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ブラザークエスト  作者: 守山みかん
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《あずまや》の駅を下りたすぐの街中を通り抜けて、ピュアウッドのキャンプ場に向かおうとしたら、たくさんの格子状の道と交差点が連続していた。

何度も赤信号に引っ掛かったんで、思ったよりも時間がかかってしまったね。

街を抜けたら、急に人気(ひとけ)の無い山道に入った。

今にもイノシシとか出そうな雰囲気で、街を出たらこれっていきなり過ぎるよ。

山道も、予想以上に険しいし、サバイバルな感じだし、どこまで歩いてもキャンプをするのにちょうど良い《洞穴》が見つからないし、そろそろ疲れてきたかなって頃になったら、何と三ツ又の別れ道に遭遇した。

聞いてないぞ!

どの道を行けば《洞穴》に行けるんだ?

このまま進んだら、きっと迷ってしまうだろう。

ヤバい。

ここは、一旦引き上げた方が……

そこへ着信音。

ピュアウッドからだ。

『まあ聞け』

相変わらずの出だしで通話が始まる。

『キミは前に進むべきだ。怖がることはない。キミが前に進めば、きっと未来は変わる』

いかにも学校の先生みたいなことを言ってるが……ああ……そういえば学校の先生だったな……

「おい、聞いてた話と違うぞ。駅を下りたら、すぐの場所みたいに言ってただろうが」

『はあ?』

ピュアウッドは、今初めて聞いたというような、とぼけた声を上げた。

こういう声を上げさせると、最強に憎たらしい感じの響きを繰り出してくる。

『駅のすぐそばなんてのは、キミの思いこみじゃないのかなあ。自分が勝手に解釈したのをいかにもボクのせいのように決めつけないでほしいなあ』

ああ!

ムカつく

ムカつく

ムカつく

こいつ殺す。

今度会ったら殺す。

スマホを耳から遠ざけ、着信を切ろうと思ったところで、ピュアウッドが話しかけてきたので、もう一度、耳に当てた。

『まあ聞け』

ピュアウッドの声は、一転しておちゃらけ感が抜け、真面目な雰囲気に包まれていたようなので、こちらも真面目に耳を傾けた。

『少し乱暴過ぎたと反省するよ。その山道は、結構な迷路になってる。行き止まりもいくつかあるが、きちんと現在地を押さえていけば、いつかキャンプ場にたどり着けるはずだ』

「まあ……やってみるよ」

『キミならできる。ガンバレ!』

着信は切れた。

やるしかないかな。

何とかなるだろう。

三ツ又の別れ道の、まず左側を選んで、そちらに進んでみる。

すぐに行き止まりになった。

引き返して、真ん中の道を進む。

またもや行き止まり。

おいおい。

この山道、ヒドいよ~

ピュアウッドの性格を表してるよ。

そこへ着信。

『ボクの性格と山道は関係ない』

プツリ。

何だ?

こいつ、ボクの考えてることがわかるのか?

それは、まあ良いとして、何度か行き止まりを経験したが、同じ所に何度も戻ってしまう性質の迷路ではないことが段々とわかってきて、ついにボクは目的地と思しき《洞穴》を発見した。

そして、ピュアウッドからの着信。

『よくやった。《洞穴》に入って、後片付けをしてくれ。集めてほしいのはテーブル✕1、チェア✕4、クーラーボックス✕1、プレート✕4、グリル✕1だ。《洞窟》の入口付近に固めて置いてくれれば良いよ。あとで、ボクの後輩を回収に行かせるから。何か質問は?』

「特に無いよ」

『サムシャイくん、この経験がキミの青春に輝きをもたらすはずだ。頑張りたまえよ』

(うるせえよ、バカ)

『それじゃあね。バイビー!』

プツリ

まあ、やるかな。

《電子ピアノ》のためだ。

ボクが《洞窟》に入ろうとすると、穴の奥から逆に出てこようとするヒトと鉢合わせになった。

「誰だ?」

そのヒトは低い声で言った。

いや、ヒトと言ってしまったが、そいつはブルーハワイのような青色の肌をした筋肉ムキムキのおっさんで、胸元がV字にカットされた白い肌着にブルージーンズのショートパンツという出で立ちだった。

「お……お前、ボクちゃんに挑戦する気だな」

そいつは言うと、両手の拳を前に出し、脇を締めて、ボクシングの構えをした。

「ボクちゃんと勝負するなら相手になるぜ」

勝負なんかしねえよ。

何だコイツ。

ゴツい雰囲気で、ボクちゃんかよ。

「おお……ボクちゃん、やっちゃうよ。本気出しちゃうよ。カムカムカム!」

本気いらないよ。

鼻息が荒いな。

面倒くさいヤツが現れたよ。

ピュアウッドの学校のヒトかな。

下手(へた)に殴ったりすると、ピュアウッドが鬱陶(うっとう)しくなるヤツかな。

「カムカムカムカム!」

青いヤツは、こっちがピクリとも動いていないんだけど、紙一重でパンチを避けてやったぞみたいに首を左右に動かして、ボクを挑発してきた。

ボクは、相手をにらむだけで、一切手を出さなかった。

「ボクちゃんと勝負したいんだろ?カムカムカム!」

青いヤツの挑発は続く。

やめてくれそうにない。

「ボクは、兄に頼まれて、《洞窟》の中を片付けに来ただけなんです。中に入れて下さい」

ボクがそう伝えた瞬間、青いヤツは、

「ほらー!」と、大声を上げた。

「やっぱりボクちゃんと勝負する気なんだ。ボクちゃん、相手しちゃうよ」

何だコイツは……


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