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君に会って話がしたい  作者: くろねこ
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間違い電話


 中学生の頃からだろうか。


 ずっと誰かの用意したレールの上を歩いているような気がしていた。

 

 僕はなぜだか、いつも自信がなく、他の友達の良いところばかりが目に入って劣等感を感じた。



 高校でもそれは続いた。


 僕は弱い人間なのだと思った。


 だけど両親は僕を優秀だと言う。



 行きたい大学は無かった。


 だから親が望む大学に入れるように懸命に勉強し、入学する事ができた。



 僕は用意されたレールの上を歩く。


 これは僕の意思に関係なく歩くことになっている。


 それは正しい道だと思っていた。



 このまま社会人になり、それなりの会社でそれなりの給料を稼ぎ、そして死んでいくのだと思う。


 そういうレールの上を、僕は歩いているのだ。







優衣ゆい、次の授業は実験だよね。一緒に行こう!」

「うん。」



 友達のひなたと歩いていると、「最近元気ないね」と言われた。



「実はね、前に好きかもしれないって言った人、最近見ないんだよね。」

「あぁ、あの人ね。たしかに見ないかも。」



 ひなたも見かけていないんだ。


 もしかしたら大きな病気や怪我をして来ていないのだろうか。


 もしくは学校を辞めたのかもしれないと思った。



 暫くすると、自殺した生徒がいると噂が流れた。


 2年でいつも1人で授業を受けていた男の子が、実家で自殺をしたという話だった。



 私はそれが誰なのか、すぐに分かった。



 9月のまだ暑い青空の下。


 生温い風が吹き抜ける中、胸の中にぽっかりと穴が空いたのを感じた。




 それから数年経ち、社会人になった。


 事務仕事に就いた。


 失敗して怒られる事も、逆に先輩のやり方がおかしいと思う事もたくさんあった。


 でも我慢して、仕事をして、お金を稼ぐ。


 これが大人になるという事なのだと思った。


 嫌になる時もあるが、そうした大勢の人の1人1人の我慢で世の中が回っている。


 もし投げ出せば、暗闇に落ちて世の中から除け者にされてしまう。


 私だけ置いて行かれてしまう。


 だから、必死にしがみついて仕事をこなしている。


 そういう仕組みで私の生きる社会は成り立っている。


 そう思う。




 そして、ある日。


 仕事を終え、コンビニで夕飯を買い、家で食事をしている時だった。


 スマホの連絡先を整理していると、誰だか分からない名前があった。



大塚颯太おおつかそうた・・・? そんな人、居たっけ?」



 思い出そうとした時、窓に何かがぶつかる音がした。



「きゃっ!?」



 驚いて身構えた。



 一人暮らしだから、何か異変があるとすぐに怖いと感じてしまう。


 スマホをテーブルに置き、窓に近づいた。


 恐る恐る部屋の中からベランダの様子を伺ったが、異変は無いように思えた。


 今度は窓をゆっくり開け外を確認したが、何かが落ちていたりなど、特に変わった様子は無い。



 隣の部屋の音だったのだろうか。



 ホッとして部屋に戻り、スマホを手に取ると・・・通話画面に切り替わっていた!


「大塚颯太」と表示されている。


 どうやら通話ボタンに手が触れてしまったのか、先程の連絡先に電話が繋がってしまったようだ。



 う、嘘でしょ・・・!!?



『もしもし? もしもし・・・?』



 スマホから声が聞こえてくる。



 ど、どうしよう。誰か分からないけど知り合いなんだし、とにかく出ないと。



「あの、すみません、間違えて掛けてしまいました。すみません。」

『・・・そうですか。じゃあ切ります。』



 ツー・・ツー・・ツー。



 会社の人では無いと思うけど、もしそうだったら明日謝らないと。



 翌日出社したが、誰からも声を掛けられる事はなかった。


 「大塚」という名字の人は3人ほど居たが、会った事も話した覚えも無いような人で、下の名前も違った。



 大塚颯太・・・



 聞いた覚えはあるんだけど、誰だっけ?



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