第三百八十八話 因縁(イルト視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
よーし、シリアスさん、カモーン(笑)
それでは、どうぞ!
「ルクは……ルクレチアは、審判の神として、僕と同じように感情を持たない神だったんだ」
僕がそれだけを言うと、ルクレチアは、当然のようにその目へ神力を集め審判の眼を発動しようとする。
審判の眼は、ルクレチアの意思で目の前の存在を魂のカテゴリーで振り分ける強力な力。彼女にその眼で見つめられれば、彼女の意思次第で、天国にも地獄にも、消滅も神格化も、様々なことが決定づけられる。過去に一度、その眼で見つめられた側としては、自身の在り方さえも変えてしまう黄金に輝くその眼が恐ろしくて仕方がない。ただし、断罪の神だけは、それに対抗する手段を持っていた。
片手に出現させたのは、断罪の大鎌。これを用いれば、僕は、ルクレチアを断罪することができる。少し見ない間に、ルクレチアは大罪人となった。これを振るえば、ルクレチアという存在は消える。そして、新たな審判の神が生まれることとなる。
それは、きっと正しいこと。それは、きっと、誰もが称賛すること。そうだと分かっているのに……僕は……ルクレチアに与えてもらった感情が、『嫌だ』と叫ぶのを自覚する。
「イルト様?」
不安そうな、婚約者、ユミリアの声に、僕は、笑いかけようとして、上手く表情が作れないことに気づく。
(躊躇っている暇はない。すぐに、ルクレチアを断罪しないと)
嫌だろうがなんだろうが、断罪こそが、僕の唯一の役割。それを止めることは、許されない。
「ルクレチア・ラー・リライク。お前をイリアス・ラー・リライクの名において断罪する」
大切な役割。兄妹で断罪と審判の神を担ってきた僕達の道は、きっと、僕が彼を断罪したあの日に分かたれていたのだろう。その時の断罪の判断に後悔はない。しかし、たったそれだけで、僕達は変わってしまった。
死ぬことのない悠久を生きろと義務付けられた神としての生。永遠に変わることなく、何も感じることなく生き続けることこそが、僕達の在り方だと、欠片も疑問を抱くことはなかった。だから……変わってしまったのであれば、そして、それが間違った方向ならば、正してやるのが、兄としての役目だろう。
「イルト様!?」
名前を告げたことによって、ユミリアは、ルクレチアが僕の肉親だと気づいたようだが、もう遅い。ここからは、僕の意思ですら止められない。
黄金に輝く髪をなびかせて、黄金の瞳を向けようとするルクレチア。漆黒の髪をなびかせて、漆黒の大鎌を振り下ろそうとする僕。この図だけを見れば、悪役は僕なんだろうな、とぼんやり思いながら、もう、終わってしまうことを心の中でそっとユミリアに詫びる。そして……ルクレチアの眼が開いた瞬間、僕の大鎌も振り下ろされ…………ルクレチアが、ほんのり笑みを浮かべた気がした…………………………………………。
敵は肉親、よくあるパターンですよね♪
さてさて、詳しい背景がまだ判明しておりませんが……うーん、もうちょい引き延ばすか?
それでは、また!