表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に会って話がしたい  作者: くろねこ
4/7

あなたは、誰?


 その日の夕食は寿司だった。


 僕の大好物だ。


 嬉しい。



 食事をしながら大学生活の話をした。


 辛かった事を話すと、両親は黙って頷いた。



 そして、父親が口を開いた。



「大学は行った方がいい。



それがお前の為になる。」



 そう、言われた。



 そうだ。


 それが正しい道だ。



 両親の示す道は、僕の将来を考えての事だと、分かっている。


 そして、そのレールの上を歩く事が、僕にとっての最善の道だ。



 分かっている。


 分かっているのだ。



 だけど・・・



 だけど・・・




 結局、僕は



 「はい。」と



 返事をする。




 食卓を後にし、自分の部屋のベッドに横になった。




「もう大学には通いたくないから、



退学したい。」




 この一言が、言えなかった。




 そういう自分が嫌いだ。


 もう、優秀な僕はいない。


 言う通りにはしたくないし、出来ない。


 僕に期待しないで欲しい。




 なのに、それが言えない。




 誰にも聞こえないように泣いた。




 それからスマホで死に方を探した。




 ーーーーその深夜。




 僕は両親宛に手紙を書いた。




 そして、



 

 途中で怖くなり何度も何度も躊躇ったが、




 最後の勇気を振り絞った。









 休みの日に、久しぶりにひなたと会った。


 景色の良いカフェでランチをした。


 久々に会うひなたは、大人っぽくなっていた。



「なかなかうまく行かないんだよねー。話すのは得意だと思ってたんだけどさ。」



 ひなたはパスタを巻きながら笑って、最後にため息をついた。


 営業で外を歩き回っているそうだ。


 話すのが上手で、何でも器用にこなせるひなた。


 そんなひなたでも、うまく行かない事があるんだ。



「優衣は最近どう? 仕事はうまく行ってる?」



 私はオムライスをすくう手を止めた。



「うーん。まぁまぁかな。何とかやってる。それよりさ、この間、大学の時の知り合いに、たまたま電話を掛けちゃってね・・・前に好きだなぁと思ってた人なんだけど。」

「・・・」



 ひなたの手も止まった。



「優衣が好きって言ってたのって、例のあの人以外思い浮かばないけど。他に好きな人がいたの?なんで教えてくれなかったの!!」

「よく覚えてるね・・・たしかに1人しかいなかったよ。実はね、その人なんだ。連絡先の整理してたら、偶然電話を掛けちゃって・・・」

「・・・・・・」

「あれ?ひなた?」



 さっきまで笑顔で話していたひなたが、急に真顔になった。



「うーん・・・優衣、最近病んでるの?」

「え?」

「そういう冗談を言う様な子じゃ無かったんだけどな、優衣は。」

「ひなた? 急になに? 私、変な事言った?」



 ひなたは私から目を逸らした。



「だって、1人しか好きな人がいなかったって事は、例の人でしょ。その人、亡くなったんだよ。たしか2年の時に・・・自殺だったっけ?」

「私も最初はそう思ってたけど、別の人だったみたいなの。この間、電話で話をしたんだよ。」

「大塚。」

「・・・へ?」

「大塚颯太。たしかそんな名前だったよ。」



 四年前、胸にぽっかりと空いた穴は塞がったと思った。


 だが、ひなたの一言で、また大きな穴が空いた気がした。


 でも、思い直す。


 だって、電話で声を聞いたもの。


 なりすましとかじゃなくて、ちゃんと本人の声・・・だったと思う。



 別人のはずだ。



「友達に、大塚と同じ中学の子がいてさ。お葬式があったって教えてくれたから、間違いないと思うよ。」

「・・・」



 言葉が出ない。



 じゃあ、私が話した相手は、誰だったの?





 夜になり、テーブルの前に座った。


 携帯の履歴の文字を眺めながら、決めた。



 確かめるのが怖いけど、もう一度かけてみよう。



 通話ボタンを押そうとして、やめる。


 押そうとして、やめる。



 何度か繰り返して、深呼吸した。




 勇気を出せ・・・大丈夫。


 彼は生きてる。


 確認するだけなんだから、大丈夫。




 私は震える指で、ボタンを押した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ