり長いこと飲み食いしてしまった。

周りには人っ子一人いない。

人が遠ざかると同時に、霧はかなり近づいている。

気分は某ゾンビ映画のなかだ。ゾクゾクする。


「どうしよっかなぁ。献花しないとどこか別の街にに行きたくないのよね。」


当初の考え通り、ルートの家に花を手向けようとバイキングしながらも花屋を探して歩いていたルードスは、余りに見つからなすぎることに痺れを切らし始めていた。


「もしかして花を愛でる文化無いのか?」

別に元居た世界でも花屋を、知らない街で見つけるのはそんな簡単ではないのに棚に上げて文句を言う。


「いや、そんなことは無いはず。結構前だけど厳ついアフロが花持って走ってたし」

「ああゆう人が意外とかわいいの好きなのよな」


まだ通ってない道を歩きながら地面に伏していた時に見ていた時の光景を思い出した。あの時走って揺れるアフロをゲラゲラ笑ってないで、聞けばよかったとこうかいする。

しかも、もろこし太郎はバイキング中にはぐれてしまった。あいつ食い意地張ってるからな。まぁ、放っておけば帰ってくるでしょう。


走るアフロを思い出し笑いそうになったとき、あることにひらめいた。


「あ、そうやん。あのアフロが出てきた建物行けば花あるくね?」


今日は冴えてるっ!早速向かうぜ。


満腹で有り余った力を、満腹でだるくなってきた力を、解放するように駆けた。


はたから見ると歩きと変わらないなんて、全力を尽くす彼には知らぬことだった




どうやったら魅力的な文章書けるか教えてください。


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