第三百三十三話 侵食
ブックマークや感想をありがとうございます。
色々と大変なユミリアちゃん……ふふふっ、もっと困らせてあげなきゃね?
それでは、どうぞ!
(魂の侵食!?)
魂が存在することは、私にだって理解できている。何せ、私は異世界からの魂を持って生まれてきているのだから。しかし、だからといって、魂を認識できるのかと言われれば、それは違う。どうやって観測すれば良いのかの手がかりすらないのが、魂という存在だ。
(魂に異常って、どうすればっ)
見た目だけなら、セイも鋼もただ眠っているだけ。しかし、どうやら、魂の侵食とやらが始まっているらしく、マルディックがいつになく慌てている。
「これは、不味いっ! 娘っ、何とかならんか!?」
「何とかできるなら、やってるっ! 魂への干渉方法なんて知らないよっ! そもそも、侵食って何っ!?」
私の手に負えない。それを認識してしまえば、動揺は容易く表に出てしまう。
(いや、待って、落ち着いて……マルディックは魂の侵食に気づいた。なら、何か、あるはず)
「何と、言われても、そういうものとしか言いようがないっ。干渉方法も知らぬっ」
「っ、なら、どうして魂が侵食されてるって分かるの? それを知る方法はっ?」
「我は聖竜ゆえ、そういう目を持つのだっ! 魂の善悪を見分けるために使うものであるが、こやつらの魂は、別のものに……いや、奥底で眠っていたものに覆われようとしている」
「奥底で……それって、まさか」
「先程の話にあった、反逆者、ですかね?」
マルディックの言葉に、同じ予想を口にしたスーちゃん。つまりは、今、この場で、とってもタイムリーに、反逆者とやらがセイと鋼を襲っているというわけだ。
情報不足に力不足。ここからどうすれば良いのかなんて、欠片も分かりはしない。
「スーちゃんには、何か、知識はないっ?」
「す、すみませんっ! 私が役立てるようなことは何も……」
「魂に関して、どんなことでも良いっ! マルディックは?」
「魂……我も詳しくは知らぬが、恐らく、侵食されたとて、この二人の魂が消滅することはあり得ぬ。魂の消滅は、神でもなければ行えぬ御業ゆえ、な」
と、いうことは、このまま侵食されても、その後に助けられる余地はある、ということだろう。
「侵食は、どのくらいのスピードで進んでる?」
「今、半分が染まったところであるな。だが、これは……不味いな」
爬虫類の表情は分からないが、真剣な声でセイと鋼を見つめるマルディック。その姿に、言い様のない不安が巻き起こる。
「セイと鋼の魂は、綺麗なものであった。が、今のこれは、随分と黒い。このまま侵食されれば、戻れなくなるぞっ」
(それを先に言って!!)
そうは思うものの、先に言われたとして、手立てはない。
「どうにか、それを止めることはできないっ?」
「うむぅ……っ! スーちゃんの力を借りれば、侵食を遅らせることは可能ぞっ!」
その言葉で、ギンッとスーちゃんへ視線を移せば、尻尾をビシッと真っ直ぐ上に伸ばして『畏まりましたぁっ!!』と良い返事をしてくれた。
でっぷりシリアスさん、現在、楽しくバウンド中〜♪
それでは、また!