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8.武闘大会③

次の日、決勝戦の会場となるドームの一つへとやってきたルーシーたち。対戦相手は、昨日カルムに言い寄ってきた、鎖鎌の女がいるチームだった。最初にフィールドに上がったのは、刀というこの世界では珍しい武器を持った男と、鎖鎌の女だった。こちらは、ルーシーとカルム。


『始め』の合図とともに試合が始まった。しかし、誰も攻撃を仕掛けない。さすがに決勝ともなると戦い方が変わってくる。


と、ルーシーが思っていたら、女が口を開いた。

「坊や。あれから気は変わらないのかしら?」

「あぁ。何度も言うが、負ける相手に興味はない。」

カルムは警戒を忘れずに、剣の柄に手をかけたまま答えた。

「あら、そう。残念ね。」

本当に残念そうに言って女は武器を構えた。すると、女の雰囲気が一転し鋭い殺気を放つ。

「すごい気迫だ。油断するなよ。」

ルーシーに言い残すと、カルムは女に向かって駆け出した。それに合わせて、男が女をかばうように前へと駆け出す。女はその場から腰に差したクナイを2,3本手にすると、カルムに向かって投げた。カルムはそれをあっさりと避けたが、女の口元はニヤリと曲がる。


「…っ!?影縛りか!?」


動けなくなったカルムに向かって男が迫る。そこへ、ルーシーは唱え終えていた魔法を解き放つ。遺跡で使って見せた光の玉を、カルムの影の上に出現させた。カルムの影が消え、呪縛から解き放たれる。だが、カルムへと一気に間合いを詰める刀の男は、間合いに入ると刀を鞘から抜き、一閃する。


ヒュン!


だが、カルムは後ろに飛ぶと刀を躱した。男は躱されるなどと思っていなかったのだろう。驚いた表情をしたが、切れなかったと判断して、すぐに大きく後ろに飛ぶ。


一方、ルーシーは援護するために次の呪文を唱える。しかし、女が鎖鎌をルーシーに向けて投げ、それを遮る。

「そう簡単に魔法を唱えさせるはずないでしょ?お嬢ちゃん。」

ルーシーは詠唱を中断して、迫り来る鎌を躱した。

「あら、魔導士にしてはなかなかやるじゃない。お姉さん見直しちゃった♪」

にこりと笑って見せる女は鎖をくいっと引く。油断することなく注意を払っていたルーシーは、戻ってくる鎌をあっさりと躱した。女は舌打ちすると何か魔法を唱え始めるのを見て、ルーシーも魔法を唱える。先に女が呪文を完成させ、炎系の中級魔法である槍を生み出す。


「これで、お終いよっ!!」

叫ぶと同時に女が手を振り下ろすと、ルーシーに向かって槍が飛ぶ。それに合わせて女が再び投げた鎖鎌もルーシーへと迫る。

「避けてもどちらかはあなたに当たるわ。さぁ、どっちが良いかしら?」

「どっちもごめんだね。」

ルーシーはそう言って、腰の短剣を1本抜くと鎌の方へ放った。そして、鎌をすり抜ける。


「あら残念。はずれね。」


女の嘲笑にルーシーはニヤリと笑うと、ルーシーに向かう鎖鎌がピタリと空中で止まった。そして、もう一方から迫っていた炎の槍を飛んで躱す。


「なっ!?」

「影縛り。あんたもさっき使ったじゃない?」

ルーシーに言われて、彼女が放った短剣を見ると確かに鎖の影にしっかりと刺さっていた。そして、女がそれに気を取られている隙に一気に間合いを詰めると、女の首元へと短剣を突きつける。


だが女は降参する様子もなくフンと鼻で笑って、口を開く。

「勝った気にならない方が良いわよ。これくらいで私たちが負けるわけ…」

「いや、貴様らの負けだ…。」

女の声を遮ったのはルーシーではなく、カルムだった。いつの間にか女の背後を取ると、こちらも首へと剣を向けた。


「…っ!?ジン!ジンはどうしたのよ!?」


女が刀を持った男の名を叫ぶが、返事はない。ハッとなったのは、目の端で男が倒れているのを捉えたからだった。

「まさか…ジンが負けたですって!?」

「確かに剣術はかなりのものだったが、僕の敵ではない。」

カルムの言葉を聞くと、女はため息を付き両手を上げた。

「降参するわ。この状況じゃ無理ね。」


ルーシーとカルムがフィールドから降りると、ライトが興奮気味で駆け寄ってきた。

「すごいっ!すごいよ、2人とも!!」

瞳をキラキラと輝かせている。ルーシーはニッと笑うと、ライトの額を軽く指で押す。

「次はライトとティーナでしょ?頑張りなよ。」

一方、カルムはライトの話を聞いてはいるのだろうが、騒がしい奴だと先に歩いて行ってしまった。


「じゃあ、行ってくる!」

と、元気よくティーナを引き連れてフィールドの階段に足をかけた途端、視界が真っ暗になった。少しして、視界が開けると、そこには先ほどまでと変わらない景色が広がる。だが、違った空間へと飛ばされたのは明らかだった。


「なんだ!?あれだけいた人がいねぇぞ!消えた!?」

「周りの人が消えたんじゃない。僕たちがここに飛ばされたようだ。」

「飛ばされたってどういうことだよっ!」

「落ち着け。焦っても何もできん。状況を見極めろ。」

辺りを見回して叫ぶチェルと、それに冷静に答えるカルム。


「もう少し取り乱すかと思ったのに残念だねぇ。」

「!?」

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