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17.終章

ルーシーが意識を取り戻すと、豪華な作りの広い部屋のベッドの上だった。それがフローウェイ王国の客室だと、その時のルーシーには分からなかった。


長い眠りから覚めたような感覚で、頭がボーッとしている。ボヤけた目を擦ると、やっと視界が慣れてきて、目の前にいる人物に気がつく。ベッドのすぐ脇に置かれた1人用の小さな机に、椅子が1脚。そこにはカルムが本を片手にしたまま、眠る姿があった。ルーシーはボーッとする頭が晴れるように、白銀の遺跡でのことが甦ってきた。瞳から涙がこぼれ落ちる。


気配に気付いたのか、カルムがゆっくりと目を開ける。ルーシーの方を見てカルムはとても驚いているようだった。すぐに、立ち上がりカルムが目の前まで来ると、ルーシーはどっと涙が溢れた。


「無事だっ…」


言葉が途切れたのは、カルムの肩に埋もれて口が塞がってしまったから。カルムに少し強引に引き寄せられ、抱きしめられる。ルーシーも、カルムの背に腕を回して抱き締めた。少しして、ハッと腕を離すと、まじまじとカルムの胸を見つめる。


「傷は!?」

「何も覚えてないのか?」


うん?と、考え込むルーシーだったが、遺跡でのことが思い出せず、頭を捻った。


「まぁ、良いさ。君が無事なら。」


そう言うと、カルムはルーシーの頬に触れる。見つめられて、ルーシーは触れられた頬が熱くなるのを感じた。


「か、カルム?」

「1ヶ月も目覚めなかったんだ。さすがに心配になる。」


どうやらルーシーは封印の陣を踏んで、ロージーと共に魔力を吸い取られたせいで、魔力が回復するまで1ヶ月も眠り続けていたとカルムから聞いた。ティーナの母の事などを説明してもらう間も、カルムは彼女の手を握りしめて、離そうとはしなかった。

ふと、ルーシーはディーバレイスで話したことを思い出した。


「か、カルム?ま、前に、こういこと、興味ないっていうか、無関心っていうか…えっと、その…」

見つめられて手を握られていることが、恥ずかしくなってきて慌てるルーシー。ふと、2人の視線が合う。

ルーシーはどうにもいたたまれない気持ちになり、カルムから視線を逸らせた。すると、カルムが耳元で囁くように答える。


「興味がないと、言った覚えはない。僕だって男だ…」


そう言うカルムがどんな表情をしていたのかは分からない。スッと、カルムがルーシーの額にキスをした。すぐにカルムとの距離は離れる。ルーシーは何が起こったか分からないと言った様子で、不思議そうな顔をカルムへと向ける。すると、カルムは少し意地悪そうに笑った。そして、徐々に理解できてきたルーシーは、額を押さえて顔を朱色に染めたのだった。

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