第三百七十話 神界へ2
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よしよし……いっけー、ドラゴンっ!!
それでは、どうぞ!
(わー、レインボードラゴンだー)
そいつが現れた瞬間、私は死を覚悟した。
レインボードラゴンは、この世界で最強の生き物として創り上げた存在。七色に輝く鱗を持つ彼らの名前は、結局、つけることができなかった。そして、恐らくは、もう、永遠につけることはできないのだろう。
足が竦んで動かない。息をすることさえ忘れてしまうような、凄まじい威圧感。
(あぁ……ごめん、ミーシャ。これは流石に、無理)
今、私はユミリア・リ・アルテナというこの世界の双子の方に魂の籍を置いている形だ。そうすると、様々な面で、その世界の理に縛られる。私が作る道具に関しても、その縛りからは抜け出せない。と、なれば……その理を超える強さを持つ敵には、対抗する手段などないのだ。
「ユレイラ、愛してる」
「私もです。イリアス」
流石に、これはもう死ぬしかない。そう思って、互いに愛を宣言すれば……なぜか、レインボードラゴンの威圧感が小さくなる。
「ユレイラ様と、イリアス様……?」
聞こえてきた声は低く、それでいて、大気を震わすような声。それは、記憶にはない声であるはずなのに、もしかしたら、という思いが芽生える。
「……もしかして、いつも、一番に私達のところに来ていた……おチビちゃん?」
レインボードラゴンは、何体か創っていたが、その中でも一際小さく、私達によく懐いていた個体がいた。もしも名前をつけるなら、彼に一番につけてあげたいと思えるくらいに愛着のあったドラゴン。
「っ、やはりっ! ユレイラ様かっ!!」
私の推理は間違っていなかったらしく、彼は、喜びの声をあげたかと思えば、空に向かって咆哮する。
「ユレイラ様っ、イリアス様っ! なぜ、人間の姿に? いや、そんなのどうでも良いなっ。歓迎するぞっ! そして、また、一緒に遊んでくれっ」
ブンブンと巨大な尻尾を振っているのか、レインボードラゴンの背後ではバキバキと木がなぎ倒される音がする。
「えっと……用事が、すんだら、ね?」
もしかしたら、私達は、随分と心強い味方を手に入れたかもしれない。そう思いながら、かろうじて返事をすれば、レインボードラゴンが笑った気がした。
「分かった! だがっ、今ならオレも手伝えるっ。だから、手伝うぞっ!」
何やら、レインボードラゴンの背後でカマイタチが発生しているような気がしなくもないが、喜んでくれたようで何より、というべきなのだろうか。
「ユミリア、いや、ユレイラ、どうも、死ななくてすんだみたいだな」
「はい、そうみたいです」
そうして、チラリとセイ達を見てみれば、啞然とした様子で、レインボードラゴンと私達を交互に眺めている。
「それじゃあ、少し、頼んでも良い――――」
しかし、その直後、なぜか、空から多くのレインボードラゴン達が降り立ってきたのだった。
ブンブンブンブンブンブン(←レインボードラゴンの尻尾)
う、うん、尻尾が振られるたびに、砂煙どころか、カマイタチが飛ぶし、木もなぎ倒されてますけど、会いたかったんですよね?
それでは、また!