第三百九十六話 イリアスとルクレチア1
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は、ちょっと前に放置したイリアスとルクレチアの過去編です。
それでは、どうぞ!
「イリアスとルクレチアは、双子の神なのじゃ。そして、生まれ落ちたその瞬間に、この二柱の神は、破壊装置として、その魂に役割を刻まれ、断罪と審判を司る神となった。力の発現と同時に、二人は感情を失い、完璧な破壊装置となった……はずじゃった」
創世神様が語るのは、本来の破壊装置であったイリアスとルクレチアのこと。どの世界でも、破壊装置たる神に感情はないらしく、彼らの存在は、大体において接触することも難しい神、あるいは、恐怖の対象となる神として位置づけられる。イリアスとルクレチアも強力で、神をも裁く恐ろしい神として存在していた。
「破壊装置としてのその前提が崩れたのは、ルクレチアがきっかけじゃった」
ルクレチアは、審判の神。様々なモノに様々な定義づけを行うことができる彼女は、ある日、手違いで送り込まれた罪人と接触する。
「そやつが、ルクレチアに何を言ったのかは知らん。じゃが、そやつの言葉によって、ルクレチアは、初めて、自分自身の定義づけを行ったのじゃ。それはただ……感情を自身に植えつけただけ。ただ、それだけじゃった」
元々、手違いで別の存在が送り込まれることがないわけではなかった。それは、二柱を恐れた神による嫌がらせのようなもので、それまでは、一度としてイレギュラーなどなかったのだ。
「ルクレチアは、知識としては、感情を理解していた。それは、ルクレチアに慈悲を願う者の感情にさらされ続けてきたからであって、そこで感情を芽生えさせたルクレチアは、初めて混乱することとなったのじゃ」
審判の神という性質上、恐怖され、慈悲を願われ、恫喝され、媚を売られということが多かったルクレチア。ただ、そこには一切の感情がなかったからこそ、彼女は、淡々と最善の選択を取り続けることができた。
……感情を知ったばかりのルクレチアに、それと同じことは、到底できるものではなかったのだ。
「感情に呑まれたルクレチアは、罪人の言いなりになり、そこへ依存してしもうた。ルクレチアにとって、初めて覚えた感情は、ただただ恐ろしく、一人であることに耐えられなかったんじゃろう」
それは、徐々にいびつな恋愛感情へと育っていく。そして、罪人は罪人で、彼女の双子の兄も同様にすれば、全てを自分のものにできるとでも考えたのだろう。罪人は、ルクレチアに、イリアスへ感情を植えつけることを提案し、それは、実行に移された。
それこそが、ルクレチアとイリアスの間に悲劇を生むこととなるなど、その時は、誰も考えて居なかった。
……まぁ、ここまで来ると何が起こるのか、予想できる人は居るでしょうねぇ?
そんなに難しい話でもないですし。
よしっ、焼き芋食べながら、続きを書きますかね(笑)
それでは、また!