30
『なんと!』
と、鼓膜が破れるような大音量が届き、ボクはとっさにスマホを耳から離した。
ピュアウッドのやつ、何やらひっきりなしに話し続けていたようだが、ボクは耳を保護しなきゃいけないから、聞けなかったね。
たぶん、
おお!
まさかレアムくんが弟のそばにいるなんて思わなかったよ。
おどろき、ももの木、さんしょの木、ブリキにタヌキにせんたくき
くらい省略OKな内容なのだろうと思う。
ん?
静かになったかな。
ボクはスマホを耳に当てた。
相手は息を切らしているようだ。
全力で話していたのか。
『……まあ……聞け……』
ゼイゼイ言ってるよ。
そばにいるレアムが、話をしたがっていそうだから、スマホを渡したよ。
「先生、大丈夫ですか?」
『おお……レアムくん……』
やり取りについては省略。
ボクは、プライバシーは守るんだ。
10分くらいかな、わりと長い時間話しこんでたね。
レアムからスマホが返ってきて、今度はボクとの会話を開始。
「で、何の用だ?」
『まあ聞け』
さっきより、息切れは治まっているね。
『用事は、すべてレアムくんに話したから、彼女が説明してくれる。
健闘を祈る』
電話は強制終了。
レアムに伝えたということだから、クエストがあるわけだね。
レアムは、真面目な顔でボクをじっと見つめ、やがてニコッと笑って、ボクに近づいた。
すごく近いね。
女の子に、こんなに近くに来られたのは初めてだよ。
あっと、さっきハグされたっけね。
「キミは、ピュアウッド先生の弟」
レアムは、瞳をキラキラさせながら言った。
ボクも驚いたよ。
レアムの学校の担任の先生って、ピュアウッドのことだったんだね。
あいつが、困っていたレアムを助けたんだ。
レアムは、ボクの右手を両手で包むように握った。
柔らかい感触と、ジワッとした暖かさが伝わってくる。
「ピュアウッド先生は、行き場を失っていたボクを助けてくれた。
そして、先生の弟のキミも、何度かボクを助けてくれた。
だから、ボクは」
そこでレアムの手に力がこめられた。
「キミの助けになりたいんだ。
先生から、クエストの目的を聞いたよ。
報酬は、50000ユニットだと言ってた」
50000ユニット……
前回のタンザナイトの依頼と並んで、高額だな。
あの件は……まだ達成できていなくて、報酬だけもらい得になってるけど。
「今度のクエストはね」
と、レアムが言い始めて、夜露津さんの方をちらりと見た。
夜露津さんは、それに答えるようにニヤリと笑った。
「捜し物を頼まれた。
それも《シトリン》という天然石でできたブレスレットだって。
金色をしていて、金運がある石らしいよ」
「つまり、《金色のブレスレット》。
それが、探し求めている5つ目のブレスレットだ」
夜露津さんが、レアムに続く。
えっと……
つまり……
世界征服阻止のための次の行動と、ピュアウッドからの依頼が重なった……ってことだよね。
そんな偶然ってあるのかな。
もしかして、磨呂ん五とか、芥子花蘭とか、李理楊とかの騒動と、ピュアウッドが何らかの関連を持っているってことなのか?
……
考えすぎだろうか……
「それとね」
と、レアムが話しかけてきた。
「前に依頼したクエストも、まだ終わってないから、と念を押されたよ」
あ……っと……
やっぱり、そうだよな……
目的を達成せずに、お金だけもらうなんて、むしが良いよね。
それは、さっきの夜露津さんが言っていた侵略者が持っているだろうから、攻略により、入手できるということになる。
簡単に攻略できるとは思えないけどね。
それより、直近の問題として、《金色のブレスレット》がどこにあるのか、まるで手がかりが無い、という点がある。
やっぱり、《宝石屋》のおじさんに相談するしかないかな。
今までも、そうして、解決してきたからね。
「……近所の《宝石屋》は」
と、夜露津さんが、ボクの思考に繋げるように話し始める。
もう、驚かないよ。
ボクが考えてることは、みんな筒抜けなんだからね。
「……開店のめどはたっていなく、今は不在にしている」
そうだった。
《宝石屋》さんは、ぶっ壊れていたんだ。
おじさんは、今、どこにいるんだろ?
「この町の《商店組合》に相談すれば、住居がどこなのかわかるはずだ」
そうか……
《商店組合》……
そういうのが、あるんだね。
オトナの仕組みだよね。
ボクには、さっぱりわからないけど、どこに行けば良いのかな?
夜露津さん、教えてくれないかな。
それとも、ピュアウッドなら、知ってるだろうか?
「心配はいらん」
と、夜露津さんが言った。
「《商店組合》は、私の店が本部に指定されている……」
え?
「キサマは、すでに《商店組合》に来ているのだ」
ええ?
「そして、組合の理事長は、私だ」
えええーっ!?
「これに《宝石屋》の住所を記しておいた。
キサマにくれてやる」
うう……
夜露津さん……
《山岳組合》の理事長もやってて……
何だか知らないけど……
つくづく、おそろしいヒトだと思う……




