8
乗り越してしまったレアムが引き返してくると思って、列車の到着を待ってみたが、一本目の電車の降客は無し、二本目の電車からは、地元住民と思しきおばあちゃんが一人降りただけだった。
もう一本待ってみるかと時刻表をみたら、次は30分後。
ためらったが、待つことにした。
ようやく電車が到着したが、結局、レアムの姿は無かった。
もう一本待つかな……
次は15分後。
どうする?
どんどん時間が過ぎていき、待ち続けても無駄な気がしてきた。
なんてことを思っていたら、電車がやってきた。
結局、誰も降りてこない。
ボクの足は桟橋の方に向かっていた。
何となく踏ん切りがついた気がする。
元々、ボクについてくると言い出したのはレアムの方だ。
ボクだけが電車を降りてしまったことを怒っているのなら、それはしょうがない。
ボクも悪かったかもしれないけど、だからといって、そのまま勝手にどこかへ行っちゃうこともないと思う。
一応、1時間以上待ったんだからね。
ボクのことが許せないから、戻ってこないんだ。
いいよ。
いいよ。
つまりは、友だちでも何でもなかったと言うことで。
……
……
……
やっぱりボクが悪かったかな……
……
……
今度、会えたら……
もっとお互いのことを知り合って……
ちゃんとした友だちになろう……
……
また会いたいな……
……
桟橋を半ば程まで歩いた所で、橋上の隅の方に光り輝くモノを見つけた。
銀色の石が連なったブレスレット……
レアムが教えてくれたとおりだった。
ちゃんと教えてくれた場所に落ちてたよ……
……
さあ、これが本当にヘマタイトなのかどうか、宝石屋さんに確かめに行きたいけど、このまま磨呂ん五の地下牢に向おう。
その途中に、レアムの家があるし……もしかしたら帰ってるかも……
有り得ないかな。
この桟橋を通らなきゃいけないから、ボクを追い越して行っちゃてるなんてね。
うん、有り得ないね。
レアムの家の前にたどり着いた。
最初にここに来た時は、中に誰かいる気配がありありだったけど、今は……
ドアノブを握り、回してみる。
カギは……掛かっていなかった。
ゆっくりと手前に開いて、中を覗いてみる。
灯りは付いていなく、薄暗い。
やっぱりいないかな。
部屋の中に入ってみる。
誰もいないのが確定。
そりゃそうだよね。
ボクを追い越して、先に帰ってたなんて、どうやったって無理だよ。
そんなこと、当然にわかるじゃない。
でも……ボク……がっかりしてるね。
有り得ないと思いながら、期待してたんだ……
バカだよね……
レアムの家は、よく見れば、夜露津さんのセンスらしい家具や雑貨がいっぱいあった。
最初に来た時には、これらから夜露津さんとの関連性を引き出せなかったね。
でも、レアムの身元がわかるようなモノは、何も見当たらなかった。
家族とか、兄弟とか、きっといるんだろうけどね。
チェストの引き出しとか、こっそり開けてみようと思ったけど、女の子の着替え物とか出てきたら、きっと慌てると思うんで、やめた。
結局、ただ家の中を眺めただけで、外に出た。
磨呂ん五の地下牢を目指そう。
《デス・マロン》を手に入れて、夜露津さんのところへ持っていくんだ。
あと、リキリキのところにも行かなきゃ。
忙しいね。
あちこち行き来していたら、またレアムと出会えるような気がする。
とにかく、やらなきゃいけない事をやっつけてしまおう。