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41話 目覚める守護竜

 さっきから感じている巨大な気の正体は、間違いなくこの魔竜の石像からだな。しかし気のせいか、生きているように見える。


 その巨大な魔竜はどこかで見覚えがある。既視感があった俺は、たまらずアマンダを見た。


「なぁ……アマンダ、こいつは……」

「この遺跡の守護竜だ。名前は……」


 その時だった。俺達の会話を遮るかのように、竜の瞳が不気味に光り出し、雷鳴のような低い声まで響いてきた。


「なんだ、コイツ? 動くのか?」

「ランディ、オリバー。気をつけろ……」


 しかしアマンダが言葉を言い終える前に、オリバーが槍を構え、矛先から衝撃波を放った。


「おい、オリバー! なにを?」

「ふん、巨大な気がしたから慎重になっていたが、所詮相手は石像じゃないか。だったら、目覚める前に破壊すればいいだけだ」


 オリバーは持論を展開する。確かに言われてみればそうだが、それでもそんな簡単な方法で倒せる相手とも思えない。


 予想通り、オリバーの放った衝撃波は石像の前で打ち消された。どうやら石像の周囲に、見えないバリアが張られているみたいだ。


 オリバーは懲りない。今度は、さらに強烈な威力の衝撃波を放つ。もちろんそれでも駄目だった。


「無駄だ、オリバー。半端な攻撃では到底破壊など……」

「なるほどな。だが、これならどうだ……」


 オリバーは再度矛先に、大量の魔気を集めた。それは、俺との戦いで見せた究極奥義【鬼神豪破弾】と似ている。だが、威力は抑えめのようだ。


「豪気斬!!」


 直後、オリバーは魔気を込めた槍の矛先を構え、巨大な魔竜の石像の頭より高い位置まで跳躍した。そして渾身の力で槍を魔竜の石像の頭部目掛けて振りかぶった。


 再び魔竜の石像のバリアによって弾かれるも、先ほどとは違って、振りかぶった際に生じた衝撃波はバリアを貫通し、石像の頭部に直撃した。


 すると衝突した箇所からひび割れが起こり始めた。頭部から始まったひび割れは、あっという間に魔竜の全身にまで行き渡り、所々から石の欠片と粉が落下し始めた。


「や、やったのか……?」

「これで破壊できるとはな、思ってたよりあっけない」


 しかしアマンダの反応は真逆だった。


「いや。むしろ、始まりに過ぎんよ」

「なに?」


 魔竜の巨大な石像から全ての石の欠片が落下した。そしてアマンダの言っていた意味がわかった。石像は、まるで中身を覆い隠すように、砕けた部分から白煙を発し始めた。


 直後、何やら白煙の中から巨大な黒い影が出現する。頭部があったあたりには、不気味な二つの光が出現した。それは、明らかに魔竜の瞳だった。


「マジかよ、本当に目覚めたのか?」

「奴は石像と化していたわけじゃない。石の殻に包まれていただけだ」


 白煙が全て取り除かれると、そこに鎮座していたのはやはり魔竜だった。今度こそ正真正銘の魔竜、さっきまでの石像とは違い、生きて動いているのもわかる。


 魔竜は両翼を大きく広げ、自らの巨体さを披露する。そして口を大きく広げ遺跡内部の隅々まで響き渡るほどの、咆哮をあげた。思わず耳を塞ぎたくなるほどの声量だな。


「侵入者……排除……する」


 低い声を発した。魔竜は眼前にいる俺達の姿をすぐさま捉え、戦闘態勢に入った。やはり歓迎はされてないようだ。


「何とも物騒な第一声だな。それにしても喋れる魔竜とはね……」


 オリバーは目の前にいる魔竜の発した言葉を珍しがるが、声が震えている。正直、余裕こいている状況じゃないと思うぞ。アマンダの言っていることはハッタリじゃない。俺は奴の気の大きさが嫌というほどわかる。


 石像から目を覚ました直後から感じていたが、神竜ゼノンを除けば、これまで戦ったどの魔物よりも強大だ。やはり手加減して勝てそうな相手じゃないな。


「ランディ、さっき言った通りだ。これでも【軽装備】のままで戦うか?」

「……いや、考えを改めるよ」

「なんの話してるんだ、おたくら?」

「気にするな、こっちの話だ。それよりお前こそ、自分の身は自分で守れよ」

「お前に言われるまでもない」


 既にオリバーに正体がバレてしまった今、【竜騎士】の力を隠す必要はない。俺は目を閉じて【重装備】の姿を想像した。


 だがそうは問屋が卸さなかった。目を閉じて念じようとしたが、俺の頭上から凄まじい熱気を感じた。目を開けて確認すると、魔竜の口から放たれた炎の塊が俺を焼き尽くそうとしていた。


「くっ!!」


 間一髪、俺は回避できた。そして炎が降りかかった地面を見てみる。焦げ目が広範囲にハッキリと出来上がっており、熱気も凄まじい。


 しかも魔法陣が出ていないことからすると、炎の魔法ではないようだ。魔法ではなく、魔竜特有の火炎息、アマンダも俺とラティア火山で戦っていた時に放っていたが、魔竜の中には炎と氷、そして雷の3属性の息攻撃が可能な固体までいる。そしてこれの厄介な点は、魔法ではないから俺の竜気でも相殺はできない。せいぜい竜気のバリアで、防御するのが精一杯だ。


 だが威力の高さを目の当たりにして、果たして竜気のバリアでも防げるかは微妙だ。いや防げるとは思うが、今の【軽装備】形態では無理がある。


 アマンダの忠告にもっと早く従うべきだったな。やはり守護竜とだけあって、並の魔竜ではないことは確かだ。【重装備】形態になるには、目を閉じて【重装備】の姿をイメージする必要がある。少し時間もかかり、その間無防備になってしまうのはかなり痛い。


 俺はなんとか魔竜の隙を見計らおうと、立ち回りを考える。すると、そこに意外な助け船が現れた。


「えっ?」

「俺がいるのも忘れてもらっちゃ困るぜ」


 なんとオリバーが魔竜の体の真横から、衝撃波を放っていた。そして魔竜の注意はオリバーに降りかかる。オリバーは目で俺に合図した。口には出さねど、奴の言いたいことはわかった。


「オリバー、恩に着る!」


 魔竜は完全にオリバーと相対する。オリバーだけでなく、アマンダも必死に攻撃魔法を放ち奴の注意を引き付けていた。その間俺は念じ続けた。こんなに時間がかかるスキルとは思えなかったが、まさかオリバーまで俺のために盾になってくれるとは思わなかった。


 しかしそのオリバーも、相手が悪すぎたようだ。衝撃波を放ち奴の注意を反らしたのはいいものの、直後に魔竜は長い尾をオリバーに叩きつけようとした。オリバーはそれを躱すも、態勢を崩したのを魔竜は逃さなかった。魔竜は間髪入れず、攻撃型魔法陣を繰り出した。巨大な魔気を収集し、【黒魔球】を形成して、オリバーに向けて発射した。


 その攻撃の速さにオリバーも対処ができなかった。オリバーも魔法陣を出して防御しようとしたが、直後【黒魔球】が衝突した。かろうじて防御バリアを張っていて致命傷には至らなかったようだが、オリバーはその衝撃で太い柱に叩きつけられ気を失った。


 それと同じ攻撃を、今度はアマンダにも繰り出そうとしている。しかしアマンダは奴の手の内を理解していたのか、すかさず同様の攻撃魔法で応戦した。魔竜同士だからオリバーの二の舞にならずに安心だが、オリバーがあの様じゃアマンダでも苦戦しそうな相手だな。


「ランディよ、私に構うな! 早く【重装備】へ!」

「わかってるよ!」

第41話ご覧いただきありがとうございます。


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