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9話 キングゴーレム出現!

 突如アマンダが声をあげた。そのアマンダの目の前には五芒星のマーク、なるほどこれが【転移魔法陣】の印か。それ以外だと、本当に見た目はほかの建造物と区別がつかない。


 アマンダが中に入り、俺も続けて中に入る。だが中に入った俺らが目にしたのは、意外な光景だった。


「な、これは?」

「天井が……崩落している? 地震でもあったのか?」

「いやそうではないな。恐らく建物ごと破壊されたのだ」


 アマンダの言葉を素直に受け止めるのに時間がかかった。だがこれも全て敵の策の一つだった。アマンダが右手を地面に触れた。


「かすかだが、魔力消費の痕跡がある。間違いなく【転移魔法陣】は発動された」


「それじゃあ、この崩落はその後か?」


 ニコラス達がここから【転移魔法陣】を使い、転移したのは間違いない。しかし奴らはこの場所にもう用はないと済んだのか、発動後に建物が崩壊するような仕掛けを施した。恐らく時限式の爆弾か、何かなのだろうか。


 しかしその爆弾の可能性もないようだ。アマンダが崩れた瓦礫を注視した。


「火薬の臭いはしない」

「じゃあ、爆弾とかじゃないのか?」

「そうなると、考えられるのは……」


 その時、ドォオオオンと巨大な岩が落下したような音が、遠くから響き渡った。俺の【気配探知】は敏感に悟った、強敵がいると。


「早速、お出ましか」


 さっきトンネルの入り口で感じた魔物の気配、恐らくここにいるはずなのだが、どこにいるのだろうか?


「来るぞ!」


 アマンダが敵を捉えたようだ。すると遠くの暗闇から不気味に光る赤い球体、そしてその上方には、これまた不気味に光る眼のような細長い光が差した。眼の位置からして、かなりの巨体のようだ。


「コイツは……キングゴーレムか!」

「ゴォオオオオオ!」


 体長は俺の数倍以上はある。全身土と岩で出来た巨体なゴーレム、腹部の中央に綺麗に光る赤い球体が特徴だ。建物を破壊したのはコイツで間違いなさそうだ。


 俺もその姿は何度も見たことある。竜神界の試練の時、ゼノンが用意した魔人形に魔力を宿し生成された魔物として、何度も相手をした。最初の内は本当に苦戦した相手だが、竜騎士となった今の俺にとっては相手にならない。


「ランディ、油断はするなよ」


 そんな俺の気持ちを悟ったアマンダが、優しく忠告してくれる。正直そんな忠告など不要なくらい、俺には造作なく倒せると自負していた。


「奴の弱点は、あの中央の核だろ」


 何度も竜神界で戦った相手だ。弱点は知っている。核自体は俺の握り拳くらいの大きさだが、奴の巨体と比較したらかなり小さく、最初の内は当てるのに苦戦した。それどころか、奴の巨大な両腕によって近づけばサンドバッグにされてしまう。


 だからあの核に直撃させるには、遠距離攻撃しかない。無駄に攻撃を喰らうわけにはいかないからな。俺は槍の刃先に竜気を一点に溜めた。


「ゴォオオオオ!!」


 キングゴーレムの巨大な右腕が俺を押しつぶそうとする。昔の俺なら、あの右腕に怯え切って逃げ惑うしかなかった。


 しかし今の俺には、奴の右腕が止まって見える。仮に直撃しても、【竜騎士】となった俺の耐久力なら問題ない。俺は奴の右腕には目もくれず、刃先に溜めた竜気を核に向け発射した。


「竜気弾!」


 発射された竜気はそれこそ弾丸のように一直線に放たれ、核に直撃した。その直後、核は衝撃で破壊され、キングゴーレムの動きが止まった。


 やれやれ、あっけないな。


 だが、俺のその考えは甘かった。


「違う、これは!?」

「どうした、アマンダ?」

「あれはフェイクだ。見ろ、周りを!」


 アマンダに言われて、俺達の周囲の地面を見渡した。すると、なぜかそこかしこから泥人形が無数に這い出てきた。


 だがよく見るとただの泥人形ではない。なんと泥人形は、小型化されたゴーレムの姿だった。アマンダの言葉の意味を俺も理解した。どうやらこのキングゴーレム、ほかの奴らとは知能がかなり高いようだ。


「くっ、あの核はコイツ等を呼び出すためのトラップか!」

「このゴーレム共は私が相手をする。お前は本体を!」


 アマンダは周囲のゴーレムとの戦闘に入った。正体は魔竜というから、ゴーレム共に苦戦するとは思えない。そうでなく、問題は本体だな。


 破壊された核も復元され、キングゴーレムも戦闘態勢に戻った。正直予想外な展開だ。だがアマンダから、またも優しいアドバイスが入る。


「ランディ、本物の核は体内のどこかだ。まずそれを探せ!」


 なるほどね。まぁ、普通攻撃されたら厄介な核は体外に露出すべきじゃないから、その通りだ。しかしキングゴーレムはランクBの魔物なだけに、そこまでに知能はないと踏んでいた。竜神界で戦ったキングゴーレムも例外なく、あの核を破壊するだけで倒せていたから。


「体内の核って言っても、どうやって探せば?」


 だがその疑問にはアマンダは答えられないようだ。見ればアマンダは周囲に無数に発生したゴーレムとの戦闘で忙しい。さすがに今は聞けないな。


 と、俺も彼女を見ている場合じゃなかった。直後、キングゴーレムの巨大な右腕が俺に襲い掛かった。俺は一瞬でそれを躱すが、右腕は地面を大きく陥没させた。


「単に核が体内にあるだけで、戦闘力自体は、変わっていないか。ならば……」


 俺は意を決して、ある奥義を発動させることにした。正直その方法が一番手っ取り早い。いちいち体のあちこちを破壊するのは面倒だ。俺は目を閉じて槍を両手に持ち、再び竜気を刃先に溜めた。そして頃合いを見計り、俺は奥義名を叫んだ。


「竜迅旋風!」


 直後槍の刃先から巨大な竜巻が発生した。俺はその竜巻を、一直線でキングゴーレムに直撃させた。動きが鈍い奴だから当てるのは簡単だ。


「ゴォオオオオオオオ!!」


 さっき発動させた竜気弾と違って、【竜迅旋風】は奥義スキルだ。究極奥義【飛竜地斬】ほどの威力はないが、それでもランクA程度の魔物なら瞬殺できる。


 ランクBの魔物には勿体なさすぎる技だ。まともに喰らえば、それこそ跡形もなく吹き飛ぶはず。


 しかしキングゴーレムは核を破壊しない限り、何度でも再生する。俺の奥義【竜迅旋風】で発生させた大竜巻をまともに喰らい、予想通りキングゴーレムの体はバラバラになったが、俺にとってはどうでもいい。


 最大の狙いは、奴の核がどこにあるか、それを確認したかった。


「あった」


 俺の目論見通り、体内にあった核は姿を表した。大きさは腹部にあった赤い球体と同じほどだが、色が漆黒になっている。


 人間でいう頭の部分に埋め込まれていたようだ。俺は奴の体が再生される前に、その核に正確に狙いを定めた。そして再度槍の刃先に溜めた気弾を、その核一点に狙いをつけ発射した。


「グゴォオオオオオオオオ!!」


 ゴーレム、というか核と言っていいのか、竜気弾が直撃した瞬間さっきよりも悲痛な呻き声を上げた。どうやら、紛れもなく奴の急所だったらしい。黒い核は粉砕され、再生途中のゴーレムの体も無残に崩れ去った。


「終わったぞ、アマンダ」


 アマンダは何事もなかったのように、俺の前に姿を現した。体のところどこにゴーレムと戦ったのだろうか、砂や岩の破片が付着していた。もちろん傷は一つもついていない。


「……ありがとう」

「え?」

「どうした?」

「い、いや……」


 アマンダが俺に礼を言うだなんて思わなかった。正体は魔竜だ。やはり人間としての礼儀は弁えているようだ。もしかしたら、俺よりも礼節を重んじるタイプかもしれない。


 そんなことを俺が考えていることなど知る由もない彼女は、突然地面に視線を配りながらうろつき回る。何か探し物しているのだろうか。


「何か落としたのか?」

「そうではない、戦利品は拾っておかなくてはな」

「戦利品?」

「キングゴーレムの核は宝石だ」

「ほ、宝石?」

「そこまで疎いとはな」


 アマンダに馬鹿にされた。だが宝石というキーワードに俺も反応した。


「もしかして……アメジストか?」

「残念、ガーネットだ」


 あぁ、そっちだったか。いや両方とも宝石ではあるんだが、よく考えたらこの近くには火山がある。火山があるということは、その周辺地域で採掘できる宝石の類は決まっていた。悔しいがアマンダの言う通りだな。


 それよりキングゴーレムの核が宝石だったとは、今更ながら驚いた。竜神界ではゼノンから何も聞いていない、もしかして知ってて当然だから教えなかったのか。しかしガーネットとなると、当然無視はできないな。


「早くそれ言ってくれよな、換金したらいくらくらいだ?」

「あの核の大きさなら、恐らく3万ルペクはあるだろう」

「さ、3万!?」

「お前にとっては大金だろうな」


 いや、大金どころではない。俺が二等兵だった頃の年収は300ルペクだが、それの100倍、それだけの金があれば。だが、金に目がくらみそうな俺の心をアマンダが逃さなかった。


「目的を忘れるな。これからの旅、資金は大量に必要になる」

「あぁ、わかってるよ」


 そうだった。俺達の目的は帝国の打倒、そのためには資金が必要となる。いくら最強の【竜騎士】になっても、これだけは自力で得るしかない。今更アルバイトなんてする気もないからな。


「黒い核も見逃すなよ」

「わかってる」


 黒い核、キングゴーレムの急所である核だ。俺の竜気弾によってバラバラになっているが、それもガーネットの一種なのだろう。俺は全て拾おうとした。


 だが、黒い核の破片が手に触れたその瞬間。


「え?」


 なんと黒い核の破片は跡形もなく消えた。一瞬何が起こったのかわからなかったが、確かに手に触れたと思っていたのに、消えている。


「どうした?」

「消えたんだ、核が」

「何だと? もしや……」


 アマンダは何かを知っているような素振りだ。彼女も近くに落ちていた黒い破片に触れた。しかしやはりというか、俺の時と同様消滅した。


「……これは」

「アマンダ、何か知っているのか?」

「【呪核】だな」

「え、何だって?」

「【呪核】だ。禁断魔法により生成された人工の核だ。魔物をより強化するために体内に埋め込められる」

「ってことは、こいつがほかのキングゴーレムより賢かったのは……」

「ヒースめ、ここまで手の込んだことを」


 その後のアマンダの説明によれば、【呪核】はその機能が停止し、外的な衝撃が加われば自動で消滅する作りになっているとのことだ。俺やアマンダの手が触れて消えたのも、頷ける。


 魔法師もとんでもない魔法を考えたものだ。なんということか、いくら外敵から身を守るためとはいえ魔物を強化し利用するだなんて、人間の考えることではない。


 とはいえキングゴーレムも倒し、さらに【転移魔法陣】も見つけはしたが、やはり目当てのニコラス達は既に転移した後だった。ここにいる用もなくなった俺達は、ひとまず地上に戻ることにした。

第9話ご覧いただきありがとうございます。今回は少し文字数多めになりました。


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