第二百九十九話 竜神の事情4
ブックマークや感想をありがとうございます。
さて、そろそろロードを邪神から竜神様と呼べる状態に戻さなきゃですねぇ。
それでは、どうぞ!
瘴気とは、堕ちた神の力が変質した結果生まれる力。心を堕としたままであれば、堕ち神として、邪神として、その瘴気を自在に操ることが可能である。しかし、一度でも元の心を取り戻したのであれば、変質した力は反発を起こし、心を取り戻した神を蝕むのだという。
「故に、一度心を取り戻した神が、また堕ちるということも珍しくはありません」
そう締めくくった邪神。辺りには、沈黙が落ちる。
「瘴気じゃない、元の力は何て言うんですか?」
「一応、神気と呼ばれていますね」
私の質問に答えた邪神はもう、その影響が出始めているのか、平然とした表情を浮かべてはいるものの、同時に、汗ばんでもいた。
「その神気は、精神由来の力で合ってます?」
「えぇ、そうですね。神気は、その神の精神に深く結び付く力だと言われています」
「そう」
私達のやり取りを、周りは黙って見守ってくれている。しかし、ローランは気が気じゃないようで、しきりに、私と邪神の様子を窺っていた。
いくらかの質問を行い、とりあえず、聞きたいことを聞き終えると、すかさず、ローランが声をかけてくる。
「ユミリア様、竜神様を助ける手段は、何か、ないか? あるなら、俺は、どんなことでもやってみせるからっ、だからっ、だからっ」
「……私では、無理」
「っ……」
ローランの質問に答えれば、ローランはギリッと爪が食い込むまで、拳を握る。
「でも、ローランなら、きっと、救えると思うよ?」
そんなに、辛い表情をさせたいわけではない。だから、私は、解決策を示すことにする。
「そんなもの、あるわけないっ」
「っ、何をすれば良いっ!」
邪神とローラン。二人の声が重なる。
「方法は、ちゃんとあります。でなきゃ、私は今、ここには居ませんし……ただ、私の時とは勝手が違うから、危険も伴います」
そう説明すれば、邪神は、ローランが危険に晒されるなど、我慢ならないといった様子で口を開こうとするが、その前に、ローランが口を開く。
「何でもするからっ、教えてくれっ! 竜神様を失いたくないんだっ!!」
ローランの切実な懇願に、邪神は、開きかけた口をそのままに、動きを止める。
「危険、だよ?」
「それでも構わないっ」
本音を言えば、邪神なんかのために、ローランを危険に晒したくなどない。しかし、ローランが、この邪神を大切に思っていることは分かるし、この邪神のおかげで、ローランが生き残れたのも事実。だから、心配する心を押し込めて、私は、大きくうなずく。
「分かった。なら、準備をするね」
未だに、何か言いたげな邪神を黙殺して、私は、さっさと準備を始めるのだった。
ローランの自己犠牲から始まる、竜神×竜人の種族差ラブロマンス……の展開予定はないので、あしからず(笑)
まぁ、ふざけてないで、とりあえずは、ローランに頑張ってもらわなきゃですねー。
それでは、また!