第九十一話 王妃様のお話3
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今回は、婚約者候補の謎!
それでは、どうぞ!
いよいよ、私を『婚約者候補』とした理由が分かる。どんなに考えても、まともな答えが出なかったそれが判明する。
ゴクリと喉を鳴らして、王妃様の言葉を待てば、王妃様はとても言いづらそうに口を開く。
「あまり気を悪くしないでほしいのですが……正直に言いますと、現状では、いくらユミリア嬢をイルト殿下の婚約者にしたと言ったところで、誰も納得しないと考えたのが、最も大きな理由になります」
王妃様の話はこうだった。前提条件として、イルト王子は、王位継承権第二位の地位に居るため、その権力を求めて寄りつこうとする者が居る。そして、そんな中、いきなり婚約者を決めれば反発は確実であり、しかも、私自身が黒の獣つきという周りから蔑まれる立場であるため、過激な行動に出る者も多いだろうと予想がされた。それは、たとえ公爵家のご令嬢という立場でも相殺できないマイナス要素で、王妃様は、私の身の安全を確保するために、今回の婚約者候補を作るという手段を思いついたとのことだった。ただし、結局、婚約者候補の話をレイア嬢達が蹴ってしまったため、ひとまず私の位置づけを『候補』とすることで、少しでも風当たりを弱くすることしかできなかったらしいが……。
(そっか……王妃様は、私を守ろうとしてくれていたんだ……)
王妃様は、どうやらイルト王子のことをとても大切に思ってくれているらしい。イルト王子からも、時々王妃様の話を聞くことがある。イルト王子を産んだのは側妃様だが、彼女はイルト王子にあまり関心を示さないどころか、毛嫌いしているらしく、その代わりに、王妃様が優しく厳しく導いてくださったのだと聞いていた。
「王妃様は、私のことも、イルト様のことも、避けたりはなさらないのですね?」
必死に守ろうとしてくれる王妃様へ、私はどうしても、そんな言葉が口をついて出てしまった。
「そうですね。知っていますか? 私の母国、ティアルーンでは、黒は神聖なものとして崇められているのですよ?」
「えっ?」
「しかも、獣つきともなれば、神に近い存在として、城に招かれもします」
まだ、私が勉強できているのは自国のことで精一杯だ。だから、他国で黒がどのような扱いを受けているのかなど、全く考えてもみなかったのだが、どうやら、王妃様の国では黒こそが貴重なものとされているらしい。
「いずれ、イルト殿下と一緒に行ってみると良いです。きっと、町中で崇められて大変なことになりますね?」
お茶目に言ってみせる王妃様だったが、あまりにも想像ができない光景に、首をかしげるしかない。
「もちろん、イルト殿下がどんな姿だったとしても、私の息子であることに変わりはありませんから、これからも、ずっと慈しみますよ」
それを聞いて、安心した私は、その後、あまり引き留めるのも悪いと言われて、帰宅することになったのだった。
王妃様、とっても良い人です。
まだまだ五歳で守るべき子供なユミリアちゃんを、しっかり守るつもりだったんですね。(目論見は外れましたが……)
まぁ、むしろ、ユミリアちゃんに悪意が向けばその何十倍もの威力が相手に返っていくかもしれない状態ではあるんですけどねぇ?
それでは、また!