第三百七十七話 もう一人の邪神
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もう一人のストーカー、出さなきゃですよね!
それでは、どうぞ!
千偽隊の人形。マリフィーはお千ちゃんと呼んでいたそれは、軽やかに瓦礫の上を駆け、隠されていた地下へ続く階段を進み、真っ白な水晶が点在し、ピンクの液体がところどころで流れている洞窟のような場所へ出る、
「これ、何だろう??」
白い水晶も、ピンクの液体も、十中八九神界産のものだ。ユレイラとしての記憶がある今ならば、大抵のものは理解できるはず、なのだが、この二つは、私の知らない素材のようで、ついつい、採掘、採取をしたくなる。
「ユミリア。ピッケルも小瓶も、今は収めておこうね」
「はっ、いつの間にっ!」
無意識のうちに、採掘、採取のための体勢を整えていた私は、イルト様に指摘されて、両手に握るそれらに驚く。
「ユミリア……そういうのは、安全が確保できてからにしようよ」
セイの呆れたような声に、流石に申し訳ないと思いながらそれらを収めようとした私は……次の瞬間、ピッケルに魔力を込めて、背後へと投げていた。
「チッ、相変わらず勘だけは良いのねっ!」
そこに居たのは、ムエリスと同じく、額に黒い紋様を浮かべた邪神アエラ。銀のボブカットに赤い目を持つ彼女は、憎々しげに私へ視線を向けるも、すぐに、その視線をイルト様へ移しそうになったので……。
「死ね」
「チッ」
とりあえず、百本くらい、剣を投げつけてみた。ただ、残念ながら、相手は邪神とはいえ、神は神。簡単には死んでくれない。
「神殺しの武器……ふふふっ、まだ、作れていないのが惜しいけど、拷問くらいならできるはずよね?」
「あ、あんたっ、いつも怖いのよ! 何よ何よっ! アタシの方が、イリアぎゃあっ」
イリアスの名前を呼ぼうとした彼女に、私は硝酸を投げてみる。もちろん、邪神にそんなものは効かないし、そもそも普通は当たらないのだが、そこら辺は、絶妙にセイ達が彼女を魔法の光で拘束してくれたおかげで直撃させることに成功している。一瞬、焼けただれた肌は、即座に元の肌へと戻ったため、少し残念ではあったが、ただれた状態がデフォルトになるように努力するのは、全く、欠片も悪くないどころか、素晴らしいものだと信じている。
「何でっ! こんな凶暴女がイ、か、彼に選ばれるわけ!? おかしいでしょうっ!?」
セイ達の魔法による拘束を振り切ったものの、またイリアスの名前を呼びそうになった彼女へ、牽制のために全身が腫れ上がる薬を投げる体勢を取る。しかし、さすがに学習したらしく、言い換えた彼女。ただ、それでも……。
「ひぎゃあっ!! な、何でっ」
私がイリアスとともにあるのは、当然のことなのに、それをおかしいと告げる頭のおかしな女へ、制裁するのは何も不思議ではない。ただ、やはり、一瞬で治るのは腹が立つ。
「それじゃあ、邪神を拷問できる薬を作りたいから、実験台になってくれるのね?」
「誰がそんな話をしたのよっ!!」
セイの光魔法、鋼の氷魔法、ネシスの闇魔法で拘束された彼女は、今度こそ動けない。だから、震える彼女にこれからのスケジュールを告げて……お千ちゃんの方を振り向く。
「……あっ……」
道案内をしてくれていたお千ちゃんは、恐らく、私と同時に攻撃されて、消え去っていた。
ん?
コメディさんがぴょっこぴょっこしてる?
……まぁ、そういう時も(ちょこちょこ)あるさっ。
それでは、また!