序章
初投稿です。
読んでいただけたら嬉しいです。
'これは、私、ルーシーの物語。'
こう書くと、なんだかとんでもないことのはじまりのような気分になるな…と、ルーシーは思う。
だけど、これからしたためるのは、300年くらい前に自身に起きたエピソードだ。
300年前?と驚く人もいるかもしれないが、私は人間ではない。世界には人間と精霊、霊獣、水月の民と、呼ばれる種族が暮らしている。
私はその中でも、水月の民と呼ばれる種族だ。
水月の民は見た目は、人間と似たような姿をしているのだが若干異なる。水月の民は透き通った水色の髪に、月のような黄金の瞳を持ち、長く尖った耳をしている。そして寿命が長く、魔力も高いと言われる。
昔、ある事件のせいで、水月の民は人間から迫害を受けていたのだが、300年の時を経て人間たちとの関係はかなり修復できていると思う。今では隠れてこそこそしなくても、街を歩けるようになった。もちろんまだ、完全に関係が良くなったわけではないが、昔と比べたら雲泥の差だ。
まぁ、その話は置いておいて…
その他の種族の説明をしよう。
まずは精霊についてだ。
精霊とは万物のものに宿る、力の根元が形となったもの。人間には見ることはできないと言われている。だけど、人間が使う魔法は精霊の力を借りて発現されている。そのため、人間には魔法の使いやすい場所が決まってくる。
例えば、水が多く存在する場所では、水や氷の魔法が発現しやすい。逆に言えば、砂漠などでは水の精霊の数は少なく、人間は水系の魔法を使うことが難しいと言われている。
一方で、水月の民は精霊を見ることができる。特に水系の力が強い彼らは、水の精霊とだけだが会話もできた。
こういう違いからも、人間と水月の民は力の釣り合いが取れず、いがみ合いの原因となっているかもしれないと私は思う。
次は霊獣についてだ。
霊獣とは、精霊から力を分け与えてもらい、生きている神秘的な生き物だった。モンスターとはまた違い、その数は極端に少ない。こちらもまた、属性により形は様々存在する。私の知るところでは、狼の姿をしている霊獣がいる。
さて話を戻すが、何故、私が今になって300年もの昔の事を書き残したいと、考えたのかというと
…大切な出会いを忘れないため…
いや、やっと気持ちの整理ができたからと言うのが、正しいのかもしれなかった。
私には人間の夫がいたのだが、先立たれている。
人間よりも遥かに長い時を生きる水月の民なのだから、分かっていたことだったが、気持ちに整理をつけることができなかったのだ。
気持ちの整理がついたきっかけは、人との繋がりだった。夫がいなくなってからは、あまり人と接する事もせず、最低限の知り合いとしか会ってはいなかった。だけど、街で1人の人間と出会い、困っているのを助けたのをきっかけに、再び占い師として、生活をしようと思えたのだ。占い師として働くことは、楽しくもあり、人のためになり、私に充足感を与えてくれた。
心の変化が、こんなところにも現れたのだろう…昔の事を忘れないように書き記そうと考えたのだった。
長くなってしまったが、私の物語をここに書き記す。