表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/197

18話 ランディ対オリバー①

「気が変わった」

「え、なんだ?」

「あんたら二人で6000ルペクだな。俺もやはり3000ルペクの報酬、つまりウォードさん。あんたは合計で、9000ルペクまでなら出せる余裕があるってことだろ?」

「あぁ、そうだが……」

「ふふ、それなら俺に名案がある」

「名案だと?」

「簡単さ、俺とあんたらで勝負をする。俺があんたらに勝ったら、俺に6000ルペク支払ってもらうぞ!」

「な、なんだと!?」

「逆にあんたらが勝ったら、今のままの金額で変更なしだ。別に構わねぇだろ。それでウォードさんの支払う金額は減るわけじゃねぇ」

「確かにそうだが……」

「それに、おたくらの実力も同時に図れるしな」


 オリバーの突然の案に俺達も驚く。もちろん筋は通っているが、こんな提案受ける必要あるだろうか。


 よく考えたら、俺達はただ『マロトリス島』へ行ければそれだけでいい。報酬が云々と言うのは正直どうでもいいんだ。


 もちろん、ウォードが高額な金額を請求してくる可能性もなくはないが、それでもメリットは少ないように感じる。だがアマンダは俺の意に反した返事をした。


「いいだろう、受けて立つ!」

「はぁ、アマンダ?」

「いいではないか、ランディ。彼の言う通り私達、いやお前の実力を試すにはそれしかない」

「だけど……」

「それに……盗賊団に金を支払うのも気が引けるしな」

「ふふ、そうこなくっちゃな」

「ちょ、ちょっと! 勝手に話を進めないでよ、いくらなんでも戦士同士で戦い合うって」

「お嬢ちゃん、あんたは黙ってな。これは戦士のプライドを賭けた話だ」

「戦士のプライドが何よ! 言っておくけど、あなた達貴重な戦力なんだから。ねぇ、ウォードも何か言ってよ」


 だがリデルの反論にウォードは釘を刺さない。


「リデル、気持ちはわかるが、確かに奴の言う通りだ。俺達はあの二人の実力がわからねぇ、俺も早計だった」

「そ、そんな……」

「ふふ、ウォードさん。話がわかるじゃねぇか」

「だが、あんたら二人は貴重な戦力になる。間違っても殺すんじゃねぇぞ」

「それはご尤もだが……俺に簡単に殺される程度じゃ、そもそも戦力にならねぇだろ」


 そう言いながらオリバーは俺達を鋭く睨む。まぁ確かにそうかもしれない。と言っても、試す相手を間違えているとは、口が裂けても言えないな。


「心配するな、お前ごときに殺されるような男ではない」

「ほう、言うじゃないか」

「逆にお前が私達に殺されないかどうか、心配なくらいだ」


 アマンダのその言葉に、思わずオリバーは固まる。もちろん、素直に受け入れる内容じゃない。しばらくして、笑い出した。


「……ふふふ、何というか。おたくら冗談は顔だけにしろよ」

「冗談ではない、そのままの意味だ」

「ふざけるのもいい加減にしろよ! さっきも見せたが、俺はランクAの【魔槍術士】だぞ!」

「それがどうしたと言うんだ? 私達だってお前が実際に戦ったところを見ていないからな、そうだろウォードさん?」

「あぁ、そうだな」


 確かにアマンダの言う通りだな。奴は確かにプレートを持っていたが、それ自体証明力はあるものの、単に身分と実績を示すだけに過ぎない。今ここで彼が、本当に実力があるかどうかの証明にはならない。


「……いいだろう。後悔するなよ」

「それはそうと、私達の内どっちと戦うつもりだ?」

「なんだと?」

「どっちと戦うつもりだと聞いたんだ。まさか私達二人まとめて相手するつもりか?」


 オリバーは悩んでいるようだ。まさか、本当に俺達二人まとめて相手するつもりだったのか。さすがに実力者とはいえ、無茶があるぞ。


「オリバーさん。本当に一人で二人まとめて相手するの?」

「そうじゃなかったら、こんな提案出したりはしない」

「ふふ、安心しろ。私達とて、二人で相手するつもりはない」

「なんだと?」

「お前の相手はランディだけで十分だ」

「おい、勝手に決めるな」


 いきなりアマンダに指名された。まぁ、だが仕方ないか。


 今この状況で、逆に俺がオリバーと戦わないでっていうのも気が引ける。本当にあの重い剣を持って戦えるのかの証明も必要だからな。


「一応言っておくが、今『降参』を宣言してもいいぞ」

「おいおい、誰にもの言ってるんだよ」


 オリバーは俺に対して槍の刃先を俺に向け、戦闘態勢に入った。中腰で槍を構えたその本格的な体勢から、歴戦の戦士に並ぶほどの風格と気迫が確かに感じられる。そして驚くほど隙が無い。


 なるほど、確かにランクAの【魔槍術士】の肩書は嘘じゃないようだ。ウォードも真剣な眼差しでオリバーを見つめている。


 するとアマンダはこっそりと俺に耳打ちした。


「ちゃんと、手加減しろよ。出来るだけ互角だと思わせるんだ」


 いや難しい注文するな。しかしアマンダの意図はわかっている。一応ランクAの【魔槍術士】だから、その顔に泥を塗ってはまずいと思ったのだろう。


 確かに俺がその気になれば、一瞬で決着がつきそうだからな。


 そして俺も剣を鞘から抜いて、戦闘態勢に入った。


「どこからでもどうぞ」


 オリバーは余裕の表情で俺を挑発する。その余裕はいつまで続くかな。


 だがアマンダの言う通りに彼の面目も保たせなければいけない。となると、相手がどれだけの力量かまず図る必要があるな。


「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」

「なんだと?」

「だから、あんたから攻めてきたらどうだ?」


 相手から攻めてもらわねば、俺もどこまで加減すればいいかわからないからな。


 オリバーはその言葉を無視できなかったようだ。


「そうか、お前さんそんなに死に急ぎたいのか?」

「いや、死に急ぐつもりはないが……」

「ならば、避けてみろよ!」


 その直後、オリバーは一気に俺の間合いまで踏み込んできた。そして強烈な突き攻撃を俺に見せつける。


 俺は問題なくその攻撃を開始したが、オリバーは間髪入れず槍で真横に切り払いを入れた。俺はジャンプし、後退して躱す。


「ほほう、身のこなしだけはいいな」


 身のこなしがいいと言われたか。正直、今のオリバーの攻撃は俺にとってなんてことはない攻撃だ。これで本当にランクAなのか。修行中に嫌というほど浴びたゼノンの攻撃に比べたら、あくびが出るレベルなんだよ。


 あまりに遅すぎて、相手も絶対手加減してると思うな。もう少し挑発してみるか。


「あんた、大分手加減してるね」

「なにぃ?」

「だから、手加減してるって言ったんだ。もっと本気出したらどうだ?」


 やはりオリバーは聞き捨てならないようだ。外野で眺めているリデルが凄く不安げな表情を浮かべている、「そんなに怒らせて大丈夫?」って言いたげだな。


「……となると、あんたはよっぽど死に急ぎたいと見た」


 あぁ、またその言葉か。だがこれでオリバーはまだ手加減していることが判明した。さぁ、次にどんな攻撃を繰り出すか。


「はぁああああ!!」

第18話ご覧いただきありがとうございます。


この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。

https://twitter.com/rodosflyman

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ