第八十九話 王妃様のお話1
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回からは、ちょっと謎解き回?
それでは、どうぞ!
王妃様のお招きに応じて、私はメイドにお城の中を案内してもらう。お城といっても、通路そのものが豪華絢爛、というわけもなく、ところどころで品の良い調度品が並ぶような場所で、何となく安心しながら歩ける。
「こちらで王妃様がお待ちです」
一つの扉の前で立ち止まったメイド。その様子に、私はスッと息を吸い込んで覚悟を決める。
目の腫れが引いて、顔もある程度元に戻った私に、イルト王子やレイア嬢達はしきりに心配してくれたものの、招かれているのは私一人であり、例え王子という身分であっても、勝手についてくるわけにはいかない。必然的に、レイア嬢達はお城に留まる理由がなくなって帰ることとなり、手紙を送ることを義務づけられ、イルト王子からは、王妃様と話した後に戻ってくることを約束させられた。
(どんな話をされるんだろう?)
恐らくは、襲撃者を撃退したことに関して、何か言われるものだろうとは思っているものの、それだけなのかどうかはまだ分からない。
王妃様からの入室許可を得て扉を開ければ、そこには、メイドの姿はなく、王妃様ただ一人が椅子に腰かけていた。
「ユミリア嬢も、どうぞ、そこへ腰かけなさい」
「それでは、失礼します」
テーブルを挟んで対面の席を指定されて、私は少しだけにじむ緊張を押し隠して席に着く。
「こうして、ユミリア嬢とだけ話すのは初めてになりますね」
「はい、そうですね」
ニコニコとした微笑みで表情が分からない王妃様。だからこそ、話の向かう方向が予測できずに話しづらさを感じる。
「話したいことは、二つあります。一つは、ユミリア嬢も気になっているであろう襲撃者の件。もう一つは、私がわざわざ、ユミリア嬢を婚約者候補と位置付けたことです」
一つは予想できていたことだったが、もう一つは、気になっていても話してもらえるとは思っていなかったことだった。
(そう、だよね? 何で、婚約者のはずの私を、わざわざ婚約者候補としたのか、その意図までは掴めなかったものね)
それをわざわざ説明してくれるという王妃様に、私はより真剣に話を聞くべく、王妃様を見つめる。
「まずは、襲撃者の件から。あの襲撃者は、恐らくは私の母国に戦を仕掛けたメイリーン国の手の者だと思われます。狙いは私の身柄。そして、そのせいでレイア嬢達は巻き込まれてしまったのでしょう」
「……警備があったはずですが、それはどうなっていたのでしょうか?」
今回の襲撃における疑問点は、まさにその一点だった。あれだけ騒ぎが起こっても、警備の騎士は誰一人として駆けつけることはなかった。むしろ、全てが終わってからようやく、彼らを拘束するために駆けつけたらしい。
「えぇ、実は、被害を最小限に抑えるために、本来は私が誘拐される手はずだったのです」
そうして、語られたのはとんでもない計画だった。
王妃様、実は行動派……?
次回もまだまだお話は続きますっ。
それでは、また!