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最硬の騎士 〜硬く交わり世界を救う物語〜  作者: 羽田 キョウ
悪魔討伐編
1/2

第一話 不動にして最硬の男

 まず始めに、この小説を手に取って頂き、本当にありがとうございます。嬉しい限りです。

 長々と前書きを書くのは苦手なので、前書きはこの辺りで終わらせていただきます。

 それでは、どうぞお楽しみ下さい。


羽田 キョウ


 

 この世界には、「騎士」と呼ばれる存在がいる。この世界に蔓延る「悪」を打ち払い、世界に平穏をもたらす存在だ。そしてその「騎士」の中に一人、「最硬の騎士」と呼ばれる存在がいた。



 これは、一人の青年が、「最硬さいこう騎士きし」と呼ばれるまでの物語。











「.......」

 微かに声が聞こえる。



「......ろ」

 誰かが声を掛けている。何を言っているのかはよく聞こえない。



「.....ろ!」

 声色が強くなった。少し怒りが混じった、聞き慣れた声だ。





「起きろッ!」

「...何だ...?」

 1人の女性の大声に、1人の青年がやや不機嫌そうに起き上がる。

「...やっと起きたか、ロックス。何時だと思っている。」

「まだそんな早い時間じゃないだろ?」

「今日の昼までにこの宿屋を出発する予定だが。忘れたのか?」

「大丈夫だ、シロガネ先生。予定ならちゃんと覚えてる。」

「なら何故こんな時間まで寝ていたんだ。」

「予定は昼からだろ。だからそこまで早起きする必要もないと思った。それだけだ。」

「はぁ...、確かに、昨日のこの集落の郊外での悪魔との戦いは激戦だった。その疲れで熟睡してしまうのもまぁ分からなくも無いが、それにしても昼前まで寝てしまうのはさすがに度が過ぎる。早く準備するぞ。」

「分かった。すぐ準備する。」

 ロックスはベッドから素早く起き上がり、急いで部屋を出る支度をした。全ての身支度を終えた後、ロックスはもう一度自分がさっきまで寝ていた部屋を見回し、何かを忘れていないかを確認した。


 その後、ロックスとシロガネの二人は部屋を出て、そのまま宿屋の受付まで向かった。

「ご宿泊頂きありがとうございました。またのご宿泊、お待ちしております。」

「ありがとうございました。」

 二人は礼を言った後、宿屋を出てそのまま集落の入り口まで向かった。集落の入口の前でシロガネは地図を広げ、次の目的地を指し、そこまでのルートをロックスに説明した。



「昨日も宿屋で説明したが、改めてここで説明する。ここから東へ12km進んだところにタラビナという大きな町がある。今日はそこを目指して行く。無論、移動の途中で悪魔に出会い戦闘になる可能性がある。それを考慮すると、今日の移動には全体で最短でも約3時間、最悪6時間を要することになる。移動手段は徒歩だ。行けるか、ロックス?」

「大丈夫だ。こんな長距離移動、もう慣れっこだ。それに、俺は体が丈夫だからな。何も心配いらないよ、シロガネ先生。」

「そうか。分かった。では行くぞ。」

 そう言って二人は集落を出て、広い草原の中を歩きだした。



 こうして二人は、悪魔との戦闘になるかもしれないという覚悟を決め、草原や山の中を歩き続けた。だが、運が良かったのか、道中で一度も悪魔と遭遇することなくただ真っすぐに歩き続けることができた。

「こんだけ歩いてるのに、一度も悪魔に合うことがないなんてことがあるんだな。シロガネ先生。」

「あぁ。たまには、このように徒歩移動するだけの日があっても良い。」

「それもそうだな。」

 そうして早2時間半が経とうとした時、シロガネは突然立ち止まり、遠方の一点を見つめた。


「どうしたんだシロガネ先生?」

「あれを見ろ。誰かが悪魔と戦闘を行っている。それもここらでは見ないような服装をしている。旅人か?」

 確かに、そこで悪魔と戦っていたのは、この近辺ではあまり見かけない極東の戦士が着るような、袈裟に近い服装をした人間らしき人物だった。

「なあ、どうするシロガネ先生?あの人間が戦っているのは、ただの雑魚の下級悪魔だけに見える。だがかなりの数がいる。俺たちが助けに行ったほうがいいんじゃないのか?」

 ロックスが戦闘の現場を睨むように見つめながら問いかける。

「そうだな。ここから見えるだけでもざっと10か20ほどの下級悪魔が存在している。恐らくそれらを従える中級か上級の悪魔もいるだろう。下級の悪魔であれば普通の人間でも対処可能だが、中級、果ては上級となれば話は別だ。普通の人間ではまともに対処できない。最悪死ぬ可能性もある。」

「よし、行こう。シロガネ先生。」

「あぁ。手遅れになる前にな。」

 そう言って二人はすぐに悪魔との戦闘に向かった。




「ぐぅぅ…、やはり悪魔との戦闘は厳しいでござるな…。」

 十数体の悪魔と戦闘を続けていたその極東の戦士は、腰に差した小刀を用いて実に20分以上にも渡り戦闘を繰り返していた。何体かの下級悪魔を倒すことはできたものの、悪魔たちの数の暴力による猛攻は恐ろしいもので、捌いても捌いても繰り返される悪魔の連撃を潜り抜けるのに精一杯だった。まともな反撃もできず、防戦一方。体力はどんどん削られていく。そしてついに、悪魔の攻撃を捌き切れなかった。

「食らいなァッッ!」

「ぐおぉぉッ!?」

 悪魔の一撃を肩に受けた戦士はよろめくも、下級悪魔の群れを何とか抜け出そうとする。

 その下級悪魔の群れの中から、一体の図体の大きな悪魔が戦士に近づいた。大剣らしき武器を背負っていることから、戦士は恐らくこれが悪魔の群れのボスである上級悪魔なのだと気づいた。


 上級悪魔は手に持った剣を両手で振るう。何とか躱そうとするも、剣を振った衝撃で吹き飛ばされてしまい、岩石に強く体を打ち付けてしまった。

「ぐっ…、余波だけでこの威力とは…。非常に不味いッ…!」

 大ダメージを受け動けなくなった戦士に、上級悪魔が近づいてくる。

(拙者の旅もここまででござるか…。この世界の様々な景色をもっとこの目で見たかった…。この足で踏破したかった…。やはりもう少し修行を積んでから旅立つべきだったか…。拙者の人生は、後悔で始まり、後悔で終わる人生でござったか……。)

 後悔と自責、若干の諦めに沈む戦士を前に、上級悪魔は剣を振り上げる。

(終わった………。)

 そして、一切の容赦なく、剣を振り下ろした。








 鈍い音が鳴り響いた。まるで金属同士を勢いよく打ち付けたような音が辺り一面に鳴り響いた。








「……!?」

 戦士が顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。そして、自分の目の前に立っていたはずの上級悪魔は、その一人の男に殴り飛ばされていた。

(一体何が起こったのでござるか!?)


 そしてすかさず、その男は殴られ倒れこんだ上級悪魔に右腕の殴打による追撃を叩き込む。上級悪魔はそれを剣を用いてガード。しかしその男は追撃をやめない。握りしめた両方の拳を、何度も、何度も、何度も叩き込む。

「人間風情がァ、この俺の防御をぶち抜こうなんて思いあがるんじゃねえよォォッッ!!!」

 上級悪魔が男を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた男は空中で回転し見事着地。そして交戦の構えを続ける。

「これでも喰らいやがれえェェェッ!!!!」

 既に立ち上がっていた上級悪魔は、男に向かって剣を振り下ろす。

「危ない!!避けろォッ!!!」

 戦士の警告にも耳を貸さず、その男はただ立ち尽くしていた。剣が男の首筋に向かって一直線に向かってくる。そして男の首筋に刃が当たると思われたその瞬間、





「どういうことだ……。」

 首筋を狙った一振りの刃は、男の左手首によって防がれた。

「まともな装甲も無しに俺の剣を受け止めただとォ!?貴様ァァァ!!どういう術を使いやがったァッ!!!」

 その男は悪魔は問いかけにも答えず、受け止めた剣を左の小脇に抱えて固定した。

「おい、何しやがる!!さっさと俺の剣を離しやがれ!!」

 男は問いかけに答えず、そのまま左の小脇に抱えた大剣を右腕の手刀で素早く振り下ろす。「フンッッ」

そしてその男は、悪魔の大剣を、まるで木の板を割るかのように容易く真っ二つにへし折った。

「ああああァァッッ!?俺の剣がァァァァ!!!!」

 さらにその男は追撃を止めない。小脇に抱えた折れた剣の刃を持ち、そのまま上級悪魔の心臓目掛けて力強く突き刺す。

「グオォァァァァッッッ!?」

刃は悪魔の胸部に命中。そして間髪入れず力強く右足で悪魔を蹴り飛ばした。

「アバアァァァッッッ!!」

男の猛攻に、悪魔は倒れ込み、膝を付いた。胸部に刺さった刃を抜き、投げ捨てた。


「グオォ…ォ…っ…この…人間ッ…風情がァァ…!!!」

 これほどの連撃を受けても死滅しない上級悪魔を前に、男は息を整え、力を溜める。

「ハァァァァッ………」

「ウオオオアアアァァァァァ!!!!」

 雄叫びを上げながら上級悪魔が猛スピードで突っ込んでくる。10メートル、8メートル、5メートル、どんどん近づいてくる。

 そして2メートル、あと少しのところで上級悪魔は飛び上がり、上から拳を振り下ろそうとしたその瞬間。

「ハァァッッ!!!!」

 男は右腕を勢いよく突き出し、上級悪魔の顔面目掛けてパンチを繰り出した。

「ブゴォォ!?」

 予想をはるかに超える衝撃を受けた上級悪魔は、空中で一瞬止まった。その機を見逃さなかった男は左のアッパーでさらに追撃。

「がアァァァ!?」

 上空に打ち上げられた上級悪魔はもはや為す術無し。只の的だ。そして男も上空に飛び上がる。とどめを差すのだ。

 男は、力強く右の拳を握りしめる。

「ハアァァァッッッ………。」

そして掛け声と共に思いっきり殴りつけた。


砕甲拳クラッシュ・フィストッ!!!!ハア゛ア゛ア゛ァァァァッッッ!!!!!!」


 その男の拳は鋼より硬く、鋭く、重いものだった。拳は勢いよく悪魔の腹部に命中。

「ゴバォォッッッ!?」

当然、手負いの上級悪魔が耐えきれるようなものでは無く、その上級悪魔は、容易く勢いよく吹き飛んだ。

「グワアアアァァァァァーーーーッッッ!!!!!!」

 吹き飛んだ上級悪魔は遠くの岸壁に勢いよく激突し、断末魔と共に爆発四散した。




 如何でしたでしょうか?

 書いてる途中で筆が止まらず、中々の長文となってしまいました。私の悪癖です。

 次回は、この世界に蔓延る悪魔、そして魔動鉱石、基本的な世界観の説明に徹底します。

 どうぞ、これからも私の小説をよろしくお願いいたします。


羽田 キョウ


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