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37話 ゴードンの遺跡にある真の宝

「アマンダ、せめてオリバーだけでも……」

「あいにくだが、あの男には野心が漲っている。恐らくこの島の財宝を独り占めする気だ。そんな危険な男を連れて行くわけにはいかん」

「まぁ、それはわからなくもないが……」

「いや、別にそれだけが目的なら問題はないが……」

「はぁ、それってどういう意味だ?」

「ランディ、お前も既に知ったと思うが、この島にはかつての我が同胞の遺跡がある」

「そうだな。そこが俺達の目的地でもあり、ニコラス達の目的地でもある」

「その通り。もちろん先回りして、奴らを待ち伏せする。だがそもそも、どうして奴らがそこへ向うと思う?」

「それは……なんでだ?」

「ふぅ、相変わらず勘が鈍いな。もう気づいてると思ったが……」


 アマンダの言うことはよくわからない。正直、俺はニコラスとヒースさえ倒せれば、それでいいと思っていた。帝国の思惑や目的などは二の次だった。だが、確かにアマンダの言う通り奴らがここを訪れる真の理由は知らない。


「ラティアの火山で、奴らは何を盗んだ?」


 その言葉に俺もさすがに気づいた。


「ま、まさか……」


 アマンダは言葉には言わなかったが、俺も何があるのかは察しがついた。だが、それでも俺はウォードから船で聞いた話を思い出して、納得できないところを指摘する。


「ちょっと待て! 確か魔竜ゴードンは大昔にある魔法師によって倒されたって聞いたぞ? 卵だけが残されたってことか?」

「まぁ……そういうことだな……」


 なんだろう、アマンダの返事の様子は少しお茶を濁したような感じがする。俺はすっきりしない気持ちが収まらない。


 だが俺は深く詮索しないことにした。正直どうして卵があるのか、今はどうでもいい。一刻も早くニコラス達より先にその遺跡へ辿り着くことが先決だからだ。


「兎に角、今度という今度こそは、何としてもその卵を守らねばならぬ!」

「あぁ、わかっているよ!」


 アマンダは振り向いて、魔窟の奥底へ向おうとした。だが、俺は大事なことに気づいて、アマンダを制止する。


「おい、ちょっと待った!」

「どうした?」

「ここは魔物が出るんだろ? 彼らをこのままにして置いていくのはまずい」

「あぁ、そうだったな。これで大丈夫だ」


 アマンダはポーチから、何やら三角錐型の不思議な色をした結晶を取り出した。


「何だ、それは?」

「結界石だ。これをここに置けば、魔物は寄ってこない。本来なら野営の時に使うつもりだったが」


 アマンダは眠っていたウォードのすぐ隣にその結晶石を置いた。だが俺には何も見えない。


「これで……本当にいいのか?」

「お前には見えないだろうが、強力な魔法障壁が張り巡らされている」


 なるほど大した道具だな。俺の顔と髪の色まで変えた妙な葉っぱも含めて、一体どこで仕入れてきたんだろう。アマンダはよろず屋でもやっていたんだろうか。


 しかし俺がそんなことを考えている最中に、突然【気配探知】スキルが敏感に反応した。


「こ、この気配は……?」

「ちっ、長居しすぎたな」


 アマンダが舌打ちする。俺達の行方を邪魔する奴らが出現した。さっきウォードが言っていた、『マロトリスの大魔窟』に潜む魔物どもの反応だ。洞窟の奥底からうじゃうじゃと湧き出て、俺達の場所へと近づきつつある。


 どうやら奴らも俺達の気配を感じているらしいな。結界石を張り巡らしておいてよかった。


「数的には……多いな。100体くらいいるかな」

「雑魚どもの相手などしている暇はない。ランディ、わかっているな」

「あぁ、任せろ!」


 俺はアマンダに言われて、竜剣を鞘から抜き身構えた。俺達のすぐ目の前に、魔窟のさらに奥深くまで届く通路がある。微かにだが魔物どもの声と足音も聞こえてきた。どうやら間違いなくこの幅の広い通路から迫ってきている。


 一本道に集まる魔物の集団、一掃するには簡単だ。俺は剣先を通路に向けて、キングゴーレム戦で放ったのと同じ奥義を繰り出した。


「竜迅旋風!」


 剣先から、巨大な竜巻が蛇のように出現した。竜巻は一瞬で直進していき、その直径まで通路全体を塞ぐほど拡がった。


 魔物どもの悲痛な呻き声がかなりの音量で響いてくる。鍾乳洞内だから、本当に声が響きやすいな。通路の先は真っ暗だが、恐らくこの先は魔物どもの死体の山となっているに違いない。


「あらかた片付いたな。では行くか」


 アマンダは何事もなかったかのように言う。が、その前に俺はアマンダに確認しなければいけないことがある。


「アマンダ、行くのはいいが、この通路であってるのか?」

「そうだな。しばらくは一本道だ。途中で道が二手に分かれていて、片方は地上に出て、もう片方はさらに地下奥深くへ行く」

「地上には出ないで、そのまま遺跡へ行く、ということか?」

「その通りだ。それがわかっているなら、後は私を信じてついて来ればいい」

「……わかった。お前を信じよう」


 今はアマンダを信じて同行するしかないな。暗闇が支配する、魔窟の通路を俺達は入って行った。


 しかし俺達が通路に入ってしばらくすると、またもさっきと同じような魔物の群れを感知する。


「くそっ、またかよ!」

「ここの魔物どもは、ゆうに1000体以上は潜んでいるからな」


 さっきので相当殲滅させたはずだが、まだ残っていたとは。俺はまた【竜迅旋風】の構えをした。だが近づいてきていた魔物の群れは、徐々にだが減ってきた。そして、遂に感じなくなった。


「な、なんだ? あいつら引き返したのか?」

「いや、そうじゃないな。これは……」

「って、この気配は……?」


 直後、今度は別の大きな気配を感じた。魔物ではない。俺が今まで感じてきた気配の中では、三番目くらいには大きいが見覚えのある気だ。俺とアマンダは速攻で通路の奥へ向った。


「分かれ道だ!」

「左は外へ出る。我々の目的は右側だ!」

「さっきの気配は、オリバーだな。奴め、やはり先回りして……」

「いや、それはあり得ない。深い眠りにつかせたはずだが……甘く見すぎていたか」


 オリバーが目を覚ましているのは、アマンダにとっても予想外だったろう。


 通路が二股へ分かれている箇所で、俺達はアマンダの言う通り右側へ向かう。しかし、その時それまで感じていたオリバーの気配が突如消えた。


「馬鹿な、オリバーの気が?」

「消えた……」

「移動したようにも感じなかったが、これは一体……」

「奴は【隠密】スキルが得意なようだ。潜水艇の中でも、奴はそれを駆使して帝国兵どもの虚を突いた。おかげで潜水艇の制圧は楽だったが、敵に回すと厄介だな……」

「おいおい、誰が敵になったって言った?」

第37話ご覧いただきありがとうございます。


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