六話 憎しみの過去
「やるぞ!ヤロー共、おー!」
と高らかに宣言した。
「ヤロー共って…ボク達の中でヤローは一人しか居ないんだが。それに、やるも何も、どうやってその隠れ家に潜入する気かな?まさか正面突破とは…言わないよね」
「えっへへ…考えてにゃい!」
「はぁ〜」
ドクターはべシルの言葉に呆れていた
「あはは…」
「ご安心ください。潜入の方法ならワシに考えがあります。」
「え!なんですか。潜入の方法って教えてください。」
ニヒツは少し興奮気味で前のめりになって言った。
「それは、ですね…貢物のふりをして潜入するのです。」
「貢物のふり?」
「そうです。彼らが要求したのは金と…そして"女"です。つまり貢物の女と言う名目でなら簡単に中に入れます。」
「あ〜なるほど!」
「幸いここには女性が二人ほど居ますしね。ま〜中で何をされるか分かりませんから無理強いはしませんが。」
「いや、ボクは…!」
「ドクター!ごにょごにょ…」
べシルはドクターの耳元で何かを言っている。ドクターはそれを聞き
「あ〜確かにその方が得策だね。」
と言った。二人が再び皆に顔を合わせべシルは咳払いをして
「アッハッハ…さっ、作戦会議も良いけどさ、お姉さん、お腹空いてきちゃったな〜なん〜て」
「それもそうですじゃな、今夜は遅い。貢物の納品日は明日の正午です。今日はこの村でゆっくりしていってくださいぞ。」
「わり〜ゲッコ。俺ら飯がねーんだ。寝床と一緒…な」
「わかっています。直ぐに用意させますから。お〜いハスキーさん〜頼めるかな?」
「は〜い、了解で〜す。」
すると奥から、黒いストレートのロングヘアーに彼らと同じ黒に金の星の描いたバンダナの女性。
「は〜い、どうぞ〜。この辺は自然も豊かでモンスターも多いので、食料が豊富で、自然のエーテルに満ちてますから味も保証付きです。どうぞお召し上がりください。」
そこに出たのは街では見ない民族料理の数々。
「お〜豪華豪華!いたっただま〜す。う〜ん超ー美味しい!やっぱここのご飯は美味しいね〜」
ベシルは、並べられた。肉や野菜や果実を食べる。
「確かに美味しいですね。」
「美味だね」
三人は食事を楽しんだ。
「ふぅ〜食った食った」
「そうだね」
「とっても美味しかったです。」
「それはどうも」
三人は食事を終え、ハスキーやゲッコに御礼を言った。
「ゲッコさん、僕この村を見て回ろうと思うんですがよろしいですかね。」
「あー構わんよ。お〜いハスキーさん少しニヒツ少年に村を案内してやってくれんかー!」
「は〜い、洗い物がもう少しで終わるので少し待ってもらえますか?」
「はい、大丈夫です!」
ハスキーは洗い物を終え、ニヒツの元に走った。そのままニヒツはハスキーの案内を受けながら村を回っていた。
「ここがあたし達の居住区であっちが売店ね。」
「へ〜変わったお家が多いですね。」
「そうよね〜町の人からしたら、変わってるように思えるよね」
そこには現代の街並みとはかけ離れたテントの様家々と宗教的な建造物だが、その建造物も帝都にあるような、ゴシック調の聖貴族的な建築物でなく、荒ぶる怪物の様な石像や優しさに溢れる怪物、なんとも言えない顔をした小さな怪物が積み重なって出来たものまで様々な石像かこの世界観を表現していた。
「あちらでは何をされてるんですか?」
ハスキーに待ちの案内をしてもらっている途中、ニヒツはあるものをみて指を差し尋ねる。
そこには、中央の黒い何かの石像を囲むように胡座をかき、座りながら目を瞑る。その者達の前には、黄金の入れ物の中に黒い砂、その中心にロウソクを立てたものが並んでいた。
「あ〜あれ、あれはね。あたし達、黒星教団の大切な儀式の一つで、あの真ん中に見える石像があるでしょ、あれは"初代黒星の王・レ"と呼ばれる私たちにとっての英雄様のようなもので、あの方がこの黒星砂を扱い、我らをお救いになっただけでなく、自らが扱う黒星砂を我らに与えてくださったとされているんだよ。」
「へ〜、初代黒星の王・レ、興味深いです。やっぱり、知らないことを知るって楽しいですね。」
「ふふっ、そうだね!」
「お〜い、ハスキー」
"その時だった、遠くからハスキーさんを呼ぶ声がしたのは"
「シロム!どうしたの?」
「いや、どうしたのじゃなくて、お前こそこんなのところで何やって…あー!テメェー今朝の」
「はい、その節はどうも〜」
「テメェ!爺の知り合いって言うから通したけど、俺はまだお前らを信用してねーからな!それに…」
"そう言うとシロムくんは僕の胸ぐらを掴み、付けていたフードを一派って脱がし、下に来ていた僕の軍服を見るや否や"
「やっぱりか…やっぱテメェ!帝都の犬か!」
"そう言って、僕の頬を拳で一発
と殴り、僕は吹き飛ばされ後ろの儀式中の祭壇の場所に…突っ込んだ"
「きゃー!」
「テメェらのせいで!俺の…俺の母ちゃんと父ちゃんは!」
"もう一発が当たるその瞬間だった"
「やめなさい!シロム!」
「そこ退けよ…ハスキー!」
"ハスキーさんが僕をかばってくれました。"
「いや!あんたこそ頭冷やしな!」
「くっ!なにを…」
「やめろシロム!」
「落ち着け!」
"シロムくんの暴れように周りの男性達も止めに入るその時だった。"
「くぁ!離せ離せ!こいつは俺が!」
「シロム何をしとるか!」
「爺!うぅ…ちっ!クソが!」
"奥から現れたゲッコさんがシロムくんに呼びかけると、シロムくんは都合が悪くなったのか、帰っていった。"
「大丈夫ニヒツくん」
「はっはい!大丈夫です。こう言う事には慣れてますから。すみせん、儀式の最中だと言うのにお騒がせして。」
「いいんだニヒツ少年、これはシロムがやったことゆえ、こちらこそ無礼を詫びよう。すまない」
「いえいえ、それよりシロムくんはなぜ帝都を恨んでいるんですか?」
「ふぅ〜ん」
"僕の質問にゲッコさん含めた周りの誰もが
分が悪るそうな顔をして俯いていた。"
「見ての通りこの村にいる人は皆司教であるゲッコさんを中心に全員が黒星教団の人達の。」
「はっはい、それは存じていますが…」
「それで、黒星教団ってのは元々"魔女教"の派生教団なの、それで…帝都の王帝様はもと聖職者の家系の方だからその…魔女教と聖職者とはの間には昔から因縁があってね。それで関係が少し拗れてて、それで昔…」
「昔…」
"ハスキーさんはそこで話を止めた"
「ここからはワシが語りましょうぞ。昔、先も申した通り、帝都と我ら黒星教団は過去のいざこざから関係が悪化しておりました。そんななか、戦争も終わり平和協定が結ばれ、我々黒星もライト様のおかげもあって一時ではありましたが平和が訪れました。ですが…ここからやく十年前…その事件は起きました…」
十年前の黒星の村"ブラックヴィレッジ"
「"そこには、喉がな土地とどこまでも続く様に広がる平原があったのです。ワシらは与えられたその土地を愛していましたそんな頃です。突然村の奥から火の手が上がったのです。"」
「きゃー」
「何故だ騎士団様私たちが一体何をしたと!」
その時、黒の鎧を全身に纏ったその男は静かにそして冷たい声でつぶやく
「"貴様らの存在自体が罪だ"と王帝ディムナ・ゼレティネス・シルヴァ様はおっしゃっておられる。」
そしてその男は村の人にそれを言い放った後前を向きこう告げた。
「抹殺命令は出でいる。この村に住む全ての者を…殺せ」
その言葉はあまりにも冷たく、理不尽で…残酷だった。
「は!」
「まっ待ってくれそんなーあ!」
一人…
「いやーいやー!死にたく無い死にたくうぁ!いってて、は!」
また一人…
「ほら皆んな教会に逃げな、きっとここなら、"黒星の王様"が守ってくださる。」
「あそこだー!」
「くっもー気づかれたか。さー早く教会にお行き!」
皆を教会に避難させたおばさんは教会から遠ざかる様に走り出した。
そうして、虐殺は続きその手は、司教室まで広がっていた。
「ここも…そろそろ奴らに気づかれる。お前は子供達を連れて逃げろ」
「貴方はどうするの?」
「う…うん、ここで…奴らを止める」
男は決心を決め固唾を呑んで言い放つ
「無茶よお義父様ならまだしも黒星術を戦闘もまともに出来ない貴方じゃ…」
「それでもやるしか無いんだ!…子供達を頼む」
「…必ず生きて帰って!私達ずっと待ってるから。」
「あ〜約束する」
そうして男は外えと走り出し、騎士団に向かっていった。
「さー行くわよシロム!」
母親は5歳の息子の腕を掴み生まれたばかりの娘を背中に背負い走り出した。
「うあ!」
「くぅ…うぅ」
弱々しい涙を堪える女の声はとてもか弱かった。
「殺せ!」
女が街を駆ける中、胸ら腰、首、身体中のあらゆる箇所を突き刺され死体の山は一つ…また一つと増えて行く。だが、重い鎧を纏っても、騎士団は早かった。普通の成人男性が魔力を帯びて走ってもその足に追いつくであろ〜スピードを、妊娠したばかりの体力の無い、女に逃れられるはずもなかった。
「いたぞ!」
「女子供だろうと容赦するな!我らの未来に穢れた血の一滴もあってわならぬ!」
「(ふっふぁふはふうぁ!)」
妊娠したばかりで、体力の無い女は息が荒くそのうちは転んだ。それは偶然では無い。騎士の打った一発の銃が彼女の足に命中し、足を吹き飛ばした。
「やったぜ…」
「うっうぁ〜!」
いきなりの衝撃に赤ん坊が泣き始める。
(もう追いつかれる。私はダメでも攻めてこの子達だけでも。)
「シロム!この子をお願い」
「でも母ちゃんは…」
「母さんはそっちには行けないわ。でも父さんと一緒に貴方をお空から見てるから…」
「そんな〜…そんなの嫌だよ。まだ母ちゃんや父ちゃんと一緒に居たいよ!離れ…離れるなんてやだ!」
母親は心配そうにするシロムの頭を優しく撫で微笑み
「ネーロ・レ(黒星の王の)、ディフェンデレ(御加護が)、レイ(あらんことを)」
そして、女は後ろにいた騎士団の槍が背中を、貫かれ死んだ。目の前にいた少年には返り血が飛び顔を覆う。その景色は赤真な絶望の空。最後、母に頭を撫でられらた時の手の感触は少年の悲劇を皮肉にも残酷に演出していた。そしてそれを嘆くように、天も泣きそしてゴロゴロと蠢いていた…時は現在に戻る
「そのころ、私や黒金の仮面らは全員外に出ていましての〜、ワシは物資の交渉に、黒金の仮面は戦闘許可免許の更新に、そんな時を狙われたのか、はたまた偶然か今となってはわかりませんが。」
「では、その村にいた人は全員帝国に!」
「いや、あたしや黒金の仮面の連中以外の奴らは皆んな生き残ったさ、おかしくなった若造共もね。」
そう言って現れたのは、色黒の腹の少し出た中年の女性
「それは何故…ですか。」
「実は…あたしもよく覚えていないんだ。奴らを撒こうと必死に走っていたら突然村の道を凄い勢いで黒い何かが通り過ぎたと思ったら。その場にいた騎士団全員が串刺しにらなって死んでやがったのさ。」
「黒…何か」
「ありゃきっと黒星の王様が我らを助けてくださったと、あたしゃ〜今でも信じとるよ。」
色黒の女性はそう言って去っていた。
「ま〜その影響もあって、ワシらは国を追われ、逃げた先で偶然行き着いたこの場所に村を構え、暮らしておるのです。」
「それは良かった!本当に….でも僕は…彼に…」
その一件を聞いた後シロムの事を思い出し落ち込むニヒツ。
「でっでも良いんだよ。ニヒツくんが謝ることじゃないし、その頃はニヒツくんだってまだ幼い子供でしょ知るわけないよそんな事」
ハスキーはニヒツを元気づけようと言葉をかける
「ありがとうございますハスキーさん…でもこれは帝都の責任、帝都の騎士として、僕にも責任を償う義務がある。それに…」
(黒の…鎧…)
"この時僕の頭には、ある人物が浮かんでいた。でもこの時の僕は信じたくなかったんだ。この後…嫌でも耳にする…真実を…。僕とシロムくんの出会いは、"最悪の出会い"といってしまえる様なものだったけど、同時に僕らが高め競い合う硬い友情を結びきっかけにもなったんだ。いつかその時がくる…必ず"
「お〜い、ニヒツ様ー!」
「え!べシルさん。どうしたんですか。」
突然べシルが奥から走って来た。
「おっハスキーちゃん。さっきのご飯とっても美味しかったよ。ありがとね」
「はい、こちらこそありがとうございます」
「んふぅ〜、あっところでさ〜ニヒツくん」
べシルはとてつもない笑顔でニヒツに話しかける
「どうしたんですか?べシルさん。あとその笑み怖いです。」
「ふ〜ふふ、はい、これ」
「これって」
「明日の潜入用だよ」
「はっは〜でもなぜこれを僕に?」
ニヒツはその系がわからなかっただがべシルはその笑みを凝らさず。続けた
「そりゃ〜決まってるじゃ〜ん」
「まさか」
ハスキーは何かを察した
「え…え!」
その後一向休眠後の朝方
「なんで、僕がこんな事に」
ニヒツは潜入用の服(女装)を着て盗賊団アジトに乗り込むことになった。
「あはは」
「そう、よく似合ってるよニヒツ様。」
「皆様、乗車前にこの錠をお付け下さい」
「は〜い」
そして一向とハスキーはキャリッジホースに乗り込み
アジトに向かうキャリッジホース(空飛ぶ機械馬車)は走り出し。その中でニヒツは可愛いシュシュとバンダナで髪を両結びし、大きくへそと方を肩を出した女性用の黒星服と黒のアームカバー、短パン黒のハイソックスに身を固め
「うぅ〜」
一人泣いていた。