第三百四十話 記憶の違和感(イルト視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
とりあえず、イルト君視点はここで一区切り?
それでは、どうぞ!
(何だ? これは……)
戦いを始めてから、すでに十分近く。僕は、違和感を感じていた。
(僕は、こいつらを、知っている?)
目の前に居るのは敵。大昔に死んだと思われる死者の軍勢。しかし、どうにも、僕はこの死者達のことを知っている気がしてならなかった。
(そんなわけはない。こんな奴らと一緒に居た記憶なんて、ない)
ただただ、知っているような気がする。そんな感覚に、否定の言葉を浮かべるも、そう判断するには無理があると言えるほどに、僕は、奴らの戦い方を知っていた。初見殺しと思われるような技も、武器の扱い方の癖も、何もかもが、覚えのあるもの。そんなはずはないのに、とてもよく知っている存在であるという意識が離れてはくれない。
(……いや、今は、何も考える必要なんてない。今は、こいつらを倒さないと)
例え、本当に知っている存在なのだとしても、今は、敵でしかない。けして弱くはない死者達を相手に、なぜか弱くなったという感想を抱きながら、どんどん処理を進めていく。
「はぁっ、終わりました、な」
「……うん」
最後の最後まで、違和感は拭えなかったものの、死者の大群は、全て片付けることに成功した。足下には、大量の動かなくなった死体があるものの、これを何とかするのは、もう少し後になるだろう。少なくとも、ユミリアが帰ってくるまでは、この場所の警戒が必要だ。
「……ひとまず、上に戻りましょう。その上で、この死体の処理の算段も行うと良いでしょう」
「そう、ですね。では、戻りましょう」
大きく崩れた穴を見上げ、僕は、闇魔法で自身の体と、ついでに師匠の体も持ち上げると、一気に元の場所まで戻る。
「ん?」
「あぁ、どうやら、戻ってこられたようですね」
戻った直後、魔力の流れを感じて、それが転移によるものだと判断する。ただ、もちろんユミリア達ではない可能性もあるため、僕達は警戒を緩めずに、転移先となりそうな場所へ目を向けて……。
「メリー?」
そこには、意識を失っているらしいセイと鋼を抱えたメリーが立っていた。ついでに、二匹のミーシャのペットも居る。
「何があった?」
この場に、ユミリアが現れなかったことで、とりあえずは状況を聞き出すことにする。メリーが落ち着いている様子から、ユミリアは無事だと思えたが、それでも確認は必要だ。
「申し訳ございません。説明をする時間が惜しいので、後で話させていただきます。お嬢様は無事ですのでご安心をっ」
時間がないと言ったメリーは、セイと鋼をその場に降ろし、二匹に護衛を命じたかと思えば、そのまま、とんでもない勢いで走り去ったのだった。
伏線、伏線〜♪
よしよし、良い感じ……。
それでは、また!