第四百一話 愛の二人(鋼視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は……あっ、コメディさんがニッコニコですわー。
それでは、どうぞ!
助けた男神と女神。その二人に、ぼくは面識があった。
「愛の神……」
「…………どう、する?」
あの二人は、二人で一つを司る神。愛を司る、とても面倒な神だった。
「あぁっ、ロメロ」
「愛しのジュリエナよっ」
どちらも、とても美しい容姿の神で、銀の短髪に赤い瞳を持つ男神、ロメロと、金髪に青い瞳を持つ女神、ジュリエナ。彼らは、まるで何年も離れていた恋人のように互いに抱き合うと、お互いをうっとりと見つめ続ける。
「放っておいたら、また、襲われるかもしれないけど……関わりたくない」
「…………同感……」
ぼく達が相談する最中も、彼らは、互いの名前を呼び合って、完全に二人の世界を作り出している。
別に、彼らは悪い神ではない。ただ、下手に刺激をすると、延々と惚気話を聞かされたり、甘くて砂を吐きそうな空間を作り出したりするだけで、悪事に関わることなどない。そして、彼らの戦闘能力は、かなり特殊で、嫉妬をする展開になれば、その力はぼく達を超えるほどのものになるが、そうでなければ、戦闘能力ゼロだ。
つまりは、使えない。
そんな二人はしばらくうっとりと見つめ合った後、何を通じ合わせたのかは知らないが、唐突にこちらを向く。
「この度は、危ないところを助けていただき、ありがとうございます。おかげで、愛するロメロとまた会えましたっ」
「私からもお礼を。危うく愛しいジュリエナを失うところでした。どんなに言葉を尽くしても足りませんが、本当に、ありがとうございました」
お礼を、言ってくれるのは構わない。しかし、その後にまた、見つめ合う必要はあるのだろうか?
「ロメロっ!」
「ジュリエナ!」
「ロメロっ!」
「ジュリエナっ!」
再び抱き合って、お互いを呼び合う二人の姿に、ユミリアには間違っても、この二人を参考にしてほしくないなと考える。
「えっと、それじゃあ、どこか安全なところに避難しておいてくれるかな? ぼく達は、まだ戦わなきゃだし」
このままだと、日が暮れる。そう判断したぼくは、ネシスとともにそっと離脱を試みるのだが……。
「っ、待ってくれっ! すまないが、私達には戦う力がない。安全な場所があるのであれば、そこへ連れていってもらえないだろうかっ。私が邪魔だというのなら、せめて、ジュリエナだけでもっ」
「ロメロ!? そんなのダメよっ! 私達は二人で一つなのよ? あなたを置いていくなんて、できるわけないじゃないのっ」
「あぁっ、ジュリエナ!」
「ロメロっ!」
再び始まる互いを呼び合って抱き合うその姿に、げんなりしてしまったぼく達は悪くないはずだ。
「……ネシス、安全な場所、どこかにあったっけ?」
何だか、戦いよりもどっと疲れた気がしたぼくは、ネシスに問いかけて、しばらく考えたネシスがフルフルと首を横に振る様子を眺めて、遠い目になるのだった。
ロメロとジュリエナ……まぁ、何にかけた名前かは、多分、ほとんどの人が分かりますわなぁ。
それそのものではないですけど、ね?
それでは、また!