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1,hello world.ここはどこ私はだーれ

初投稿です。よろしくお願いします。


 生きとし生けるモノ全て能天気に生きていけるほど世界は優しくない。各々が適応し、競争し、そして淘汰され、今まで世界はまわってきた。

 人も例外ではない。他の生物に、自然現象に、病に。産声をあげてから、現在に至るまで、そして、未来においても、その道中は血に濡れている。

 しかし、当たり前だが、その立ちはだかる多くを克己し受け入れ前進してきたからこそ、まだ人は存続し、繁栄している。例え、全滅の危機に瀕するほどの災厄が訪れたとしても、だ。

 なぜか。そこには稀代の傑物がいたからに他ならない。時代が生んだのか、持って生まれたものなのか。それはわからない。しかし、確かに彼らの尽力により危機を免れてきた。

 困難に立ち向かい、人に導べを指し示す彼らを人々は万感の思いを込めて「英雄」と呼ぶ。  

        『救世の英雄』よりプロローグ一部抜粋  





 混濁とする微睡みの中で痛みや倦怠を感じながら鳥の声を聞いた。ひどく懐かしいその声に思わず

 「おはよう」

 初めて告げる起床の合図だった。

 それを聞いた傍らにいた太く大きな黄色いくちばしを持つ鳥は何処か嬉しそうにまた鳴いた。



 意識が徐々に明瞭となる。様々な記憶が、習慣が、脳を通過した。荒れ狂う濁流のようにそれらが混ざり合う。

微睡みで鈍感になった脳であっても、しばらくすると突如違和感をキャッチし、焦りを伴い飛び起きた。




「おい、ちょっと待て、俺いまおはようって言ったか?」


 


 何だそれ。なんの何だよ?ん、いや、おはようはおはようか。あれ、おれの名前はルートだよな?いや、清水だ。

あれ?あれれ?おっかしいな?

黒尽くめのオトコになんかされたか?こりゃ。



 当たり前に2つの人物の記憶があり、そのどちらもが違和感のない正しいもののように感じた。


 しかし、自意識は清水であり、ルートに関する記憶はまるで知識のように実感に伴うものではなかった。




 元はといえば俺は日本原産のの変態紳士。

ふぅ~。Be cool.混乱しないのは紳士の嗜み。

深呼吸をし、頬を叩いた。

 落ち着いて事実を確認する。手は小さい。服はボロい。

ふむ。この特徴は清水じゃない。ルートだ。

閃いた。アイアムジーニアス。自意識は清水で、体はルートだ。


これはあれか?ルートの中に俺が入ったのか?ゴメンなルート。紳士1名様ご案内。

俗に言う、転生ってやつ?でも生まれ変わってないんよなぁ。まぁ転生か。

ショタボディに入るなんて変態紳士あるまじきだが、望んで入ったわけあるまいて。

ごめんね。



 てことは、今日から俺はルートか。いや、ルートと清水合わせてルートズ?変やな。ルードスにするか。どうもルードスです。




 実感がなく、どうやったて茶化すしかできなかった。

ある種の逃避も有りながら、混ざり合う思考の中でどうにかルートの記憶を遡る。

そして清水としてルートの記憶を紐解き始めた。


 何やこの世界は!ガキンチョに厳しすぎやろがい。

それに、何やこの街名「チョロン」って。馬鹿にしてんのか。

ルートよ知識が断片的過ぎて、難しいぞ。


 うがぁ!。意味わからん!上司の理不尽くらい意味わからん!

魔獣って何だ!ゴ◯ラか?魔法があるらしいのいいね。わ、わぁ……。泣いちゃった。



 そしてたどり着いた。ルートの行方に。んん、ルート、お前、そうか。生きる気力を失っちまったか。辛かったな。苦しかったな。今はおやすみ。



 あまりにも苦しい記憶の断片を真に受けないように、どうにか受け流す。彼の身体なのだ。身体に引っ張られてしまう。今この混乱の中で俺には重すぎる。




 ただ、考えないようにしていた疑問がどうしても頭をよぎった。なぜ、心が壊れてしまった少年の体に私が入ったか。

どの様に入ったか。



うーん。わからん。まぁ、しゃーない。わからんことはわからん。



 俺は細かいことは気にしない男なのだ。



 これ以上記憶を探る事は気持ちが乗らず、周囲に目を向けた。


 今俺が居るところはルートの家だ。家とは言えない裏路地のボッロボロの犬小屋みたいなものだけど。後で花を手向けよう。彼の生きた。必死に生きた12年に。



よし、そのためにも今は俺の心配をだ。



少しずつ余裕が出来てきた。

そして気が付いた。 



てか!この頭上の鳥は何やねん!

って、お前斑鳩か?いかる。おいお前、ベランダによく来てた、もろこし太郎か?

餌欲しさにここまで来ちゃったのかよ。可愛すぎ。

この世界にもいるんやな。この鳥。少し安心した。

だが、餌はないぞ。

孤児で無職のプリチィ12歳ルートくんにはその日食べるものの余裕もないのだから!

ハッハッハー!

笑えねぇ、おい、腹減ったよ。



 ルートに代わって生きていかなくてはならない世界を共に歩めそうな懐かしいその鳥を見て愛郷と、勇気が湧いた。




ルートの記憶を頼りに懐をまさぐる。

おっ!あったぜ隠し財産!

なけなしの銅貨1枚。一番安いパンすら買えねぇやんけ!

よし、俺も死のう!無理や!

もろこし太郎、他人ごとちゃうぞ!

俺等はもう一蓮托生や!逃さへんで。もしもの時は、あんたが大黒柱よ!



 


 清水という男にくよくよしている時間はないのだ。不慣れな地での覚悟を決める。

稼ぐ手段なんて、生きてくすべなんて、なにもない。しかし、しかしだ。私には日本男児の魂が宿ってる。わかるのだよ。最善の一手が。




「よし、もろこし太郎!大道芸だ!」




「こ、こら!突くな!やめろ!」




「無駄な抵抗はやめろ!行くぞ!大通りに」




「ひっひっひ!歩くものが皆銭コロに見えるぜぇ」




「さぁ!お立会い!東の果てより舞い降りた!伝説の鳥使い!お立会いお立会い!」




いくらバカでも空元気。それでも確かに門出は門出。祝福されるべき第一歩目。

騒がしい二人の挑戦が活気あるこの街で始まった。



ただ、それと裏腹に、東の空が不吉な分厚い雲のようなものに覆われ始めていた。





―???―

エラー発生。


解決プロトコル確認。該当なし。


システムに則り対処を開始します。


エラー発生。

エラー発生……

エラー発……

エラ……

エ……

……。








 大通りに出てしばらく、計画は既に頓挫しそうであった。


 「なぁ、飛ぼうよ。立派な羽あるじゃん。あーあ、きれいな羽見たいなー」


 「いや、わかるよ?今日めっちゃ暑いよね?俺も冷感スプレーほしいもん。」




 


 大道芸に希望を見出してから数分もろこし太郎がへそを曲げた。



こやつぅ、器用に目を細めそっぽ向いてやがる。



お捻りは未だゼロ。



何としても飯代を稼がなくちゃならん。



仕方ない、まだ早すぎるかもしれんが、伝説の宴会芸・居酒屋千鳥足を披露するか……。




ピピッ


 突如、機械的な音とともにアナウンスが目の前に表示された。空中に浮かぶ謎のモニターはここが異世界だと強く認識させた。




 「うおぉ、何やこれ?ゲームみたいだな。なになに?【緊急通達】だぁ?」 





 「おい、もろこし太郎。やべーこと気づいちまった︙︙。この世界とんでもねぇぞ。」




 やっとかと胡乱な目をルートに向けた後、もろこし太郎は暗がりの空を、不可解な霧を、鋭い目つきで睨みつけていた。




【緊急通達】

アルブス王国歴1422年5月8日14時33分41秒

国指定災害級魔獣襲来を検知

出現場所:オリエンス地区防衛拠点第二主要都市チョロンの東の森約25km地点

最終形態個体分岐素体 不明

人体影響 不明

特徴 深い霧

王国歴1392年に隣接国アトルム帝国に出現した個体


通称―カリゴ―


と断定。


【最重要項目】

退魔結界を展開せず、避難をして下さい。


推定被害10万人〜150万人

最悪の場合王都まで到達するおそれがあります。

王都まで到達した場合アルブス王国陥落確率68.3%

出現場所から王都までの距離推定2300km

現在時速20kmで移動中 加速していくことが予想されています。

王都までのタイムリミットは32時間です。

隣国まで被害が出る可能性があります。


今すぐ避難してください。


巡回警備中の特級魔退士1名を含む王国軍派遣中。


派遣軍の―カリゴーとの接敵までおよそ3時間


避難経路提案と―カリゴー分析を始めます。








 とあることに気づいてから数分後俺はいま伝説の宴会芸をこの異国の地で披露している。シラフで完全な酔っぱらいのフリをする。あっちにフラフラこっちにフラフラ。不規則に元いた場所に戻る圧倒的なまでの千鳥足!これで修羅場をいくつくぐり抜けてきたか。



 ルートくんのボロ着がいい味出してるぜ!酔ってゴミと同化したときのYシャツ感がある。時間にして約10分程。実はこれはかなり疲れるのだ。本当のフラフラになりつつある。



 だがなぁっ!計画通りっ!みんな足を止めて静かに水や果物を置いていく!中にはハッカ油なんかもあった。涼めのすゝめ。


 通り過ぎる人たちからは「あいつはもう、笑」「もうやめて笑」とか異世界を爆笑、驚愕の渦に巻き込んでしまっている。



我ながら自分の才能が末恐ろしい……!

俯きながらの芸だから、前が見えないのが悔やまれる。見たか!ヤマトスピリッツ!異世界の住民ががアニメとか分かればモノマネも披露してやるのに。

もろこし太郎も少しは見直してくれたかな?



 この世界で生きていける確信めいたものが生まれてきた。手に職をつけた気分だ。



 そして、俺がこの俺が、ただ10分間何も考えずフラフラしてたと思うか?あのマルチタスクの鬼。マルチタスク界の至宝(自称)と言われた私が。


否!否!否!答えは否!


考えてました!今後のチャンコロ稼ぎ!えっらい!

現状ただの浮浪者である俺が就ける仕事って本当に限られている。唯一希望があるとしたら、【魔退士】というやつだろう。13歳からなれるようだが、背伸びすれば1歳くらいは誤魔化せる。もしもの時は情に訴えかけよう。



 【魔退士】は読んで字のごとく魔を退ける者らしい。ルートの記憶では詳しくはわからなかった。街郊外の獣とか、山火事とか、今回の濃霧とか。人々の生活の安寧を保つことが仕事なんだろう。多分だけど。



ねぇ、それって、素晴らしいことだと思わない?俺、なってみたかったんだ。ヒーロー。

かっけぇよなぁ!こーれ、決定です。

ん?なになに?ただの十二歳がそんな職に就いたらすぐ死んじゃうぞ?  危ないから止めたほうが良いぞ?戦えんのかお前?




チッチッチッ。問題ナッシング!もーまんたいのもー助ですわ!さっき見たでしょ??警告を!なんて書いてあったよ?読解力無いんちゃう???俺はさっきとんでもないことに気づいちゃったけどね??




実はこの世界の住民、身体が弱いらしい。

たかが霧で被害者出て避難しなくちゃいけないくらいに。



 ごめん、俺霧よゆーです!なんなら暑いしちょーどいいわ!



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