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君に会って話がしたい  作者: くろねこ
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不思議な通話



 スマホを眺めていたら、上画面に通話のマークが表示された。



 花村?



 ・・・花村さんから、また電話だ。



 僕は億劫に思った。


 なんで殆ど面識のない彼女から、また電話が来るのだろう。


 このまま無視しようと思ったが、思い留まった。



 だって、僕はもう死ぬんだ。



 そう決めたんだ。



 だから、最後くらいは誰かと話してみてもいいかと思った。



「もしもし・・・」

『あ・・・大塚くん?』

「はい。」

『大塚、颯太くんだよね?』

「そうですけど・・・」



 2度も名前を聞かれた。


 不審に思った。



 スマホには、「花村さん」と表示されたから、相手は花村さんだと思うのだが・・・。



「あなたは、花村さんですよね。」

『は、はい。花村優衣です。』



 下の名前、優衣っていうのか。


 初めて知った気がする。


 いや、そういえば、優衣って呼ばれていたっけ。



『あの・・・変な事を聞くけど・・・大塚くん、今、生きてる、よね?』

「!」



 絶句した。


 僕は、生きているが、生きていない。


 心臓は動いているが、家の外には殆ど出ていない。


 誰とも会っていない。


 何もしていない。


 何の役にも立っていない。


 こんなの、存在しないのと



 ・・・・生きていないのと同じだ。



『・・・・・・幽霊、じゃあ、ないよね?』

「生きてます。」



 それは無い。


 幽霊では無い。


 すぐに返事をした。



「花村さん、僕の事をからかってますか?」

『そ、そういう訳じゃないの。ただ、ちょっと聞きたかったというか、確認したかったというか・・・』



 不審に思った。



「ひょっとして、先生か誰かに電話しろって言われたんですか?僕が大学に行ってないから・・・」

『えぇ? だ、大学に行ってないって・・・』



 声の雰囲気でショックを受けているのが分かった。


 僕たちはほとんど面識がないのに、なぜ彼女がこんな反応をするのだろう。


 他人が学校に行こうが行くまいが、どうだっていいじゃないか。



『仕事をしてるんですよね?』

「・・・いえ、バイトが忙しいから大学に行かないとかじゃ無いんです。そもそもバイトしてないし・・・。」

『・・・・・・』



 花村さんが黙ってしまった。



「あの、用がないなら切っていいですか?」

『待って!話はあるんだけど、ちょっと混乱してて・・・でも、お願い、切らないで。』



 ・・・まだ話があるのか?



 大人しそうで地味な女の子だと思っていたけど、花村さんって話してみると、ちょっと変わった人のような気がする。



 でもそうか。



 僕の事を好きだったって言ってたから、変わり者なのかもしれない。



 そういえば・・・・・・



 この人は、僕の事が好きだったんだ。



 突然思い出し、もう少しだけ話を聞いてみようと思った。



『ねぇ、大塚くん、今何歳?』

「・・・19だけど。」

『・・・・・・』

「さっきから何を知りたいんですか? 分かりきった事ばかり聞いてきて、何なんですか?」



 暫く沈黙が続いた。


 カナカナカナ・・・


 蝉の声が部屋に響く。


 

 いい加減終わりにしようと、スマホから耳を離そうとした。



『大塚くん、私、あなたの事が好きなの。だから、居なくならないで。』


「・・・は?」



 好き?



 なんでそういう話になるんだろう?


 今までの会話の中で、なぜそうなったんだろう?


 思い返しても全く思い当たる事が無かった。


 いや、これは学校に来させる口実かもしれない。


 居なくならないでと言っていたが、おそらく先生あたりに学校に来るよう話をしろと言われ、仕方なく電話を掛けている・・・そんな所だろうか。


 先ほど大学に行っていないと告げると、驚いているように聞こえたが・・・


 でも、そうでなければ、僕に電話をする理由なんて無いじゃないか。



「居なくならないでって、退学するなってこと? 悪いけど、僕、もう行く気はないんだ。・・・先生にも、そう伝えておいて。」



『そうじゃないの!!!』



 なぜか花村さんが大声を出した。



 驚いてスマホを耳から離した。



 離した先で声が微かに聞こえた為、また耳に戻した。



『休んだっていいと思うよ。それに無理に学校に来なくてもいいと思う・・・ただ、居なくならないで。私、あなたと会って話がしてみたいの。』

「・・・・・・」



 居なく、ならないで?



 花村さんの声は、焦っているように思えた。



 なぜだろう。



 花村さんは、僕の心の内を知っているような気がする。


 僕が何をしようとしているのか、知っているのだろうか。


 誰にも話していないのに、なぜ知っているのだろうか?


 

 ・・・だけど、一番僕の心を揺さぶったのは、その事ではない。



 こんなに僕を気にかけてくれる人が、



 他に居るだろうか?




「・・・僕も、花村さんに会ってみたい。」




 思わず口にしてしまった。




『・・・それは、出来るのかな? いや、大学に居る私と会えばいいのかな。』

「ごめん、僕、大学で会うのはちょっと・・・外で会えないかな? どこか・・・カフェとか。」

『うーん・・・多分、喜ぶと思うけど。私、どういう反応をするのかな。っていうか、もう一度私に言ってもらわないといけなくなるし・・・でも、会いたいのは私だし。困ったな。』

「?」



 何故か他人事の様な言い方をしている。


 

 それに、もう一度言わなければいけない意味が分からない。



 僕と会いたいと言ったが、本当は会いたくないのか?



 分からない。



 訳が分からない。



 なんでこんな言い訳をするんだ?



「嫌なら、いいんだ。」

『そうじゃないの!ただ、時間が違うみたいだから・・・』

「時間・・・? さっきから何の話をしてるんですか?」



 花村さんがまた黙ってしまった。



 彼女には惹かれるが、様子がおかしい。


 

 会って大丈夫なのか不安になる。





 突然、花村さんが沈黙を破った。





『信じられないかもしれないけど、私、未来に居るの。』



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