第八十五話 イルト様の元へ
ブックマークや感想をありがとうございます。
まだまだ楽しいお茶会は続きますよ~。
それでは、どうぞ!
結局、王妃様の思惑が分からないまま、私達は解散した。ちなみに、薄桃色のリリアナ嬢、レモン色のレイア嬢、水色のナターシャ嬢からは、『お友達になりましょう』と言われたので、快く受けておいた。
(転生後、初のお友達……っ)
リリアナ嬢は、一見キャピキャピしているが、そこそこのしっかり者で実は侯爵家のご令嬢でもある。と、いうより、どうやらこの三人、全員が侯爵家のご令嬢だったらしい。
リリアナ・ル・ルナリオ。レイア・ル・ミルテナ。ナターシャ・ル・フィアス。間に入る『ル』が侯爵家の人間だということを示している。
レイア嬢は、勝ち気な性格に見えるものの、その実は臆病なところもあり、わりと慎重派だ。
ナターシャ嬢は……ずっと眠たそうにしていたため、あまり話せてはいないものの、案外色々と見ていて、鋭いものの見方をしているように思える。
(お茶会にも、誘われちゃった……)
今まで、他の貴族との交流なんてなかったため、多少緊張はするものの、嬉しさの方が勝る。
(お友達……初めての、お友達……)
顔が緩みそうになるのを抑えながら、ひとまずはイルト王子の元へ戻ろうと足を動かしていく。
(イルト様に報告しなきゃっ)
嬉しいことは、一番に大好きな人へと報告したい。そうして、嬉しさを共有できたなら、幸せに決まっている。
そうして、淑女として見苦しくない程度の速さで歩き続けて……ようやく見えたイルト王子の姿に、走り出しそうになるのを必死で我慢する。
「イルト様」
「っ、ゆみりあじょうっ。おうひさまが、はなしがあるといっていたが、だいじょうぶだったか?」
どうやら、私がすぐにイルト王子の元へ行けないことは、王妃様の遣いが話しておいてくれたらしい。
「何事もありませんでしたよ? イルト様の方は、大丈夫でしたか?」
そう尋ねれば、イルト王子は一度うなずくものの、すぐにその表情を曇らせる。
「でも、ゆみりあじょうがいなくて、さびしかった……」
思わぬ不意打ちに、私の心臓はバックバックと鼓動する。
(か、可愛いっ! 上目遣いに、不安そうな瞳で見つめてくるなんて、反則!!)
イルト王子の可愛さに悶える私は、イルト王子に手を引かれ……なぜか、隣に座らせられる。
(う、ん? あれ? ここに椅子、用意してあったっけ?)
確か、二人がけ用のテーブル席で、椅子は対面になるように設置されていたはずなのだが、今はなぜか、イルト王子の隣に椅子が存在する。
「ゆみりあじょうは、だれにもわたさない。おうひさまにだって、わたさない」
そして、そのままギュウッと抱き締められて、思考が天国へと羽ばたく。しかし、どこにでも邪魔者というのは存在するもので……それは、起こった。
「動くな! 動けば、ガキどもを殺す!!」
平和なはずのお茶会。それなのに、その場には、似つかわしくない黒ずくめの男達が、先ほど、私の友達になってくれたばかりのリリアナ嬢達を拘束し、刃物を突きつけていたのだった。
いやぁ、何やら妙な展開になって参りましたな(笑)
それでは、また!