第三百六十一話 ネシスとの対話2(イルト視点)
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本日は、この更新と、23時のいつもの更新とで、二回、更新しますね。
それでは、どうぞ!
「今は解けない?」
不可思議な返事をしたネシスに尋ねれば、コクンとうなずきが返ってくる。
「力、失った。……今のぼく、神の力には、敵わない……」
「そういえば、ネシスは、なんでここに? この奥は多分……僕達が作った世界に繋がってるんだよね?」
ユミリアとローランが逃げ出した場所。それはきっと、僕の予想が正しければ、僕とユミリアで作り上げた世界のはずだ。もし、今も神権が行使できるのであれば、あの場所の生き物に襲われないようにするくらいはできるのだが、残念ながら、その力は使えない。自力で、神界への扉を開く必要がある。
予想通り、僕の問いかけにうなずいたネシスは、じっと考えてからゆっくり口を開く。
「ぼく、ユレイラ様に逃がしてもらって……アリアナ様に、助けられた。……ここの、番人になれって……いずれ、イリアス様と、ユレイラ様を、助ける力になれ、って……それで、ずっと、ここ、守ってた」
建国よりこの場所にあったはずのクリスタルロード。いや、もしかしたら、もっと昔からあったかもしれないこの場所に、たった一人、ネシスは待ち続けたらしい。
「この場所、罪人の魂、来る……収監場所。誓約で、縛って、守りに使うのも、あった……。ただ、闇が濃すぎて……自分を、失いかけた」
罪人の魂を収監、と言ってはいるが、恐らく、それは神界での罪人を指すのだろう。つまりは、神ではなくなったネシスにとって、その罪人達の力は、そこそこに影響を及ぼすものであったはず。
「罪人……確かに、見た顔があったな」
ユミリアに頼まれて、クリスタルロードの入り口を守っていた時に見た死者の軍勢。あのほとんどは、かつて、僕が直々に滅ぼした罪人達だ。
今思えば、邪神の側に寝返っていた者も居たのかもしれない。当時は、ただ裏切り者として、罪人として、切り捨てていたし、彼らが操られている様子もなかった。高い能力を持つ僕やユレイラを妬む神は多く、倒した刺客の数なんて覚えていない。その中に、たまたま、僕達と一緒に過ごして裏切った者が居ても、また、刺客だろうくらいにしか考えなかった。
「ネシス、今は、大丈夫なのか?」
「大丈夫……ユミリア様、助けてくれた……」
「そうか」
そうなると、とりあえずは、ネシスに協力を仰ぎつつ、今後の方針を決めることになりそうだと判断して……やけに、腕の中が静かだと、今更ながらに思う。
「ユミリア?」
その目を覆っていた手を外せば、ユミリアはゆっくりと、目を開ける。
「話は終わりましたか? イルト様?」
にっこりと笑うユミリアに、先程まで悶えていた気配は微塵も感じ取れない。
「それじゃあ、私とも、お話してくれますよね?」
その顔は、笑顔のはずなのに、ゾクッと背筋に悪寒が走る。
「……ユミリア様、魔法、途中で弾いてた」
そして、そんな聞きたくなかった真実をネシスから聞かされて、僕は、ユミリアからそっと目を逸らした。
よしっ、ユミリアちゃんからのお・は・な・し、ですね!
それでは、また!