第三百四十三話 帰す
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ね、眠い……。
それでは、どうぞ!
気付け薬は、ローラン達の抗議によって、味の改良をする予定ではあるものの、今に至る間で、それを行う時間などなかった。そのため……現在、この場では、うめき声や水を求める声が響いている。
「……」
「大丈夫だよ? 今は、ローランに使う予定はないから」
気付け薬の大瓶から、無言で一歩距離を取ったローランへそう告げるも、どうやらローランも無意識の行動だったらしい。
「い、いや、は、ははは……」
笑って誤魔化すローランを横目に、恐らくは目に毒であろう気付け薬をストレージにしまい込む。
「それじゃあ……尋問を始めようか?」
「「「ひうっ」」」
魔力で威圧をかければ、途端に、呻いていた男女は悲鳴をあげる。
「いや、さすがに、酷なんじゃあ……」
「全員、問題なく目覚めたから良いと思うんだけど?」
「……せめて、呂律が回る程度には水を飲ませてやらないと、ありゃあ、言葉を話すのも一苦労なはずだぜ?」
言われてみれば、気付け薬で呂律が回らない状態もあったと思い出した私は、仕方ないとばかりに、魔石を取り出して、彼らの口元に水の玉を浮かばせる。すると、彼らは、その水が安全かどうかも分からないのに、懸命にゴクゴクと飲み干し始める。
「ところでローラン。妖精とか精霊にも、自白剤って効くのかな?」
「「「ぶふーっ!!」」」
「……もしかして、自白剤、入れましたか?」
吹き出す彼らの姿を見て、ローランがそう告げるものの、私だってそこまで鬼ではない。
「入れてないよ? だから、今確認したの。まぁ、反応を見る限り、自白剤も効果ありそうだけどね?」
水を飲むことなく、青ざめる彼らを一瞥すれば、さらに怯えられる。
「じゃあ、水も飲めたことだし、私の質問に答えてくれる、よねぇ?」
にっこり笑って確認を取れば、必死に頭を上下に動かす。そうして、私の尋問は始まった。
「つまり、ここに居るのは全員、妖精王か精霊王で、彼らに認めてもらえれば大きく目的に近づける、と」
「けど、誰が、何の目的でここに捕えたのかは不明で、こいつらが居なくなったことで、世界に良からぬ影響が出るはずだ、と」
「……嘘は吐いてなさそうだし、あの影が一番怪しいんだろうけど、ここには居ないし……」
「世界への影響ってのが心配ではあるな」
尋問が終わって、内容をまとめる私達。妖精王や精霊王達には、とりあえず、水晶の拘束からは出てもらって、その上で、私が新たに拘束をしておいた。あの水晶は、妖精王や精霊王達の魔力を吸収していたらしく、あのままては、消滅しかねない状態だったらしい。
「心当たりもないみたいだし、首輪をつけて解放って形が妥当かな?」
「あぁ、それは確かに」
首輪というのは、もちろん、そのままの意味ではない。いつでも居場所が分かるのと、危険が迫ったら分かる程度の機能がある魔法をかけるだけだ。
「じゃあ、あなた達はとりあえず元居た場所に帰すよ」
「ほ、本当に?」
「もちろん。ただ、これは貸しだから」
後で、仲間を連れて印の魔法をもらいに行くとは告げているものの、それはカウントしない。それでも、彼らは帰してもらえるということに安堵していた。
「と、いっても、大雑把に、近い場所に送ることしかできないから、後は自分達で何とかしてね?」
「はいっ、ありがとうございましたっ」
「「「ありがとうございましたっ」」」
転移できる場所は限られている。しかし、それぞれの場所を聞けば、一応はその地域に送れることが分かって、問題はないということになる。そうして、私達は、彼らを全員、転移で帰した。
妖精王と精霊王。
とりあえず、住所ゲット(笑)
それでは、また!