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18.終章 -カルム視点-

こんな風に誰かを愛しいと思うのは初めてかもしれないと、カルムは思いながら一月も目覚めない少女を見る。


ルヴェルディには心配ないと言われたが、こんなにも起きないと不安は募るばかり。少しでも紛らわせようと、書庫から本を拝借してみたが、集中できなかった。机の上に置かれた本は主を失い、寂しそうに佇む。カルムは眠れない日が続き、限界が来るといつの間にか眠っているという、不健康にしか思えない生活を繰り返していた。


今はルーシーの眠るベッドに腰を掛けて、彼女の髪を撫でて、頬に触れる。ピクリとも動かない彼女は、人形のようだった。だが、触れた部分から体温が伝わり、彼女が生きていると実感でき安心する。深いため息だけが部屋に響いた。


ベッドから降りると、椅子に腰掛け、集中できない読書に戻る。窓から入る陽射しと風が心地よくカルムは、気がつくと眠りへと誘われていた。


どのくらいの時を眠っていたのだろうか、カルムは何かが動く気配を感じ、眠りから覚める。そして、眠っているはずのルーシーの方を見て、固まった。彼女はこちらを見て涙を流しているのだ。


バッと、立ち上がり、夢じゃないのかなどと疑心暗鬼になりながら、彼女の元へと歩み寄る。涙を流すルーシーを見て、気が付くと彼女を抱き寄せていた。


すると、彼女もカルムの背に腕を回して、ギュッと力を込めてきた。ドキッと胸が鳴り心臓の音がうるさく感じる。しかし、すぐに、ルーシーは腕を解くと、まじまじと見つめてくる。どうやら、蘇生の魔法を使ったことを覚えていないようだった。


だから、彼は彼女に嘘を教えた。蘇生の話は彼女に伝える必要はないと思ったのだ。


カルムが白銀の遺跡での出来事を話終えると、ルーシーが身動ぎして、恥ずかしそうな雰囲気で言葉を口にする。


彼女の言葉に、ディーバレイスでルーシーが「女性が言い寄るのに興味ないのか?」と、聞いてきた時のことを思い出した。


その時はロージーの件で、そんなことまで考えようとも思っていなかったが、今考えると、何故そんなことを彼女が聞いてきたのか、不思議に感じた。


そして、1つの答えにたどり着く。いや、これは自分が望んでいる答えにしか過ぎないと、フッと笑ってしまう。彼女、ルーシーが、自分に興味を持って聞いたことを望んだ。だが、これを彼女に問うても答えは返ってこない気がしたので、彼は彼女の肩に手を置いてじっと見つめてから、耳元に顔を寄せて違う答えを囁いた。


すると、ルーシーは頬を染めて、いたたまれない様子で視線を逸らす。それをとても愛おしく感じ、カルムはどうしようもなく彼女に触れたくなり、彼はルーシーの額に口づけをする。


何が起こったか分からないと、不思議そうな表情をするルーシーに、カルムはイタズラに笑って見せた。気が付いた彼女の反応を見たかったのだ。すると、彼女はみるみる頬を朱色に染めて、慌て始める。嫌、という拒絶ではないことに、嬉しさを感じたが、それを見られるのが恥ずかしくて口許を手で押さえて隠したのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

現在、この話の続編を作成中です。

近々、投稿させていただきますので、是非そちらも読んでみてください。

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