第三百七話 竜神様救出作戦!8(ローラン視点)
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竜神様の記憶は、また、ローランの知らない部分へと突入しますっ!
それでは、どうぞ!
何の解決策も浮かばないうちに、竜神様の記憶は、目を覚まし、混乱するところから始まる。
「ロー、ラン……? 私の、愛し子……? どこ、に……どうして……? 助けたはず、なのに……なぜ? どこに……?」
竜神様は、俺の中で自分の記憶が消えているであろうことは理解していた。しかし、それでも、俺の寿命を把握していた竜神様は、俺が天寿を全うする前に、反応を消してしまったことが理解できないといった様子だった。
竜神様を縛る契約の鎖はなくなった。竜神様は、今や、自由に力を行使できる。だから、その力の全てを駆使して、必死に調べた。なぜ、俺が居ないのかを……。
「人間が、私の、愛し子を……裏切った……?」
真実に辿り着くのは、そう遅くはなかった。この瞬間、竜神様は、俺がどんな人生を送ったのか、ある程度把握できる状態にまでなっていた。だから、こそ……。
「う、あ、ぁ……」
竜神様は、事実を知ったことで、その心を絶望に染め上げる。竜人にも、人間にも迫害された俺。そんな俺を想って、竜神様の心が、堕ちてしまう。
『っ、ダメだ! 竜神様! 俺は大丈夫だからっ、だから、堕ちちゃダメだっ!!』
絶望に呑まれる竜神様の心をありありと感じてしまって、俺は、それが届かないということに意識を向けることすらできないままに叫ぶ。心が、痛くて、悲しくて、つらくて、苦しくて……それに耐えきれないために、心は、どんどん堕ちてしまう。
『あ、ぁ……そんな……』
堕ちた竜神様に残ったのは、苛烈なまでの復讐心。そして、膨れ上がったその力を制御できずに、いくらかの力が、どこかへ分散していく。
『見ないで、くれ……』
と、その時、どこからか、竜神様の声が聞こえた気がして、俺は、ハッと顔を上げる。
『竜神様っ!?』
応えは、ない。しかし、代わりに映し出されたのは、見覚えのある景色。
『ここって……』
実際のところは、雪山に追いやられて、閉じ込められただけなのに、そこを、国だと言い張り生活していた竜人達。本来ならば、あまりに過酷な環境故に、繁栄することなど考えられなかったはずの、竜人達の住み処。全ては、竜神様のおかげで生活できていた彼らは、その生活を一変させていた。
竜神様の加護があったからこそ、雪山に住む凶暴な魔物達はその力を弱体化させ、竜神様の加護があったからこそ、竜人達は、本来の力以上の力を持って、獲物を狩ることができていた。ならば、その加護を失えばどうなるのか……。そんなもの、火を見るより明らかだった。
雪山に住む彼らは、思うように獲物を狩ることができず、傷つき、空腹を抱え、倒れていった。獲物と見定めた存在から、逆に食われることも多く、魔物狩りを得意としていた、俺を見下していた一部の男どもは、それで、絶命していた。
竜人達は、元々器用ではないのに、竜神様の加護によって、服や小物を作ることができていた。竜人達は、元々繁殖力が低いのに、竜神様の加護によって、血を絶やすようなこともなかった。竜人達は、元々寒さに弱いのに、竜神様の加護によって、そこそこ快適に生活できていた。
……全ては、竜神様の加護によって成り立っていた。
困窮し、強い飢餓感に苛まれ、俺を追放してしまったことを後悔する竜人達。しかし、彼らは、俺を取り戻すために動くことはできなかった。恐らくは、俺がまだ生きているだろうという仮説を立てながらも、それを確認することはできなかった。竜神様は、加護をなくした直後に、雪山を大きな結界で覆い、竜人のみ、ここから出られないようにしていたのだから。
それによって、竜人達は理解する。自分達が何に手を出してしまったのかを。そして……目覚めて、堕ちた竜神様が、彼らを放っておくはずがなかった。
すでに、竜人達への復讐を始めているっぽい竜神様。
さぁ、追加がきましたよ~。
しかも、今回は、手加減なしでっ。
それでは、また!