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異郷の春はいつぞ来る  作者: ルマ
第一章 冬
2/3

第一話 妖の世界

始めまして皆様、作者のルマです。


いつもはムーンライト小説を書いている私ですが、今回は心を浄化し新たに通常版(?)の所に新しいお話を投稿し始めました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

文章の方を1万2千文字程度にまとめました。

前回1話~3話までをこの一話に。

前回4~6話までを第二話に。

前回7~11話までを第三話にまとめました。


内容は変更していません。

「机を拭いたら、お店の開店時間までゆっくりしてていいからね。」

「ありがとうございます、お梅さん。」


 木製の机を拭いていると、台所からこの店主の奥様「梅猫(メイマオ)」さんが声をかけてくれた。

 一度、メイマオさん。とお呼びさせていただいたのですが、発音がどうしても違うらしく、『お梅さん』とよばせてもらっています。

私が現世で勉強した言葉で梅は「(うめ)」と発音するんですが、梅猫さんの所では、「(メイ)」と発音するんだそう...。とても面白いですよね。

 まだ上手く発音が出来ないので、今はまだ私が知っているところでの読み方で呼ばせていただいています。

いつかはちゃんと呼んでみたいです。


「食事まだだろう?(まかな)い出してやるから、食べちゃいな。」


 店主の「猫吉(ねこきち)」さんが台所から顔を出して、賄いを見せてくれる。

 彼の耳は頭の上にある。フワフワもこもこしているようにみえるその耳は、本物の猫の耳だ。

細い尻尾がするりと揺れる...とても触りたくなりますが、我慢です。


「わぁ!美味しそう...!ありがとうございます、いただきます!」


 その賄いが乗っているお盆を受け取ると、さっき拭いた机に置いて、席につきます。

 手を合わせて目を閉じ、食事にありつけたことと食事に使われた食材に感謝しながら「いただきます。」と声に出して食事に手を付けます。

暖かいご飯に、出汁で煮出したお茶を注ぐ。「お茶漬け」です。


 ありがたい食事を食べさせて頂きながら、私は窓の外を見た。ここにきて二年の歳月が経っていた。


窓の外には赤い提灯が街中に飾られ、木造の建物がひしめき合っている街が見えます。

その木造の建物に提灯の朱色のはんなりとした色が映って妖しく街を照らしている...

 

その街の道には被っている傘に目が付いている男性(どうやらその傘が顔のようです)が歩いていたり、二つの尾を持つ猫があくびをしていたり...首が長く伸びる女性が歩いていたりします。


ここは異郷...。妖が住まう場所。名前はありません。和とも中華とも取れぬその魅惑的な場所は、一度迷い込むと二度と戻れないのだと誰かが教えてくれました。

古くは隠世・幽世とも呼ばれていたのだとか。

ずっと暗い夜のまま、永遠の時を生き続けるこの場所を、今の人(人と呼んでいいのでしょうか?)は「眠らぬ世界」と呼んでいるんだそうです。

名前がないから、「眠らぬ世界」。

どこかお洒落で、怖い呼び方だな......。とここに来たときは思っていました。


ふと窓の中の上をゆっくりと見上げると、城が浮いています。

『天高く浮かぶ赤き城は、その姿から『暁城』と名付けられ、多くの者を目線を惹きつけ離さない。』と親切な狸の妖のお爺さんがここに来たばかりの私に教えてくれました。

 

あのお城がこの世界の象徴(シンボル)です。


あそこのお城に住むのは九つの尾を持つ大妖怪、九尾の狐様が住んでおいでです。

彼こそがこの異郷の主にして、異郷の支配者。

神の末席に名を連ねるほどのお方で、お名前は『暁』様、というのだそう。


私の名は「桜華(おうか)」。たぶん、桜の妖です。

私は晴れて(?)妖となりました。

私に意識ができたのは妖になってからです。

私の見た目は桜色の髪色に黄蘗色(きはだいろ)の瞳。白い肌、人間と同じ立ち姿。


今はお店で働くために髪を木の簪でまとめ、頭巾を被っています。

服装は日本の着物と言う服によく似た(似ているが少し違う)上から、割烹着(エプロン) を着ています。


私のこの人間のような姿でこの異郷に向かい入れられるのは大変珍しいのだそうです...。


妖になる者は共通して理由があります。

その理由は「未練」。


その未練が美しいものであればそれに相応しい美しい姿に、復讐などの理由であれば恐ろしい姿に...それを叶えられる姿になり産まれるのが妖なんだそうです。


妖になるのは大体、動物と現世の人々の強い感情の具現化です。

動物は多く、猫や犬...狸や狐などが妖になります。

感情の具現化は、難しいように感じますが、実は一番多い妖です。

本当に河童と言う妖がいるだろう......と現世で強く思われれば、河童も本当に異郷で産まれてくるんです。

強く人間が思う気持ちって大切なんですね。

でもいい妖だらけではありません。

強い思いの大半は、悲しみや苦しみなどです。

その思いで出来た妖は、怖い人が多いですね。


私は現世で言う巫女服を着てこの異郷に訪れました。

なぜこの服を着ているのか、意識を持った時に涙が溢れて止まらなかったのも、私は何一つ思い出すことはできませんでした。

 

人間から妖になる場合は本当に少ないそうです。

人間から妖になると、人間の形はあまり崩れることなく妖になるそうです。


私も初めは人間からかと思ったのですが、人間から妖になった事例が異郷が開いて一度しか無いのだとか。

そんな珍しい事例ではないでしょう。


でも、植物が妖になることは人間より多いとはいえ、こちらも数が少ない事例です。

確かに桜が妖になったとは私以外聞いたことがありません。...私は何の未練があるのでしょうか?人の姿でなければ叶えられない未練なのでしょうか?


妖は産まれて来ると、現世での記憶や、産まれた意味を覚えていません。

いいえ、語弊がありますね。

覚えていないのではなく、忘れている...でしょうか。


つまり、記憶を取り戻す事が出来るのです。

ここで産まれた妖達は誰もが記憶を取り戻す事を目標にしています。

どれだけ否定しようとも、心のどこかでは絶対に記憶を思い出したいのだとか。

本能と言えます。


妖は妖気(ようき)なるものを溜め続け、徐々に記憶を取り戻していきます。

すぐに妖気をためる方法があるそうですが、私にはとてもではありませんが向いていないと思いました。

え?どんな方法か?それは、その......。褥事情に詳しい方にお願いしますっ......!

もちろんこの異郷の食べ物や、空間にい続けることによって、微弱ではありますがゆっくりと妖気を溜めることができるのだそうです。


私もどうして妖になりたかったか、妖気が溜まり続けたらいつか思い出せるでしょうか?


私の未練は酷くはないと思うのです。

その理由は説明しづらいんですけどね。

泣いていた理由が、「愛おしい気持ちと、とてつも悲しい気持ち」だった気がするんです。愛や悲しい気持ちならきっと、恨みや憎しみではないから、大丈夫だと思っています。


思い込みって大切ですよね。


 妖の中には断片的に記憶をもって妖になる者もいるそう。

初めて聞いた時に羨ましいと思いましたが、その多くは、憎悪や耐え難い悲しみ、屈辱、後悔...言葉には表せないような気持ちを持って妖になった者が多いそうです。

辛い記憶の方が強くの残るのでしょうか…羨ましいと一度でも思った私がすごく恥ずかしく、浅ましいと思いました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


私は今、猫人(びょうじん)と呼ばれる人型で、猫の耳が付いている妖『猫吉(ねこきち)』さん夫婦で営むお店で働かせていただいています。

猫吉さんの奥様、『梅猫(メイマオ)』さんも猫人です。


この異郷でも現世と同じように働かなくては住んではいけません。

住む家も、食べる食べ物も自分で稼いでいかなくてはいけないのです。

ここで流通している硬貨や金貨は現世(人間たちが住んでいる世界)との扱いや理解に大差はありません。

 

私が住んでいるこの街は異郷の中でも特に端に存在し、とても田舎です。

 高価なものや、綺麗なものは少ないけれど、街の人たちはとても暖かい人達が多く、優しさで溢れているところです。


 私がここで雇ってもらえなかったら、今頃遊郭(ゆうかく)妓楼(ぎろう)にでも売り飛ばされてしまっていた頃でしょう。

 この眠らぬ世界にも遊郭なるものが存在し、見た目がいい者は捕まって入れられてしまうのだそうです。

 特に人間に近い形をしている妖はお役人などから人気が出るそうで、高値でやり取りされてしまうのだとか。


 遊郭には、「花街」「色町」「遊里(ゆうり)」などと呼ばれる通りが存在します。

 花街とは妓楼が立ち並び、遊女が働いている場所です。お客様に一夜の夢を提供するのが彼女たちの主なお仕事です。

 この花街は公に営業が認められており、営業主は役人と深いつながりがあります。なので、お偉いさまも堂々と通う妓楼が立ち並んでいます。

 

逆に、色町・遊里は私娼(ししょう)と呼ばれる場所で、公に許可を頂いておらず、個人で営業している妓楼が立ち並ぶ場所のことを言います。なので役人さんなどのお偉いさまなどのお客様はなかなかお越しにならず、多くは市民が通うそうです。


 そして、その花街を含めた色町、遊里等様々な妓楼を構える通りのある場所を総称して『遊郭(ゆうかく)』と呼びます。

遊女として働くと着物や簪、お化粧や食事・・・そのすべてを与えられます。

すぐに遊女として働ける訳ではなく、まずは禿(かむろ)とよばれる者から始め、新造(しんぞう)になると、お姉様の遊女に付いてお仕事のいろはを学び、水揚げ(みずあげ)と言われる行為の後、遊女にるのが一般的だそうです。


もしかしたら見方を変えれば、衣食住が保証され、見込みがあると思われれば芸も教えて貰える......。

仕事内容を考えればすごく良いとは言えませんが、悪くない場所だと思う方がいるかもしれません。


ですが遊女として与えられた全てはその妓楼への借金になるんだそうです。

その借金を返すために働き、働くと借金が増える...。まさに働く側からしたら地獄のような場所なのだと聞きました。


 そのすべては優美で美しい、蠱惑的な場所にお客から見えるように計算されています。

 妖の男性たちはみな一度は遊郭を貸切るのが夢なのだとか。

 私には到底向いていない場所なのは確かです。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「さぁ、そろそろお店を開店しようかね。」

「はい!」


空になった食器を洗うと、お店の暖簾を上げに行く。

このお店は、 和食という食事を作る地元に愛される小さな料亭のお店です。


奥様のお梅さんは旦那様の猫吉さんと違った、中華料理と言う食事を作ります。

たまに賄いで食べさせていただきますが、とても美味しくてがっついて食べてしまったくらいです。


中華料理は料亭の献立(メニュー)にはありませんが、お客様の中にはお梅さんにお願いして食べる人もいます。


夫婦揃って私にどちらが美味しいか聞いてくるのですが、どちらも美味しくて決められません。

勝負をしているのだとか...。

でも裏では二人揃ってお互いの料理をべた褒めで、いつまでも新婚さんのようで微笑ましいです。


あぁ、猫吉さん夫婦は新婚さんではありません。

結婚して百五十年だとか。凄く熟年夫婦さんです。


和食や中華料理で気がついたかもしれませんが、妖として産まれる要因の育った現世の国や地域は、その妖が話す言語や食事でわかるのだそう。

言語や文字が違う?それじゃあ妖同士が話し合えないじゃないか!と思うかもしれませんが、そんな心配はいりません。

 次第に言語が入交り、妖語(ようご)と呼ばれる言語になっていくんらしいです。

 私も初めは皆さんが何を話しているのか、何の文字を書いているのかが分からなくてすごく困りました。


 でも、数分経つと言語が途端に合い始めて驚いたのを覚えています。


文字に関しては、妖になる前にどんな言語でもいいから文字が読めないと、妖文字(あやかしもじ)は読めないんだそうです。

妖としてこの異郷で後から学ぶことももちろんできますが、教科書を自分で購入してからの独学になります。

本はこの世界では高級品です。紙も贅沢品ですしね......。

本を買ってその内容を読み込むのも大変です。

本気で勉強する人は文字を読める人に教えて貰う事が普通です。

言わば、家庭教師ですよね、本を買うよりずっとお金がかかります。

勉学が大変なのはどこの世界でも変わりません。


妖語に統一されますが、発音や口調までは統一されるわけではないらしくって、訛っている人、方言が出る人、話し方に癖がある人など、様々です。


 だから「梅猫(メイマオ)」さんも、「メイマオ」さんって私に呼ばれると、少し違和感を感じるんですね。言っている言葉も意味も分かるらしいのですが、特別な意味を持つ名前だったらしくて、呼ばれ方に気を使っているんですって。


妖になる前...元になった猫が飼い猫だったそうで、

「大好きなご主人様に付けていただいた名前だから気を付けているの」と仰っていました。

その大好きなご主人様にもう一度会ってお礼を言いたくて妖になったのだとか。

記憶を取り戻すのに二百年かかったと言っていました。

...人間のご主人は死んでいるだろうから、この未練は叶わないのだと深く悲しんでいたと当時を振り返って教えてくれました。


そう、妖として産まれた目的の記憶を取り戻しても妖は生きているんです。

妖が記憶を取り戻した後、辿る未来は大きく分けて四つ。


 一つ、成仏する。または消えてしまう。


この多くの場合は未練を果たせた場合や、果たせなくても満足した場合に起こることだそうです。

成仏や消えてしまう人はまた現世に生まれ変わるんだそうです。なんの生物で生まれるかは分からないそうですよ。


二つ、悪霊、物の怪に堕ちる。


この多くの場合は未練を果たせないことに失望したり、絶望したりした場合、又は未練の内容がより狂気的なものだった場合に限り、性格が変貌してしまい、堕ちてしまうのだそうです。

堕ちた場合はこの眠らない世界...異郷から追放されてしまいます。地獄に行くもの、それを逃れて現世に降り、悪さをするものに分かれます。どちらにせよ、悲しいことには変わりません。


三つ、神格を授かる。


この場合は極稀なケースです。これは未練を果たした場合に起こり得ることで、神々がその理由やその経緯、結果を見て、施しを与えられる場合です。この場合の条件は様々なので一概には言えません。


四つ、ここに残る。


多くの妖たちが辿るのがこの「ここに残る」ことです。ここに残り、第二の生を謳歌しようとするんだそうです。

 ここでは妖気を溜め続けると、強くなります。

 強くなるっというといろんな解釈がありますが、今は「偉くなる」と曖昧に捉えていただければ大丈夫です


 妖気を溜め続けると一定の基準で大妖(だいよう)になります。(大妖怪(だいようかい)とも呼ばれます。)


大妖になると、自分の力で神格化して、神になるものもいます。なかには現世の歴史に名を連ねるものも...。神に名を連ねると、神気(しんき)と呼ばれる妖気とは違うものを纏います。


それがあると、現世に直接手を加えることができるのだとか。

すごい力ですよね。


 お梅さんはこの四つ目の場合を選んだお方です。


 生まれ変わってまたご主人様の生まれ変わりに会うことも考えたそうなのですが、生まれ変わりはご主人様ではなくなっているし、自分も自分を忘れてしまうだろうから、この大切な名前とともに生きていきたいと最後は思ったんだそうです。


 人間が妖になることもあるのですが、先程言ったように極々稀です。

大抵は成仏して天国に行く人や地獄へ行く人、現世に残って悪霊になる場合があります。

中には愛おしい人や、護りたいものがある場合、守護霊になるものもいるのだとか。


幽霊さんたちは地獄か現世か天国に行くそうなので、ここの妖の世界にはいらっしゃいません。


人間は生まれ変わるとき、魂を川で洗われ、記憶をなくしてしまうんだそうです。

川は燃えて見えたり、黒く見えたり、澄んだ水に見えたりと人によるんだそう。

 洗われた魂はそのままの形を保ったまま生まれ変わる人もいれば、川の中で小さくなって別の魂と合体して形を変えてしまうこともあるのだとか。


「生まれ変わり」といっても、別人だから...というお梅さんの気持ちはこの話からきているのだと思います。


そんな様々な妖たちの中で私は「日本」と呼ばれる国の妖だろうと猫吉さんが教えてくれました。

日本の妖は多いそうで、珍しくはないんだそう。

仲間が多くてうれしいです。


暖簾を上げて、献立表を各、机の上に置いていると、お梅さんが思い出したかのように言った。


「そうだ、今日は馴染みの豆狸(まめだぬき)狸助(たぬすけ)爺さんが来るよ。」

「え?!本当ですか!嬉しい!」


 『豆狸(まめだぬき)狸助(たぬすけ)爺さん』というのは私がこの世界に来た時に親切にしてくれたお爺さんのことです。(狸の妖です)


 遊郭に連れていかれそうになっていた私を助けてくれて、そのままいろいろお話を教えてくれた後、この猫吉さんのお店を紹介してくれた大恩人です。


ここで二年働いていますが、一度もお会いできていませんでした。

狸助さんはこのお店の常連さんです。

(妖はとても長生きなので、十年の内に三回でも通えば常連さんになります。)


「お礼を全然言えてなかったんです!今日の狸助さんの御食事代、私のお給料から払わせてください!」

「まぁ、あんたいい子過ぎるよ。あの狸助の爺さんは気まぐれ屋だよ?そんな気まぐれ一回の為に今月の給料から食事代を払うって...あんた化かされてるんじゃないだろうね。狸助の爺さんは飯はそこそこだが、酒を浴びるように飲むんだよ。今月分はなくなっちまう気でいないと。」


あの後すぐに狸助さんはお礼をいう間もなく言ってしまいました。

お礼もできないなんて、人(?)として恥ずかしいこと、ここはちゃんとすべきです。


「構いません。恩人ですもの。お礼ができなかったので、これでお礼になれば。」


 クスクスと笑いながら「あいよ。引いとくけど、今月どうするんだい?」と聞いてくれる。


 「今月は貯金があるので、その貯金で乗り切ります。」


 ふんすっ

 鼻息を荒く意気込めば笑い声が聞こえた。


 「あーはっはっ!いいよいいよ、お仕着せ(ボーナス)出してやるから、ちょっとは受け取りな。」


 猫吉さんが笑いながら台所から言ってくれる。


「ええ!?でも、申し訳ないです!私の勝手でお給料を...!」

「いいんだよ。桜華が働き始めてからお客が増えたからね。お仕着せくらい出せる分はあるさ。」

「猫吉さん...!お二人ともありがとうございます!」


 優しくてあったかいお二人と働けて、私は幸せ者です!


 カラカラカラっ

 その時お店の戸が開いた。


「いらっしゃいませ!」

「よぉ~!繁盛してるかぁ?」


 陽気な声がお店に響く。


 ちょこんと頭左右上に可愛い丸い耳、長いまあるい姿形(フォルム)の尻尾。頭の上には緑の葉が乗っている。

 お腹がぽこんとまあるく出ていて、背中には首から笠をぶら下げているお爺さんがやってきた。

 鼻先は少し茶色くて、頬が少し赤らんでいる。


 お酒臭く、既に酔っているが、歩く足取りはしっかりしている...この相貌はまさしく......


「まぁ!狸助(たぬすけ)さん!いらっしゃいませ!お会いしたかったです!」

「おぉ~!嬉しいねぇ。若い別嬪の嬢ちゃんにそんなこと言われたら嬉しくて腹ぁ出ちまうぜぇ!」


 ポンッとお腹を機嫌よく叩く。


「なぁに言ってるんだい!腹ならとっくに出とるだろ?手ぇ出したら出禁だよ。」

「相変わらず怖いねぇ梅猫ォ~。お前も若いころは別嬪だったのにぃ。」

「あ゛ぁ?なんだって?」

「いいや、なぁんでもないさぁ!今も別嬪だったねぇ!」

 ケラケラと笑うこのお方は間違い無く狸助さんだ。


妖はよく勘違いをされますが見た目に年を取ります。中には分かり辛い人もいらっしゃいますけど...。

容姿は人ぞれぞれですが、妖になった時の容姿から年を取り始めます。なので、幼い子供のような容姿から年を重ねる人もいれば、始めからお年寄りから年を重ねる人もいます。


性格もその見た目に沿ったものが多いのだとか。

幼さな子のような姿で妖になった人は、幼い性格をしていて、お年寄りのような姿で妖になった人は老人のような性格をしているのが通常です。


そして、一番勘違いされてしまうのが「寿命」です。

なんと妖にも寿命というのがあるのです。驚きましたか?


例えば、豆狸に昔化かされたからやり返そうと思って会いに行くと、もう亡くなられていたり、年を取って姿が変わっていたり、代が変わっていたり...。同じ種族(同じ名前・種類の妖は多数います)だけど、別人だったりします。


この寿命を全うすると、現世に人間さんと同じ様な流れ(サイクル)で生まれ変わります。


大抵の妖の寿命は千年。

ですが妖気を溜め、強くなると、寿命がだんだんと延びていくのだそうです。つまりは千年以上生きることも出来るのです。

見た目の衰えもそれに合わせてゆっくりになっていくのだそう。

結局は見た目で相手の歳を推し量ることはできないのが面白いところです。


お婆さんに見えて実は三百歳だったり、お姉さんに見えて実は五百歳を超えていたり...。すごいですよね!


でもどんなに遅くなったとしても見た目に年を取ってしまう事、寿命があるのは変わらないのだそうで、そのままの美しさを保つことや、永遠の命を妖のまま持つのは不可能なのだそうです。


これは「この世に不変なことはない。終わりなき事は存在しない。」という神々の意思が反映されているのだと言われています。


ですが城の城主の「暁様」は別です。


暁様は神の末席(神様の眷属)にいらっしゃるので、容姿の年齢は自由自在なのだとか。

永遠の命をお持ちです。


神は周りに「不変である」「終わりがないこと」を嫌いますが、己は「不変ではない」「終わりがあること」を嫌います。


 不思議な感覚の人物たちなのだなぁと思います。


「今日は、松茸仕入れたって聞いたぞ~?その定食と、朧月っていう酒を二瓶くれ~。」


 ドカッと席に着く。献立も開かずにさらりと今日の食事を決められる。

 私はその食事の注文を取ると、ついに決めていたことを狸助さんに話した。


「狸助さん。前は私を助けてくださってありがとうござます。覚えているでしょうか...私お礼を言いそびれてしまって...。良ければ今日のお食事代、私に払わせていただけませんか?」


自分で決めていた事だけど、重荷に思われるかもしれない...と今更ながらちょっと不安になりながら聞いてみた。


「おぉ~、こりゃぁたまげた!二千年以上は生きてるが、こんな健気な子は初めてだねぇ。いいさいいさ、礼なんて気になさんな。まぁ、お嬢ちゃんがそれで満足するなら儂ぁそれでいいけどなぁ~。」

「正直に言いなよ。今日も金がないからタダ飯を食べに来たってね。」


呆れた顔でお梅さんが肩を竦めて嫌味ったらしく驚きの言葉を発した。


「え?お金がないんですか?」


 二千年も驚きました(大妖の年齢です)が、お金がないなんてどういうことでしょうか?


「こいつは大妖であり、暁城の大役人なのに財布を持ち歩かないのさ。金はあるんだよ?なのにそれを使わないのさ。最低だろう?」


 お梅さんが呆れたように話す内容はとてもじゃないが信じられなかった。


「ええ!?大妖さんなんですか!えっ、その前にお役人様なんですか!とんだご無礼を...!」


慌てて頭を下げようとすると、狸助お爺さんは笑って止めてくれた。


「いいんだ、いいんだ気にすんな。そんなの形だけさぁ!いつも通り『狸助さん』って呼んでくれぇ。金はあるにはあるんだが、持って歩くとめんどくせぇからなぁ...いつも手ぶらよ!あ、腹は持って歩いてるけどな!ガハハハッ。」


ケラケラと面白そうにまた笑う。


「ったく...。このお役人はどうも調子が狂うよね。」


 肩をすくめて見せるお梅さんはそうは言いながらも尻尾をゆらりと揺らして...とても上機嫌です。


お城のお役人は皆さん大妖であることが条件です。

そして、文字が読み書きすることができて、政治について考えることができる者が選ばれます。

お役人になるための試験もありますが、そのまま紹介でお役人になる人もいます。

試験の場合は千年は受かるのにかかる。とまで言われているほどの難関です。


紹介の場合はコネや賄賂といったものが常になってきている為、現在問題視されているんだそうです。

 そのなかでもこの二千年以上の大妖となればお役人の中でも上の地位なのが分かります。


「はい。是非今日のお食事代、払わせていただきたいです。本当になんとお礼を言えばいいか...。こんなお優しいお二人の下で働けるようになったのも、ここでこうやって妖として過ごせるのも、全部狸助さんのおかげです。本当にありがとうございました。」


深々お辞儀をする。

感謝する時、自然と頭が下がるものです。


「おぉ~。こんな健気なお嬢さんが妖になるなんざ、きっと悲しいことがあったに違いねぇなぁ。ま、ここでまた会えたのも縁だ。よろしくなぁ。改めて、儂の名は狸助(たぬすけ)、種族は豆狸(まめだぬき)だ。年齢は二千超えたあたりから忘れたぁ。一応こう見えて、お役人やってんのさぁ。そういえばお嬢ちゃん、名前は決まったのかい?」


ぽん!とお腹を叩いてご挨拶。狸の妖さんの特徴です。


「はい。良い名をお客様から頂きました。桜に華で、桜華(おうか)と申します。たぶん、桜の木の妖です。新参者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。」


 この名前はすごく気に入っています。

 動物や人間から妖になると、名前だけを憶えている人がいます。 お梅さんがそれです。


名前だけは魂に由来するから覚えていられる人がいるって聞きましたが、なんだか難しい話で私にはあまり理解ができませんでした...。


 その場合は名前に関する思いが強い人が多いそうです。


私のような名前が初めから無いもの、名前が思い出せないものは、後に新しい名前を自分で名乗るのが普通なんです。


私の場合は、大切な常連客様に名付けていただきました。


「へぇ!いい名前だなぁ。大事にするんだぞ~。お、食事が来た!うまそうだぁ!」


 食事の松茸定食がくると狸助お爺さんが嬉しそうにポコポコお腹をさする。


「朧月の酒も来たな!桜華、注いでくれぇ!」

「えぇ、勿論です。どうぞ」


私も嬉しくなって、お酒をお猪口に注いでしまった。


「もう!狸助爺さんが調子に乗るだろう?!ここは遊郭じゃぁないんだよ!酒くらい自分で注ぎな!このエロジジィ!」

「あちゃ~!こりゃいけねぇわ!歳で物忘れがひどくてねぇ。女の子にはお酒を注いでもらえるお店かと思ったよ!ガハハハッ。」

 

 ケラケラと笑う声が外まで聞こえたのか、続々と客様が入ってくる。


「やぁ、外まで笑い声が聞こえると思ったら、豆狸の狸助さんじゃぁないかい!久しぶりだなぁ!」

「おぉ~!こりゃあたまげた!一つ目じゃぁないか!三十年ぶりか!」

「いらっしゃいませ!一つ目さん、狸助さんとお知り合いで?」


 一つ目さんは人間のような立ち姿に坊主頭、大きな黒い一つ目を顔に持つ大柄の男性だ。名前までも一つ目と言うのだそう。理由は覚えやすいから。だとか。


私の名づけ主でもある。


こんな大柄の男性だが、二又猫が大好きで、いつも野良猫を見つけるとしゃがんで声をかけているんだそう。

野良の二又猫にフラれてしまうらしいんですけどね。 そんな素っ気ないところも好きなんだとか。


「あぁ!狸助さんは俺の友人でね。俺がここに来た頃に世話になったのさ!その後は飲み友達にな。......それより桜華、年を重ねるごとに美人になるなぁ!こりゃぁ二年前に比べると見違えるようだよ!」

「そんなこと言ってもお安くはなりませんよ、ふふふ。ありがとうございます、これも全部猫吉さんと、お梅さんのおかげです。料理が決まりましたら、お呼びくださいね。」


 次々とお客さんが入ってこられるので、一人一人の話の時間が限られる。

 順序よく接客しなくちゃいけないと、お梅さんが教えてくれました。

 河童の(かわ)ナカさんや、女郎蜘蛛の綾女(あやめ)さんなど様々なお客様がご来店くださいます。


「いらっしゃいませ~!」

「やぁ、桜華。お店は今日も大繁盛だね。」

「あ、櫛奈(クシナ)さん!」


 一見普通の人間と変わらない容姿をしている男性の首無しさん。首無し族の櫛奈(クシナ)さんです。

 この首無し一族さんは皆様首が胴体と離れておりますが、普通に食事もできるのだそう...驚きです!


「今日も美しいね...これは将来がもっと楽しみだよ、ベイ・ビィー☆」


 バチンっと片目を瞑られました(ウインク)

金髪、碧眼。顔もすごく整っていらっしゃる御方だけあって様になります。

櫛奈さんの妖の要素となった感情を強く持った人物の産まれは確か、現世では西の国...だったでしょうか?

英国と言う国だったと思います。あれ?違ったかな...。


「あ、あははは...。ありがとうございます。」


 すごく褒めてくださる人なんですが、褒め方に癖がある方で、褒められると背筋がゾワゾワします。

私だけでしょうか...?

人気があるそうなんですけどね...。このお店の常連客様です。


「今日もいつもの魚の煮つけ献立(メニュー)でよろしいですか?松茸定食も始まりましたよ。」


櫛奈さんはいつも同じ献立を頼みますので、今日も同じでしょうか?


「いいや、君も美人だから話は聞いてるんじゃないかと思ってね、今日は話をしに来たのさ。」


注文を取ろうとしたら、どうやら違うらしい。


「話...?いいえ、私は特に何も目立った話を聞いていませんが...何の話でしょうか?」

「え?いや、冗談はよしてくれよベイビー!あの『暁様の女性探し』さ!聞いてるだろう?」

「暁様の女性探し...?」


本当に何の話か分かりません...。

なにか重要なお話なのでしょうか...?


私の反応から本当に知らないのだと伝わったのか、櫛奈さんは信じられない...!といった顔をしている。


「えぇ〜知らないのぉ〜?桜華ちゃん!」


べたぁっと後ろからくっついてきたのは女郎蜘蛛族の綾女さんです。

ゾワゾワゾワっと背筋が泡立つような感覚がしました。どうやら背中を背骨に沿って指でゆっくりとなぞられているようです。


「綾女さん!お触りは禁止ですよ!」

「ん~!残念だわぁ~。」


くすくす笑いながら離れてくれる。綾女さんはからかい上手。

からかいはするけれど、引き際もわかっているとても大人な女性です。

黒髪、紫の瞳、焚きしめられた白檀のような香り...。

腕が四本。腰から後ろに括れて蜘蛛のお尻が付いている。

綾女さんの元になった人間さんの記憶の出身は中華国と言う国に住んでいた女性だそうです。


「やぁ、女郎蜘蛛の綾女じゃぁないか!今日も素敵だね☆」

「あら、ありがとう~首無しの櫛奈。私が素敵なのは当たり前♡...っと?さっきのその話、私も知ってるわよぉ~。」


常に自信が溢れている綾女さんは本当に素敵です。

ところで...


「え、綾女さんもご存じの話なんですか?どんな話でしょうか?」


 中華服によく似た(けれどどこか違う服)服に収まりきっていない大きな胸(もしかしたら、わざと出している...?)をたゆんと揺らして、櫛奈さんの向かいの席に座る。

いつ見ても胸元に目が女性でも釘付けになってしまいます。

いけないいけない!!目を逸らすのよ、私!


気が付いたら話はどんどん進んでいた。


「ちょっと、桜華ちゃん聞いてるぅ〜?」

「す、すみません!色..色気がっ...気が散って...!」


うふふ。と妖しく笑うと、腕を組んで胸元を隠してくれました。

良かった。あれ?むしろ寄った...?いいえ、肌色は少なくなりました。


「その『暁様の女性探し』って言うのは、言葉通り、暁様が女を探しているのよぉ〜。何百年も探し続けている魅惑の女性、あと何年で会えるのか...いやぁん、すてきぃ!ロマンがあるわぁ!」

「暁様はここの異郷の主になった時からずっと何百年間もとある一人の女性を探しているのさ。で、『暁様の女性探し』って訳。まぁ、ずっと昔からあった噂だったんだけどね、この話がつい最近また話題になったのさ!」


暁様と言えば、あのお空に浮いているあのお城の主様ですよね...。

美麗秀才、文武両道、お金持ちで神格持ち...この異郷の全ての支配者...。

そんな人がたった一人の女性を...?選り取りみどりでしょうに...。


「ん?なんで昔からあった噂なのに、今また話題になったんですか?」

「そうさベイビー。一度目の噂は、昔の異原一の花魁、朝霧(あさぎり)に何百年か昔、暁様が一度通っていた時に噂になったのさ。」


異原一の花魁、朝霧さんは有名な女性です。

今は別の大名さんに身請けされ遊女を辞められましたが、その時の遊郭は一番繁盛していた時期らしく身請けの金額は確か...。


頭の中で引っ張ってきた情報を考えていると、櫛奈さんが話を続けた。


「花魁、朝霧に言った『彼女に少し似ている』って言った台詞がねあるんだけれども。それが今回、あの花魁朝霧を超えるかもしれないって近頃噂されている遊女、山吹(やまぶき)にも『彼女に似ている』って暁様が言ったらしいのさ。」

「そぅ、その噂の彼女は未だに現れず、まだ暁様の心を奪ったままだって噂になっているのよぉ〜!」


櫛奈さんの言葉を引き継いで綾女さんが言葉を続けた。


「そんなに忘れられない素敵なお方なんですね。」


かつて異原(いはら)一の花魁、朝霧さんや、その朝霧さんを超えるのではないかとこの頃噂になっている今の遊女、山吹さんと過ごしたというのに、まだその彼女さんを想うだなんて...。すごく素敵で忘れがたいお方なんでしょうか...。


「朝霧の前の花魁、山茶花(さざんか)にも同じことを言っているの~。気が遠くなる程何百年も前の花魁だけどねぇ。

そしてその花魁山茶花が聞いたそうなのぉ、『その彼女と会っていないの?』ってね。そしたら暁様は『ずっと探している』って答えたそうなのぉ~。

 一時はただの遊女が暁様に本気にならないための嘘だって話もあったんだけど、どうやら本当に探しているみたいなんですってぇ~!」


 手を胸の前で組んで恋する乙女のようにぽっと頬を少し紅潮させておっとりと告げる。

少し長いその言葉に、止めの言葉を間に挟めない程、うるうると目を輝かせながら言うものだから、しっかり聞き入ってしまった。


「今は、遊女の山吹が本気で暁様に入れ込んでしまっているらしいけど、それでもやっぱりその『噂の女性』には敵わないらしくって...。周りの女性も私こそはその女性を越えられるって意気込んでるのさ!」


そうなんですね...。知識程度に聞いていたら...


そこでだ!

ドンッと机をたたくと面白そうに目を細めて私の手を櫛奈さんが取った。

お触りは基本禁止ですともう一度言える雰囲気ではない。


 「えっと...?」


戸惑いがちに手を掴んでいる櫛奈さんを見れば、何やら意気込んでいるようだ。


「そんな暁様の為に、女性を探して差し上げようと各大妖が(グループ)を立ち上げたのさ。その暁様の噂の女性を探した組には大きな報酬が暁様から払われること間違いなし!ってね。」

「な、なるほど...?」


 皆さんで暁様の女性を探そうって話までは何となく分かった気がします。

 暁様はここでは皆さんの憧れや尊敬、畏怖の対象です。

 それでも暁様もとても(ノリ)がいい方で有名ですから、報酬のお話も本当になりそうだとは思います。

 でも、それが私に何の関係があるのでしょうか...?


「実はこの話をしているこの度、僕も恩がある一つの組に所属することになってね。()()()()()探しに難航してるのさ...。」

「美人の女性?えっと...、()()()()を探すのでは?」


今までの話によれば、暁様の噂の女性を探す話だったような...。

なぜ、美人の女性を探しているのでしょうか?


「もう何度も噂になれば探す...言わばお祭り騒ぎがあるんだけどね。一回も見つかってないのさ。」


肩を竦めて話す内容的に、どうやらこの騒動(?)は以前にも数回あったらしく、その度に探されているらしい...。


「その噂の女性は無理でも、『暁様の心を癒せる、射止めることができる女性はいるはずだ...!!』ってことで、数回ほど前からお祭りみたいになっていて 、その時の一番の美女を暁様にお見せして、報酬を貰う感じになったのさ、ベイビー☆ それに...」


櫛奈さんの話はそれからどんどん饒舌になって止まることはなかった。


話を聞くに...お祭りということらしいですね。


妖は長生きなので、お祭り騒ぎが大好きです。

いつしか、『暁様の女性探し』はお祭りみたいになったらしいです。


暁様もその時の一番の美女を決めては、報酬を支払い、その美女をしばらくお側に侍らせるのだそう。

美女さんもお城暮しに、噂の暁様と側にいられると言うことで、喜んで頑張るんだそうです。

お側にいる間に本当に心を射止めることが出来れば尚良し...。


すごい話です。

その女性は一年だけしかお側にいられないらしいですが、女性によっては数日で帰されてしまう人もいるそうです。

一番長かった噂の花魁、朝霧さんが一年だったから一年と言われていますが、もっとすごい美女なら長くお城暮しができるのだとか。

お城に美女がいる間、探してきた(?)連れてきた組にはお城への出入りが一時的に許可されるのだそうで、組に所属してる人達みんなで頑張るんだそうです。


「それでなんだけど、一番の美女で、すごく健気な子を暁様の前にお届けしようって僕が所属している組で決まったんだ。その美女探しがさっき言ったようにすごく難航しているんだけど...その美女探しに僕が立候補したのさっ☆」

「そうなのですね。綾女さんとかですか?」


なるほど、綾女さんをお探しにお店まで来たのですね。

と一人で納得していた時に、爆弾は落ちた。


「いいや...美女役に()()誘いたいのさ、ベイビィー☆!」


お得意の片目を瞑られ(ウィンク)、指をパチンッ☆と鳴らされると、私に良い笑顔を向けてきます。


え...この『()』って...もしかして...


「私ぃ〜〜〜っ?!」



ここまでお読みくださりありがとうございます。


皆さんの性癖に合う作品になればと思います。

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感想もお待ちしております。|д゜)チラッ

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